第252章 没落の果ての執念、終わりなき妄執
栄華を誇った南条財閥の面影は、もうどこにもなかった。
資産をすべて差し押さえられ、あの広大で美しかった本邸を追われた南条虎之介、可憐、そして南条隼人の三人は、都会の片隅にある古くて狭い借家で、世間の目を逃れるようにひっそりと暮らしていた。
壁は薄く、差し込む光もどこか薄暗い。かつて何人もの使用人に囲まれて贅沢の限りを尽くしていた彼らにとって、この窮屈な空間は生き地獄そのものだった。
「嫌よ……! どうしてこんなに家が狭いの!? あの広い邸宅こそが南条財閥の象徴だったのよ!!」
薄汚れた畳の上に座り込み、可憐が狂ったように金切り声を上げた。
どれだけ現実を突きつけられても、彼女の歪んだプライドだけは、未だに没落を受け入れることができずにいたのだ。毎日毎日、狭い部屋の中で不満を撒き散らす妻の姿に、虎之介は力なく頭を抱えてため息をつくだけだった。
しかし、絶望のどん底にいるはずの可憐の瞳に、突如として不気味な、ギラギラとした執念の炎が宿った。
「……そうだわ。もうこうなったら、あらゆる財閥に片っ端から声をかけて、隼人の縁談を取り付けてみせますわ! そして、その財閥の広いお屋敷に、私たちも一緒に住み込んでやればいいのよ!」
「お前、何を馬鹿なことを……! 西園寺家との件も、早瀬ホールディングスへの襲撃も、経済界にはすべて知れ渡っているんだぞ。どこの財閥が今さら南条の男を婿に迎えるというんだ!」
虎之介が呆れたように怒鳴るが、正気を失いかけている可憐の耳には届かない。
「うるさいわね! 南条の血筋の良さをアピールすれば、どこかに引っかかるはずよ! 隼人! 隼人、聞きなさい!!」
可憐は部屋の隅で、魂が抜けたように虚ろな目で壁を見つめていた隼人の元へと詰め寄った。碧から突きつけられた「かすみはお前との結婚生活を地獄だと言っていた」という残酷な真実によって、隼人の精神は完全に崩壊し、自らの意思で動くこともままならない状態になっていた。
「さあ、すぐに身なりを整えて頂戴! どんな手段を使ってでも、あなたを縁談の場に連れて行きますからね! あなたが次の財閥の娘を捕まえれば、私たちはまたあの広いお屋敷での暮らしを取り戻せるのよ!!」
「かすみ……かすみ……」
母親に激しく肩を揺さぶられながらも、隼人の口からは、もはや届くはずのない過去の女の名前が、うわ言のように漏れるだけだった。
我が子の壊れた心などお構いなしに、過去の栄光にしがみつき、何としてでも隼人を次の縁談へと引きずり回そうとする可憐の狂気。南条家の底なしの泥沼は、さらに醜く、周囲を巻き込むような新たな暴走へと向かい始めていた――。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




