第9章:突撃!初めてのファミレス大騒動編【後編】
誠の放つ凄まじい「嫉兆」のオーラに、ファミレスの店内は一瞬でマイナス30度の氷河期へと変貌した。
「お嬢様、今すぐお迎えの車へ。お屋敷では薫旦那様がコーヒーを吹き出しすぎて脱水症状に陥りながら、涙目で『かすみ、お父様が悪かったぁ!』と叫んでいらっしゃいます。さあ、帰りましょう」
誠がかすみを優しく促そうとしたその時、海斗が机をドンと叩いて立ち上がった。
「おい、メガネ執事!! お嬢はなぁ、お前らの頭ごなしな否定に怒って家出してきてんだよ! お前らが過去のブーメランを無視して型にはめようとするから、お嬢は泣いてたんだろッ!!」
海斗のストレートな正論に、誠の眉がピクリと跳ねる。
「……泥臭い金髪(海斗)の分際で、お嬢様の何を知ったような口を……」
「僕も彼の意見には同意だね」
碧がメガネの位置を静かに直しながら、冷酷に告げた。
「早瀬財閥のデータによれば、納屋さんは今、自分の意志でこの普通の空間を楽しんでいる。それを強制的に連れ帰るのは、完璧な執事としては計算ミスと言わざるを得ないね」
「そうだよ〜、誠さん。かすみちゃん、まだドリンクバーの魔改造を全部試してないんだから、連れて帰っちゃダメだよ〜」
拓人もピザをモグモグ食べながら、のんびりと、しかし絶対に譲らない強い視線を誠に向けた。
青藍高校の男たちが、かすみの「自由」を守るために、最強の執事・誠の前に立ちはだかる!
「皆様……っ」
かすみは胸が熱くなるのを感じた。自分のために、みんながこんなに必死になってお屋敷の権力と戦ってくれている。
かすみは自由帳をぎゅっと抱きしめ、誠の前に一歩踏み出した。
「誠さん。皆様の仰る通りですわ。私、今日はお屋敷には帰りません。皆様とここで、もっとたくさん普通の社会勉強をして、自由に過ごしたいのです!」
「お嬢様……そこまであの男どもの毒に侵されて……っ!」
誠はショックのあまりガタガタと崩れ落ちそうになりながらも、かすみのその強い眼差しを見て、ついに観念したように深いため息をついた。
「……分かりました。お嬢様がそこまで仰るのなら、この誠、お嬢様の『自由な家出』を完璧にプロデュースいたします。これより、このファミリーレストランを納屋財閥が敷地ごと一時的に買い取り、本日の一晩、お嬢様の貸し切り別邸といたします!」
「ええええええええええっっっ!!!???」
「ファミレスを買い取ったァァァーーーッ!?」
誠のあまりのスケールの違う過保護っぷりに、海斗たち全員が一斉にずっこけた。
お屋敷を飛び出したはずが、なぜか財閥の力でファミレスごと貸し切りになってしまったお嬢様。
拓人の告白、海斗の猛アピール、碧のタワマン誘惑、そして誠の暴走。
すべてを巻き込んだかすみの「普通の恋(?)」のお疲れ様会は、夜が更けるまでマジ卍な大騒ぎとともに続いていくのだった――!
第10章に続く




