第287章:庭園の告白と、涙の乞い
秋の気配を微かに孕んだ優しい風が吹き抜ける、早瀬ホールディングス系列病院の空中庭園。
かすみはふっくらとしたお腹を愛おしそうに撫でながら、色鮮やかな花々の間をゆっくりと歩いていた。碧が「少し冷たい飲み物を買って参りますね」と席を外した、ほんのわずかな一瞬のことだった。
「……かすみ、様」
背後から、震える細い声で名前を呼ばれ、かすみはハッとして振り返った。
そこに立っていたのは、大きなマスクをつけ、深く帽子をかぶったやつれた様子の若い女性だった。帽子を取り、マスクを外したその素顔を見た瞬間、かすみの息が止まる。
「あなた……神宮寺クリニックの、受付の……!」
かすみは本能的に両手でお腹をかばい、思わず一歩、後ずさりをした。南条隼人に情報を売り渡し、自分とお腹の新しい命を恐怖の底に突き落とした裏切りの張本人が、なぜ早瀬の厳重な警戒を潜り抜けてここにいるのか。恐怖で鼓動が跳ね上がる。
しかし、その女性はお腹を守るかすみの姿を見ると、ひどく胸を痛めたように顔を歪め、その場に崩れ落ちるように両膝をついた。
「かすみさん……っ! 怖がらせてしまって、本当に、本当に申し訳ありません……!!」
女性の目から、大粒の涙がボロボロと芝生の上へと零れ落ちる。
「私は……あなたに、あなたにどうしても直接、謝りたくてここへ来ました……っ! おじさまの御命令で、早瀬のSPの方に付き添われて、すべてを白状するために連れてきてもらったのです……!」
「おじさまの、御命令……?」
かすみが驚きに目を見張る中、女性は地面に手を突き、涙ながらに言葉を絞り出した。
「私は……南条隼人の甘い言葉に騙されていました……! 彼に恋をして、彼に振り向いてほしい一心で、看護師の目を盗んで、かすみさんの大切な妊娠の情報を盗んで彼に渡してしまったのです……。でも、彼は私を利用するだけ利用して、大金を握らせてポイ捨てするように病院を辞めさせました。私の恋心も、医療に携わる者としてのプライドも、すべてあの男に踏みにじられたのです……!」
女性は激しく肩を震わせ、声を上げて泣きじゃくった。
「おじさまに裏の事情をすべて暴かれ、自分がどれほど悍ましい罪を犯したのか、かすみさんとお腹の尊い赤ちゃんをどれほどの危険に晒したのかを知り、恐ろしさと申し訳なさで、胸が引き裂かれそうでした……! かすみさん、本当に、本当に申し訳ありませんでした……っ!!」
何度も何度も頭を地面に擦り付け、涙まみれになって許しを請う受付の女性。
その無様で、けれど心からの後悔の涙を前にして、かすみは静かにお腹の手を緩め、複雑な眼差しで彼女を見つめるのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




