第272章:庭園の小さなぬくもり
翌日、かすみは納屋財閥の中で唯一の理解者であり、心から信頼できるおじさまの邸宅に身を寄せていた。
碧の徹底したスケジュール管理と警護、そしてあやめの温かいサポートのおかげで、昨夜の悪夢の恐怖は少しずつ薄れつつあった。お医者様からも「お身体を第一に」と言われたこともあり、かすみは体調を整えるため、邸宅に広がる青々とした美しい庭園へと散歩に出かけることにしたのだ。
夏の柔らかな木漏れ日が、かすみの歩みを優しく包み込む。そよ風に吹かれながら、かすみは自然と自分のお腹にそっと手を当てていた。ここに、碧との愛の結晶である小さな命が宿っている――その実感が、彼女の心に穏やかな強さを与えていく。
「かすみお姉ちゃん、見て見てー!」
賑やかで愛らしい声が、静かな庭園に響き渡った。
かすみが声のする方へ目を向けると、邸宅に遊びにきていた凛と蓮、そして湊くんと百合ちゃんの四人が、大きな木の下の茂みの前に集まって、お尻を突き合わせるようにして何かを覗き込んでいた。
「どうしたの、みんな?」
かすみが優しい足取りで歩み寄ると、子供たちはパッと顔を輝かせて振り返る。
「わぁ~、かわいい子猫……っ!」
まず百合ちゃんが、小さな両手を頬に当てて歓声をあげた。
茂みの奥の木陰には、生まれたばかりの本当に小さな子猫たちが、身を寄せ合うようにして丸まっていた。
「あれっ、兄妹かな? 似たような模様をしてるよ」
蓮が身を乗り出すようにして、不思議そうに子猫たちの数を数えている。
凛と湊くんも、その愛くるしい姿に目を細めてそっと見守っていたが、ふと子猫たちのすぐ後ろで、じっとこちらを警戒するように構えている大きな猫の姿に気がついた。子猫たちを必死に庇うように丸まっている、その母親猫の体は、小さくガタガタと波打っている。
「……あ、あれっ? ママ子猫が震えてるよ」
湊くんが心配そうに声をあげ、かすみの顔を見上げた。
見れば、お母さん猫は子供たちを人間から守ろうと必死に威嚇するような目を向けながらも、その体は恐怖か、あるいは飢えと疲れからか、激しく震えていたのだ。
「まぁ……っ」
かすみはそっと胸元に手を当て、その場にしゃがみ込んだ。
必死に、命がけで我が子を守ろうとして、恐怖に震えながらも一歩も引かないお母さん猫の姿――。それは、昨夜悪夢に怯えながらも「お腹の赤ちゃんを絶対に守りたい」と強く祈った、自分自身の姿と激しく重なって見えた。
「大丈夫だよ、怖がらせたりしないからね……」
かすみは子供たちを優しく背中に庇いながら、猫の親子に向けて、どこまでも穏やかで温かい眼差しを向けるのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




