第284章:小さな暴れん坊と、若き飼い主たち
かすみが入院してから、さらに数日。
南条財閥という冷酷な檻から命がけで逃げてきたあの猫の親子は、今ではすっかりおじさまの広大な邸宅に住み着き、我が物顔で暮らし始めていた。
最初は恐怖でガタガタと震え、サンルームの隅から一歩も動かなかった母猫も、毎日温かいミルクや美味しいご飯をもらい、誰からも脅かされない安全な場所だと理解したのだろう。今ではすっかり毛並みもツヤツヤになり、丸々と太って健康そのものの姿を取り戻していた。
そして、お腹がいっぱいになって体力が有り余っている子猫たちは、ついにサンルームを飛び出し、手入れの行き届いたおじさまの広い庭へと元気いっぱいに駆け出していったのだ。
「あーーーっ! 待ってよ! そっちに行ったら迷子になっちゃう!」
夏の終わりの柔らかな芝生の上を、凛が小さな足を必死に動かしながら子猫を追いかける。
「あっ、そっちはダメだよ! おじさまが大切にしてるお花の鉢植えがあるんだから……わわっ、蓮! 先回りして止めて!」
湊くんが手をあわあわと動かしながら大声をあげると、言われた蓮が「任せて!」と茂みの裏へ回り込もうとする。しかし、すばしっこい子猫たちは、子供たちの包囲網を嘲笑うかのように、小さな尻尾をピンと立てて軽やかに身を翻した。
「にゃあ〜ん」と可愛らしく鳴きながら、今度は百合ちゃんが丁寧に並べていたおもちゃのスコップを目掛けて突撃していく。
「ああっ! 待って待って、危ないよー!」
広大な庭園のあっちへトコトコ、こっちへピョンピョンと跳ね回る小さな命たち。
最初は「自分たちがちゃんとお世話をする!」と意気込んでいた子供たちだったが、底なしのスタミナを持つ子猫の兄妹の動きの早さは、人間の子供たちの想像を遥かに超えていた。
「はぁ、はぁ……。も、もう動けないよ……」
それから一時間後。
ようやく母猫の元へと呼び戻され、仲良くお昼寝を始めた子猫たちを見届けた瞬間、子供たちは示し合わせたかのように、青々とした芝生の上へと一斉にバタバタと倒れ込んだ。
凛も蓮も、そして湊くんも百合ちゃんも、全員が髪を少し乱し、顔を上気させて呼吸を荒くしている。
すっかり疲れ果てて大の字になり、空を見上げる子供たちの顔は、泥だらけになりながらも、どこかやり切ったような充実感と優しい笑顔に満ちあふれていた。
かすみがこの光景を見たら、きっと「みんな、ありがとう」と目を細めて喜ぶに違いない。南条の悪意に利用されかけた小さな親子は、今、このお屋敷の優しい子供たちの手によって、世界一幸せな時間を過ごしているのであった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




