第273章:運命の迷い猫
「さぁ、もう怖がらなくて大丈夫だよ。お屋敷の中へ行こうね」
かすみは子供たちと協力しながら、茂みの奥で震えていた猫の親子を刺激しないよう、優しく丁寧に大きめの籠へと移し、おじさまの立派なお屋敷の中へと連れて行くことにした。
お屋敷のサンルームに暖かな敷物を敷き、そこを猫たちの仮のお家にする。かすみはさっそく台所から用意してもらった温かいペット用のミルクを、小さな器に入れて目の前にそっと差し出した。
「まずはミルクを飲ませてあげよう。お腹、ペコペコだったよね」
かすみが優しく微笑みながら見守ると、最初は警戒していたお母さん猫も、かすみから放たれる圧倒的な優しさのオーラに安心したのか、張り詰めていた体の力を抜いて、喉を鳴らしながら美味しそうにミルクを舐め始めた。子猫たちも、お母さんに倣って小さな口を一生懸命に動かしている。
「わぁ……! 飲んでくれた!」
百合ちゃんが嬉しそうに声を弾ませ、凛と蓮、湊くんも「よかったぁ」とホッとしたように胸を撫で下ろした。
かすみはお母さん猫の、少し汚れて傷ついた毛並みを愛おしそうに見つめながら、その背中をそっと指先で撫でてあげる。
「今まで、外の厳しい雨風をしのいで頑張っていたのね……。本当によく頑張ったね」
お腹の赤ちゃんを守る母親としての本能が、お母さん猫のこれまでの苦労を痛いほどに理解していた。かすみはお腹に宿る小さな命を慈しむように、そして目の前の小さな親子を包み込むように、確かな温もりを込めて告げる。
「もう大丈夫だよ。誰もあなたたちをいじめたりしないから。……今日から、ここで一緒に生活しようね」
「にゃあ」と、お母さん猫がまるで言葉を理解したかのように、かすみの指先にそっと頭を擦り寄せた。サンルームには、夏の穏やかな光と、子供たちの笑顔、そして救われた小さな命の温かい空気が満ち溢れていた。
しかし――。
この時のかすみは、夢にも思っていなかった。
この邸宅の広い庭へ命がけで迷い込んできたお母さん猫が、かつて自分が閉じ込められていた、あの冷酷極まりない**『南条財閥の屋敷』で飼われていた猫**だという衝撃の事実を。
お母さん猫もまた、かすみと同じように、あの南条の家から我が子を守るために逃げ出してきたのだという運命の糸を、かすみはまだ、知る由もなかったのである。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




