第290章:ぬくもりの夢と、暗雲の予兆
子供たちの賑やかで愛おしい笑い声に包まれながら、いつの間にか深い眠りへと落ちていたかすみは、とても温かくて優しい夢を見ていた。
そこは、光が柔らかく差し込むどこかのお部屋。
白い小さなベビーベッドの中で、まだ見ぬかすみの愛しい赤ちゃんが、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。そしてその赤ちゃんのすぐ隣には、子供たちが一生懸命選んでくれたパステルカラーの新しい首輪をつけた、あの子猫が丸くなって寄り添っていた。
子猫は小さな喉をゴロゴロと鳴らしながら、赤ちゃんのそばを片時も離れようとしない。まるで、この尊い新しい命を一緒に守るんだと誓ってくれているかのように、どこまでも優しく、温かい世界。
(ああ……なんて幸せな夢なのかしら……)
かすみは夢の中で、胸いっぱいの幸福感に満たされていた。
しかし、その幸せなビジョンは、現実世界から突きつけられた突如とした『異変』によって、一瞬にしてガラスのように砕け散った。
「っ……!? つ、あ……っ!」
激しい衝撃と共に、かすみはガバッと目を見開いた。
夢から覚めた現実の空中庭園。先ほどまでの穏やかな木漏れ日の中で、かすみは激痛のあまり、その場に崩れ落ちるようにベンチの肘掛けを強く掴んだ。
お腹の奥が、ぎゅーーーっと雑巾を絞られるように、激しく、鋭く痛む。
「かすみ!? どうしたんだい!?」
異変に気付いた碧が、持っていた飲み物を放り出すようにして駆け寄り、かすみの体を抱きとめた。子供たちや拓人、あやめも一瞬で顔を強張らせて、かすみの元へ駆け寄ってくる。
「あ……碧、さん……お腹、が……っ、急に、痛くなって……」
かすみは痛みに耐えるように体を丸め、額からじっとりとした冷や汗を流しながら、必死にお腹を両手で抱え込んだ。
まだ夏の終わり。出産を迎えるには、あまりにも早すぎる時期だった。神宮寺クリニックで味わった恐怖や、これまでの張り詰めていた精神的なストレスが、今になってかすみの身体に牙を剥いたのだろうか。
「かすみさん! しっかりして!」
「拓人、すぐに医師と看護師を呼んでくれ! ストレッチャーをここに!!」
碧の緊迫した怒号が庭園に響き渡る。
遠のいていく意識の中で、かすみはただただ、お腹の中にいる我が子の無事を祈りながら、心の中で震える声をあげることしかできなかった。
(赤ちゃん……お願い、無事でいて……。まだだよね? まだ生まれる時間じゃないよね……!?)
幸せに満ちていた空中庭園は、一瞬にして冷たい緊迫感に包まれ、早瀬の最新医療チームがかすみの元へと一斉に走り出すのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




