第12章:眠れない夜の夜空と、サファリア女学院の新たなる嵐!【後編】
小鳥のさえずりとともに、ファミレスの貸し切り別邸に眩しい朝陽が差し込んできた。
お布団からむくりと起き出してきた青藍高校の生徒たちが、目をこすりながら次々とあくびを噛み殺す。
「ふぁ〜あ……。おはよう、かすみちゃん」
大翔と凌駕が、お風呂上がりのもちもち肌をさらにツヤツヤにさせて手を振った。海斗も「お、お嬢、おはようごぜえます……!」と寝癖のついた金髪を赤くなりながら押さえている。
「皆様、おはようございます。よく眠れましたかしら?」
かすみが上品に微笑み、枕元の自由帳を片付けようとした、その時だった。
「かすみちゃん、おはよう〜」
ふにゃりと微笑む拓人が、海斗たちが朝食のメニューを選びに席を外した、ほんの一瞬の隙を見逃さなかった。
拓人は周囲に誰もいないことを素早く確かめると、かすみのすぐ隣に音もなく滑り込み――。
ちゅっ。
「ひゃあ……っっ!?」
かすみのもちもちとした白い頬に、拓人の柔らかい唇が優しく触れた。あまりの出来事に、かすみは顔を耳の裏まで真っ赤に染めてカチコチに固まってしまう。
「ふふ、朝の挨拶。だって、俺のかわいい彼女だもんね? ……今の、みんなには内緒の、二人だけの秘密だからね!」
拓人は悪戯っぽく人差し指を自分の唇に当てると、何食わぬ顔でマヨコーンピザの残りを温め直しに向かった。かすみは赤くなった頬を白手袋の両手で押さえ、自由帳で顔を隠してバタバタと悶絶するしかなかった。
やがて、駐車場に召喚された特注キッチンカーから、焼き立てのクロワッサンやデニッシュが贅沢に運ばれてきた。
「はぁ……っ、焼き立てのパン、とっても美味しいですわ……!」
サクッと音を立ててパンを頬張るかすみだったが、ふと眉を下げてみんなを見つめた。
「皆様、昨日は私のわがままでお泊まりさせてしまって、本当に大丈夫でしたかしら……? 私のせいで、皆様のご両親に多大なるご心配をおかけしてしまいましたわね。後日、納屋財閥の手土産を持って、必ず正式にお詫びに伺わせていただきますわ」
「な、何言ってんだよお嬢! うちの親なんて『お嬢様と一晩過ごせるなら特攻服のクリーニング代出すわ!』って大喜びしてたから大丈夫だって!」と海斗が豪快に笑う。
かすみは嬉しそうに頷くと、さらに楽しそうに両手を合わせた。
「あの、私……この朝食を食べ終えたら、皆様と一緒に、青藍高校へこのまま登校してみたいのですの! あっ、それから、皆様にお土産がございますわ」
かすみは誠に目配せをすると、用意されていたきらびやかな木箱をみんなの前に並べさせた。
「皆様のお肌がもっともちもちになりますように、私が愛用している最高級スキンケアアイテムを差し上げますわ! それと、昨夜お召しいただいたシルクのパジャマも、私たちの初めてのパジャマパーティーの思い出にお持ち帰りくださいね。……あっ、そうだわ! 誠さん、皆様がとっても気に入ってくださった、この王室御用達の高級羽毛布団も、皆様の分をそれぞれお包みして差し上げてね!」
「ええええええええええっっっ!!!???」
「お土産のスケールが相変わらずおかしいぞォォォッッ!!!」
大翔と凌駕は「最高級布団もパジャマも貰えるなんてマジ卍!!」と大喜び。
「お嬢様ァァァーーーッ!!! 害虫どもに我が財閥の最高級寝具や、ましてやお嬢様のスキンケアの遺伝子(?)を分け与えるなど、この誠、断じて――」
誠がメガネをバキバキに発光させて大発狂しかけたが、かすみが「誠さん、ダメ、かしら……?」とウルウルした瞳で見つめると、「――うっ! よ、喜んで手配いたしますッッ!!」と一瞬でノックダウンされた。
拓人との甘い秘密のキス、そしてみんなとの最高のパジャマパーティーの思い出の品を抱え、かすみはお嬢様始まって以来の「皆様との集団登校」へと向かうのだった――!
第13章に続く




