第15章:大賑わいのサファリア祭! 拓人の背中と薔薇のプリンスの直談判!
「はい、どうぞ。納屋財閥特製のフルーツサンドですわ」
「森野財閥特製の冷たいドリンクも一緒にどうぞ。楽しんでいってね」
サファリア女学院の学園祭、一般公開がスタートした。
中庭に設けられた特設ブースでは、かすみが、ラブラブなお母様のあけみ、お父様の薫と並んで、来場者に笑顔で限定メニューを手渡していた。最高級の生クリームと大粒のイチゴが挟まったフルーツサンドと、爽やかな特製ジュースは大行列ができるほどの超大盛況だ。
そんな中、華やかな喧騒をかき分けて、ついにあの見慣れた青藍高校の制服を着た男の子たちが校門から姿を現した。
(あっ……! 拓人さん、海斗さん、皆様……! 本当に来てくださったのね!)
かすみは嬉しさのあまりパッと瞳を輝かせ、自由帳を抱きしめて拓人に声をかけようと一歩踏み出した。
「拓人さ――」
しかし、その声はサファリア女学院の他の女子生徒たちの黄色い歓声にかき消されてしまう。
「キャーッ! 見て、あの青藍高校の人、すごくカッコよくない!?」
「ちょっと、そこの王子様系の人! 私たちのお教室の出し物にもぜひ来てよ!」
洗練されたサファリアの女子生徒たちに一瞬で囲まれた拓人は、「あはは、お誘いありがとう。じゃあ、ちょっと中を見てまわろうかな」と、いつものマイペースでチャラい王子様スマイルを浮かべ、そのまま流されるように校舎内へと入っていってしまった。
(あ……拓人さん……)
他の女の子たちと楽しそうに歩いていく拓人の後ろ姿を見送るかすみの胸に、ツンと切ない痛みが走る。ほっぺにチュッとしてくれたあの朝の秘密は、私だけの夢だったのかしら――そんな不安がよぎり、もちもちの頬が少しだけ曇った、その時だった。
「――フッ、やはり僕の気高い子猫ちゃんには、そんな切ない顔よりも、僕の愛の薔薇がよく似合う」
激しいエンジンの爆音とともに、中庭のすぐ近くに純白のオープンカーが滑り込んできた。
車からスマートに降り立ち、燃えるような真っ赤な薔薇の花束を抱えて歩いてくるのは、ツリンベッティー学園の至高の御曹司、露村隼人である。
「かすみお嬢様、今日も一段とかわいいね。本当に、僕たち露村財閥の妻にふさわしい美しさだ」
隼人はかすみの前に来ると、まるで映画のワンシーンのように流麗に跪き、薔薇の花束を差し出した。そしてすっと立ち上がると、ブースの奥にいるあけみと薫に向き直り、完璧なお辞儀をして微笑む。
「あけみお母様、薫お父様、はじめまして。ツリンベッティー学園の露村隼人です。僕はかすみお嬢様を正式に妻に迎えたいと考えておりますので、本日、誠心誠意ご挨拶に伺いました」
「あら、ご丁寧にどうも……」あけみが扇子を揺らして興味深そうに微笑み、お父様の薫も「おや、露村くんかい」とメガネの奥の目を細める。
隼人は再びかすみに向き直ると、甘く自信に満ちた瞳でその手を引き、耳元で囁いた。
「かすみ、この学園祭が終わったら、君を正式に迎えに来るからね。楽しみに待っていておくれ」
校舎へ消えていった拓人の存在、そして目の前で堂々とプロポーズを叩きつける隼人の猛攻。ご両親の目の前で巻き起こったこの大波乱に、かすみの心臓は破裂しそうなほどバクバクと高鳴るのだった――!
16章に続く




