第271章:執着の包囲網と、守護の誓い
神宮寺クリニックからの帰り道、早瀬碧はかすみをあやめに託すと、さっそく自身のオフィスで「南条財閥」の最新の動向について徹底的な調査を開始していた。
デスクの上に広げられた、南条財閥に関する極秘の調査報告書。碧はそれを冷徹なまでの光を宿した瞳で見つめ、深く背もたれに体を預ける。
「……かすみの夢にまで出てきて脅かすなんて、相当な執念だな、南条隼人」
かすみが昨夜見た、あの悍ましい悪夢。それは単なる偶然や疲れからくるものではない。かすみの防衛本能が、南条からの見えない悪意のテレパシーや気配を敏感に察知して、警鐘を鳴らしたに違いないのだ。
愛するかすみと、そのお腹に宿った小さな命。二人を何があっても傷つけさせないために、碧はすぐさま手元の手帳を開いた。
「これからは、かすみの毎日のスケジュールも俺が完全に管理しなきゃいけないな。一瞬たりとも、あいつらに隙を与えるわけにはいかない」
かすみの外出、通院、日々の行動――そのすべてを自分が把握し、完璧に警護網を敷く。碧の胸のうちは、二人への絶対的な愛と、南条への激しい怒りで満ちていた。
しかし、なぜ南条財閥は、一度は手放したはずのかすみにこれほどまで執着し続けるのか。
碧がさらに調査資料をめくっていくと、そこには現在の南条財閥の、あまりにも無様で逼迫した裏事情が克明に記されていた。
「相変わらず、裏では必死に新しい縁談を進めようとしているみたいだが……なかなか上手くいかないようだな」
資料によれば、南条財閥は家勢を立て直すため、大手の企業や他の名門お家柄へ次々と縁談を持ちかけているようだった。だが、彼らの傲慢なやり方や内情の不穏さが災いし、どの縁談もことごとく破談に終わっているという。
一度は完璧に支配し、自分たちの思い通りになると思い込んでいた、あの美しく健気なかすみ。
他での縁談が泥沼化すればするほど、彼らの中での「かすみへの執着」は、狂気的な焦燥感へと変わっていく。
――だからこそ、南条隼人は今でも、かすみを諦めきれないんだ。
「お前たちの都合で、二度とかすみに触れさせはしない」
碧は調査報告書をバシッと激しく閉じると、静かに立ち上がった。敵の狙いと焦りが分かった今、早瀬碧の守護の包囲網は、南条の執念を遥かに凌駕する強さで完成されようとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




