第239章 過去への告別、確固たる盾
「そこをどけ、早瀬碧……! かすみは、俺の妻だ!!!」
静まり返った婚約披露パーティーの会場に、南条隼人の狂気染みた絶叫が木霊する。
集まった貝森財閥や納屋財閥、そして森野海斗社長をはじめとする名士たちの間に、蜂の巣をつついたような騒然としたざわめきが広がった。
執着に目を血走らせ、今にも私を連れ去ろうと一歩を踏み出してくる元夫。
かつての私なら、その圧倒的な威圧感に怯え、涙を流して立ち尽くしていたかもしれない。
だけど、今の私の薬指には、世界で一番愛する人が贈ってくれた指輪が輝いている。
私は碧様の隣から一歩前へ出ると、冷徹なまでに冷めた瞳で、真っ直ぐに隼人を見据えた。
「いいえ。私は早瀬かすみです。南条隼人、あなたとはすでに、とうの昔に離婚が成立しています」
「なっ……!」
会場中の視線が突き刺さる中、ハッキリと言い放たれた拒絶に、隼人が衝撃で顔を歪める。
私はさらに声を張り上げ、彼が隠そうとしていた「身勝手な裏の顔」を衆目の前に曝け出した。
「それに、あなた、今日は西園寺財閥のご両親を伴って、西園寺麗華さんと2度目のお見合いデートをされていたのでしょう? ……あいにくですが、西園寺麗華さんは私のサファリア女子大時代の友人なんです。そんな大切な席をすっぽかしてここに乱入してくるなんて、男としても、南条の跡取りとしても、あまりにも失礼だと思わないのですか?」
「麗華が……お前の、友人……!?」
隼人の顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。
自分の家柄の存続を賭けたデートの相手が、まさか自分が捨て、今なお執着している元妻の親友だったなど、夢にも思わなかったのだろう。あまりの衝撃に言葉を失う隼人の姿を、会場の隅で見つめていた長谷部誠も、面白そうにフッと口元を歪めた。
南条財閥の終わりの足音が、すぐそこまで迫っている。
私は碧様の仕立ての良いスーツの袖を、きゅっと両手で掴み、隣に立つ最愛の婚約者を見上げた。
「ねぇ、碧さん……南条隼人を、なんとかして。私は早瀬碧の妻だって、この人にハッキリ言ってよ」
その甘えるような、だけど確固たる私の信頼の言葉に、碧様の美しい唇がゆっくりと弧を描いた。
碧様は私をその大きな片腕で愛おしそうに引き寄せると、氷の刃のような鋭い視線で隼人を射抜いた。
「――言われなくても、かすみさん。俺の妻に、二度とその汚い視線を向けさせない」
碧様が一歩前に出た瞬間、会場の空気が圧倒的な覇気で支配された。過去の男を完全に葬り去る、本当の戦いが始まろうとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




