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サファリア女学院から青藍高校へ潜入!? 〜お嬢様の「普通の恋」は、完璧な執事が絶対に許しません〜』  作者: 琥珀かえで


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第10章:お泊まりファミレスの甘い夜編

「――もう! どうしてみ皆様、そんなに勝手ばかりなさるのですか!?」

納屋財閥の力で一瞬にして『貸し切り別邸』に変貌してしまったファミリーレストランの店内で、かすみは自由帳を机にドンと置いて、珍しくぷんぷんと怒りながらお上品に足を鳴らした。

いつの間にか店外に整列している黒服SP部隊と、メニューの検食を始めようとしている誠を見つめながら、かすみは深いため息をつく。

「元の発端は、お父様が頭ごなしに反対したからでしょう? お父様たちの過去のブーメランを棚に上げて大騒ぎするから、こんな型破りなことになってしまうのですわ……!」

お嬢様のあまりの剣幕に、さしもの完璧な執事・誠も「うっ……お、お嬢様、私はただ安全をプロデュースしようと……」と、メガネを曇らせてガタガタと震え出した。

かすみはふぅ、と小さく息を吐くと、ボックス席に座る海斗、碧、拓人、そして大翔と凌駕の顔を申し訳なさそうに見つめ、白手袋の手を胸の前で合わせた。

「青藍高校の皆様……私の家の事情で、こんな大騒動に巻き込んでしまって、ほんとごめんなさいね。せっかくのお疲れ様会でしたのに……。私、皆様と同じ普通の生活がしたいの。……今日のところは、私のわがまま、聞いてくださいませ」

ドレスの裾を少しだけ握りしめ、ウルウルとした瞳で健気に謝るかすみの姿に、男子たちのハートは一瞬で撃ち抜かれた。

「な、何言ってんだよお嬢ッッ!!! お前が謝ることなんか1ミリもねぇよォォォッ!!」

海斗がツブツブの瞳(?)から涙をブワッと溢れさせながら、身を乗り出した。

「勝手なのはあの過保護メガネ執事とお前のおやじだ! 君はここで、心ゆくまで自由に過ごすといい」

「そうそう〜。かすみちゃん、謝らないでよ〜。俺、かすみちゃんと一緒にファミレスに一晩中いられるなんて、むしろ最高のご褒美だしね〜?」

拓人は相変わらずマイペースに微笑みながら、かすみに優しく新作の魔改造ドリンクを差し出した。

かすみはコップのメロンソーダを上品に一口飲むと、不思議そうに周囲を見回した。

「ところで、誠さん。皆様、夜はどうやって眠るのかしら? ここにはふかふかのお布団が見当たりませんけれど……? 誠さんがここを『別邸』になさると仰るなら、そのくらいのお支度は必要でしょう? あと、体を休めるための、ジャグジー付きのバスルームはどこにありますの? ……ここは、ほんとの私のお家ではないのですから、そのくらいのラグジュアリーがなくては困ってしまいますわ」

お上品に首をかしげるかすみの、あまりにも次元の違うお嬢様発言に、男子全員が一斉にずっこけた。

「じ、ジャグジー付きのバスルームだとォォォォォーーーーーッッ!!!!」

海斗はツブツブの瞳をこれでもかと見開いて叫んだ。

「お、お嬢……っ! ファミレスには風呂も布団もねぇんだよッ! 俺たちはこの赤い硬いソファで、特攻服を毛布代わりにして雑魚寝する気満々だったんだが……ッ!?」

「お嬢様ァァァーーーッ!!! 完璧な執事としたことが、なんという不覚……ッ!!」

誠はガタガタと膝を震わせ、大慌てでインカムに叫んだ。

「おい、SP部隊!! 今すぐファミレスの駐車場に、ジャグジー付き移動式特注トレーラーバスと、王室御用達のシルクの羽毛布団を積んだ大型トラックを10秒で召喚しなさい!!!」

『――了解。最高級寝具、ファミレスの第2駐車場へ今すぐヘリ搬送します』

ジェームス様の冷徹な音声がスマホから響いたかと思うと、ファミレスの上空が再びヘリの爆音でバリバリと揺れ始めた。

「まぁ……っ! 誠さん、手際が良いですわね!」

かすみは嬉しそうに微笑み、男子たちを振り返った。

「皆様、ご安心くださいませ。もちろん、皆様の分のお布団も、最高級のものを手配してありますわ。今日は、私の『別邸』にお泊まりですよ。皆様、一緒の夜を過ごしましょうね」

ドッッッッギャアアアアアァァァン組織!!!!!!

