第254章 診察室の求婚、呆れる両親
「どうしましますか?」た? 南条さん。どこかお体が痛み
カルテから目を上げ、不思議そうに小首を傾げる美しい女医。その知性溢れる瞳に真っ向から見つめられた瞬間、南条隼人の脳内で、何かが完全に弾け飛んだ。
つい数分前まで、彼の心を真っ黒に染め上げていたはずの「早瀬かすみ」への妄執や、碧から突きつけられた残酷な真実の痛み。それらが、目の前に君臨する極上の美貌によって、信じられないスピードで上書きされていく。
(綺麗だ……。かすみなんかより、ずっと、ずっと大人の魅力に溢れている……!)
何を思ったのか、隼人はガタッとパイプ椅子を鳴らして勢いよく立ち上がった。
その突然の奇行に、同席していた父親の虎之介と母親の可憐は、「また発作が始まったのか」と一瞬で顔をこわばらせる。
しかし、隼人の口から飛び出したのは、誰もが予想だにしない衝撃的な質問だった。
「せ、先生……! 先生は、彼氏はいますかっ!? もし、もしいなかったら、俺と付き合ってください!!!」
「……は?」
静まり返る診察室。
美しい先生は、持っていたボールペンをピタリと止め、絵に描いたようなポカンとした表情で隼人を見つめた。
「ちょっと、隼人!? お前、何を言い出すのよ!!」
隣にいた可憐が、あまりの恥ずかしさと衝撃に目をひんむいて叫び声を上げる。
「静かにしてくれ母さん! 俺は今、運命の出会いを果たしたんだ! 先生、俺は南条財閥の跡取りの南条隼人です! 今は少し家が狭いところにありますけど、俺と付き合ってくれれば、すぐにでもあなたを幸せにしてみせます!」
両親が同席している診察の場で、初対面の医師に向かって堂々と「付き合え」とのたまう我が子の姿に、虎之介はついに顔を真っ赤にして怒りを爆発させた。
「この馬鹿者がァーーーッ!!! 診察をしてもらいに来て、一体何をトチ狂ったことをぬかしているんだっ! 先生、申し訳ありません、こいつは本当に頭がおかしくなっていて……!」
「あら、あなた待って頂戴!」
必死に頭を下げる虎之介の服を、可憐がグイと引っ張った。可憐のギラついた瞳が、目の前の美しい女医の白衣の胸元――そこに刻まれた、一流病院の役職付きの名札を捉えていたからだ。
(ちょっと……この先生、ただの医者じゃなくて、この大病院の院長のご令嬢じゃないかしら!? もし隼人がこの女を落とせば、南条家は病院一族の資産を乗っ取って、またあの広いお屋敷に返り咲けるわ……!)
「先生ぇ! 我が息子・隼人は、御覧の通り少し強引ですが、とっても一途で素晴らしい血筋の男なんですのよ! ぜひ前向きに検討して頂戴!」
「母さん、分かってくれるか!」
診察室の中で、呆れ果てて固まる虎之介と、早くも新しい玉の輿(逆玉)を狙って目を輝かせる可憐、そして完全に先生に見惚れている隼人。
かすみを失い没落したはずの南条家は、診察室というあまりにも場違いな舞台で、新たな欲望と暴走の渦を巻き起こそうとしていた――。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




