第278章:消えた受付と、怒りの烈火
「早瀬の坊ちゃん、貝森の諸君。神宮寺クリニックの内部を徹底的に洗わせたところ、とんでもない事実が発覚したぞ……!」
応接室の重厚な扉を開け放ち、怒りで顔を真っ赤に染めたおじさまが、凄まじい足取りで戻ってきた。その手には、クリニックの勤務評定と、ある一人のスタッフの緊急退職に関する報告書が握られている。
碧がかすみを庇うようにして顔を上げ、孝雄や拓人もおじさまのただならぬ様子に視線を集中させた。
「おじさま、一体何が分かったのですか?」
あやめが心配そうに尋ねると、おじさまはデスクを激しく叩き、その全貌をぶちまけた。
「神宮寺クリニックの受付にいた若いスタッフが、昨日、かすみちゃんが受診した直後に『急に仕事を辞めて』姿を消していたんだ! 間違いない、南条隼人に情報を流していたネズミは、この受付の若造だ!!」
「急に退職を……!?」
かすみは碧の胸の中で小さく息をのんだ。あんなに親切そうに見えた病院の受付の人物が、まさか裏で南条と繋がっていたなんて。
だが、驚くべきはその裏に隠された、あまりにも身勝手で歪んだ動機だった。おじさまは忌々しげに、吐き捨てるように言葉を続ける。
「調べを進めると、南条隼人の奴、以前ここに通院した際、その受付の若い奴を手懐けていやがったんだ。……南条隼人には、神宮寺かりんという存在(縁談相手)がありながら、あいつはかりんとダメになってでも構わないという態度で、その受付を誘惑した。あろうことか、その受付の若い奴は、南条隼人を本気で好きになってしまい『彼とお付き合いするため』に、かすみちゃんの情報を流すことに喜んで協力したのだという!」
「なっ……何てこと……!」
あずみが不快感に眉をひそめ、あやめも言葉を失う。
南条隼人は、自分の端正な容姿と甘い言葉を最大限に利用し、若い受付の恋心を狂わせ、かすみとお腹の赤ちゃんの情報を引き出すための『道具』として利用したのだ。
「それだけではありません。南条の奴、情報提供の『お礼』として、その受付に多額の金額を握らせていやがった。大金を手にしたその受付は、隼人と付き合えるという妄想を抱いたまま、昨日中に病院を辞めて完全に姿を消した。……体よく利用され、口封じのために遠くへ逃がされたのだろうな」
すべてのカラクリが繋がり、応接室に完全な沈黙が訪れた。
恋心を利用され、大金に目を眩ませて医療の倫理を売り払った受付の身勝手さ。そして、他人の人生を狂わせてまでかすみを追い詰める、南条隼人の底知れない冷酷さ。
「……おのれ、南条隼人……っ!!」
おじさまの怒りが、ついに限界を迎えて大爆発した。その顔は怒脈を浮き立たせ、大声をあげて部屋の壁を殴りつける。
「神聖なる病院の場を汚し、若い者を大金と甘言で狂わせ、挙句の果てに私の愛するかすみちゃんと、そのお腹の尊い新しい命まで脅かそうとは……! どこまで腐りきった男だ! 南条財閥の看板ごと、私がこの手で完膚なきまでに叩き潰してやる!!」
おじさまの激しい怒りの咆哮が、お屋敷全体を震撼させる。
碧もまた、静かに、しかし絶対的な殺意を孕んだ瞳で、落とされた手紙を睨みつけていた。敵の卑劣極まる全貌を知った守護者たちの怒りは、もはや誰にも止められない業火となって燃え上がっていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




