第253章 診察室の邂逅、新たなる視線
精神を完全にすり減らし、毎日のように「かすみ……」とうわ言を繰り返すばかりの南条隼人が連れてこられたのは、白い壁に囲まれた静かな病院の診察室だった。
可憐がいくら次の縁談を急かそうとも、今の隼人の状態ではお見合いの席に立たせることすらままならない。業を煮やした虎之介と可憐によって、まずはまともに会話ができるようにしろと、半ば無理やり押し込まれたのだ。
心ここにあらずといった様子でパイプ椅子に腰掛け、虚ろな目で床を見つめていた隼人だったが、ふと、胸の奥からせり上がってくる抑えきれない疑問を、目の前に座る人物へと投げかけた。
「先生……。愛する人と、もう一度一緒になるには……どうしたらいいの……?」
それは、診察の質問に対する答えとしてはあまりにも的外れで、だけど今の隼人にとっては世界のすべてとも言える、切実で歪んだ問いかけだった。
「……そうですね。まずはご自身の心をしっかりと休めて、現実を一つずつ受け入れていくことから始めましょうか」
返ってきたのは、耳に心地よく響く、とても落ち着いた、そしてどこか冷ややかで知的な声だった。
その声に弾かれたように、隼人はゆっくりと顔を上げた。
そして――次の瞬間、隼人は息をすることを忘れたかのように、完全に言葉を失ってしまった。
「先生……?」
デスクでカルテを見つめながら静かに微笑んでいるその医師は、息をのむほどに美しかった。
白衣の奥から覗く洗練された佇まい、綺麗に整えられた髪、そして優しくもすべてを見透かすような深い瞳。そのあまりにも完成された美貌に、隼人は完全に目を奪われ、激しく心を揺さぶられていた。
さっきまで頭の中を埋め尽くしていたはずの「かすみ」の面影が、目の前の美しい医師の姿によって、一瞬でかき消されていくのを感じていた。
「どうしました? 南条さん。どこかお体が痛みますか?」
怪訝そうに首を傾げる彼女の、その何気ない仕草すらも、今の隼人の目にはたまらなく魅力的に映る。
「あ……いや……」
胸の鼓動が、かすみを追いかけていた時とは全く違う、新しく、そしてどこか危険な熱を帯びて速くなっていく。
すべてを失い、どん底の生活に叩き落とされた元御曹司の壊れた心に、診察室の美しい医師という存在が、あまりにも強烈な光となって入り込んできた。
かすみへの妄執が消え去ったわけではない。しかし、このあまりにも綺麗な先生との出会いが、隼人の歪んだ精神をさらなる予測不能な暴走へと導く引き金になろうとは、まだ誰も気づいていなかった――。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




