第289章:木漏れ日の再会と、優しい微睡み
神宮寺クリニックの元受付の女性を見送り、ひとつの哀しい因縁に優しい区切りがついた後。
かすみは空中庭園のベンチに腰掛け、夏の終わりの柔らかな木漏れ日を全身に浴びていた。
そよ風がパステルカラーのマタニティドレスの裾を優しく揺らす。お腹の赤ちゃんがトントンと小さく跳ねる心地よい胎動を感じながら、かすみはゆっくりと深く息を吸い込んだ。
南条隼人の魔の手から完全に守られたこの空間は、驚くほど静かで、温かい。ここ数日間の緊張や不安が一気に解きほぐされていくようだった。
「ふふ……何だか、急に眠くなってきちゃったな……」
温かい日差しがまるで毛布のように心地よく、かすみはそっと瞼を閉じた。
碧が戻ってくるまでの少しの間だけ――そう思いながら、浅い微睡みの海へと心地よく沈んでいく。
「――お姉ちゃん! かすみお姉ちゃん!」
「あ、蓮、静かに! かすみさん、お空の下でお昼寝してるよ!」
心地よい微睡みの向こうから、鈴の音のように愛らしい、けれどどこか聞き覚えのある賑やかな声がかすみの鼓膜を揺らした。
(え……? 今の声って……)
かすみがゆっくりと重い瞼を持ち上げると、視界の先に、ずっと会いたくてたまらなかった愛しい子供たちの姿が飛び込んできた。
「凛……! 蓮……! それに湊くん、百合ちゃんも……っ!」
「かすみお姉ちゃん、起ち上がっちゃダメだよ! 体調がすぐれないって聞いたから、みんなで心配してたんだ!」
凛が慌てて小さな手を伸ばし、かすみの体を気遣うようにそっと寄り添う。
蓮も、湊くんも百合ちゃんも、みんながかすみの周りを取り囲み、その小さな瞳に愛おしさと心配の光をいっぱいに浮かべていた。
「みんな……どうしてここに?」
驚き、同時に胸がいっぱいに満たされていくかすみの前に、子供たちの後ろから貝森拓人とあやめ夫妻が、温かい微笑みをたたえて歩み寄ってきた。
「かすみさん、お待たせ。今日はおじさまから『かすみさんのお見舞いに行っていいよ』って特別な許可が出たんだよ。凛も蓮も、かすみさんに会えなくてずっと寂しがっていたからね」
拓人が車のキーを片手に優しく語りかけると、あやめも嬉しそうに頷いて、子供たちが大事そうに抱えていた小さな袋を指差した。
「そうなのよ。お屋敷の猫ちゃんたちの新しい首輪をみんなで買いに行って、その帰りにみんなで急いできたの。かすみさん、お顔が見られて本当によかったわ」
「首輪……? ふふ、みんなで選んでくれたのね。ありがとう……!」
子供たちが「これにしたんだよ!」と嬉しそうに袋から色鮮やかな首輪を取り出して見せてくれる。その賑やかで愛おしい光景を見つめながら、かすみの胸の奥からは、今度こそ完全に恐怖の影が消え去っていった。
大好きな家族の温もりに包まれながら、かすみは戻ってきた碧の手をそっと握りしめ、世界で一番幸せな笑顔を浮かべるのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