かすみがひまわりのような満面の笑みで放った「一緒の夜をお泊まり」というウルトラパワーワードに、ファミレス店内は再び大爆発した。

「お、お、お、お嬢のお泊まりィォォォォォーーーーーッッ!!!!!???」

海斗はあまりの衝撃と妄想の暴走で顔面を火炎放射器のように真っ赤にして絶叫!

「僕の計算によれば、同じ屋根の下で一晩を共にするということは、親密度が1000%に跳ね上がることを意味しているね」と碧も指先をガタガタと震わせる。

「へぇ、お泊まり会かぁ。じゃあ俺、かすみちゃんと同じシルクのお布団が良いな〜」と拓人もちゃっかり便乗し始めた。

誠が「害虫どもを同じ敷地に泊めるなど、この誠、絶対に認めませんーーーッッ!!!」とお布団の周囲に高圧電流の流れる防護柵を設置しようと大騒ぎする中、かすみは自由帳を開いて、初めて目にしたドリンクバーの様子を楽しそうにペンでサラサラと書き留めていた。

「明日もファミレスに行って、自由に過ごしたいかも……」

かすみが日記を書き終え、ふぅと息をついた瞬間、机に置いた自由帳のページがふわりと一枚めくれた。そこには、カラフルなペンで海外の男の子たちのイラストやメモがびっしりと書き込まれていた。

それを見逃さなかったのが、隣をキープしていた拓人だった。

「へぇ……かすみちゃんって、こんな趣味あるんだね〜?」

「ひゃああっ! 見てはダメですわ!」

かすみは大慌てで自由帳を隠そうとしたが、時すでに遅し。そこに見えたのは、今サファリア女学院の生徒の間では知らない人はいないほど大流行している、あのグローバルアイドルグループ――『ルバッシュ』のファンページだった!

「『るばっしゅ』……? 納屋さんが、そんな大衆的な海外のアイドルグループに興味を?」

碧がメガネをクイッと上げると、拓人はスマホを片手に、慣れた手つきで画面をスクロールしながら調べ始めた。

「うん、これこれ〜。ネットで今すっごい話題になってるグローバルアイドルだよ。へぇ、かすみちゃんはこのグループのメンバーが推しなのかな〜? ダンスがめちゃくちゃ上手くて、世界中で大人気なんだって。……ねぇ、俺もこのくらい髪型とか真似したら、かすみちゃん振り向いてくれる〜?」

スマホの画面をかすみに見せながら、ちょっぴり独占欲をのぞかせてふにゃりと微笑む拓人。

「お、お嬢がアイドルのオタクだとォォォォォーーーーーッッ!!!!」

海斗はツブツブの瞳をこれでもかと見開いて大パニック!

「て、てめぇ拓人! 勝手に見るんじゃねぇ! ……って、るばっしゅ!? 待てよ、俺も今日から長ラン脱いでそのアイドルのダンス練習すれば、お嬢の『推し』になれるのかよォォォッッ!?」

「ふん、アイドルのデータなら、我が財閥のネットワークを使えば100%の確率で最前列チケットを手配できますよ。納屋さん、僕と一緒に彼らのライブを特等席で見に行きませんか?」

碧もここぞとばかりにインテリなマウントを仕掛けてくる。

「お嬢様ァァァーーーッ!!! サファリア女学院でそんな不潔な海外の男どもが流行っているなど、この誠、断じて認めませんーーーッ!!!」

誠がメガネをバキバキに曇らせて大絶叫!

「今すぐその『るばっしゅ』の所属事務所ごと納屋財閥が買い取り、メンバー全員にお嬢様への感謝の歌しか歌えないように完全プロデュースいたします!!!」

「おいおいおい!! アイドルグループの事務所まで買い取ろうとしてるぞォォォッッ!!!」

大翔と凌駕は「最高級シルクの布団最高ー!」と羽毛布団にダイブしながら、ドリンクバーのメロンソーダを片手に大爆笑していた。

「皆様、勝手に調べないでくださいませ……っ! 恥ずかしいですわ……!」

かすみは顔を真っ赤にして自由帳で顔を完全に隠してしまい、初めての「お泊まりファミレス」の夜は、かすみの可愛い秘密(趣味)がバレてしまったことで、御曹司たちの新たな嫉妬とお嬢様争奪戦へと発展していくのだった――!

第11章に続く

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