第230章 観覧車の誓い
昼間の遊園地は、どこを見渡しても眩しいほどの笑顔と歓声に満ちあふれていた。
「ママ、見て見て! メリーゴーランドのお馬さん、すっごく可愛い!」
「ママ、次はあっちのジェットコースターに行こうよ。僕、もう子供じゃないから怖くないもん!」
私の両手を引いて元気に駆けていく凛と蓮の後ろ姿を追いかけながら、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
南条隼人との間には、いつも家柄や義務、そして息の詰まるような重い空気が付きまとっていた。形式だけのお見合い、笑顔のない社交の席――。彼との間には、こんな風に子供たちを交えて手を繋いで笑い合う「普通のデート」なんて、ただの一度もなかった。
「はは、二人とも、そんなに急いだらかすみさんが転んじゃうよ」
すぐ隣から、低く心地よい声が降ってくる。
早瀬碧様が、悪戯っぽく微笑みながら私の歩調に合わせて歩いてくれていた。彼がさりげなく私の荷物を持って、人混みから守るようにそっと肩を寄せてくれるたび、心臓がトクンと甘い音を立てる。
賑やかなアトラクションを巡り、みんなで頬張った濃厚なソフトクリームの味。
「ママ」「碧様」と私たちを呼ぶ子供たちの無邪気な声。
それは、私がずっとずっと憧れていた、絵に描いたような「普通の恋」の形そのものだった。
やがて空が群青色に染まり、夜の帳が降りると、遊園地は一転して光の魔法に包まれた。
パッと一斉に灯ったイルミネーションが、まるで地上の宝石箱のようにきらきらと輝きだす。
「綺麗……」
思わず足を止め、目の前に広がるきらめく夜景を見つめて呟いた私の横顔を、碧様がひときわ優しい眼差しで見つめていた。
「かすみさん。最後に、あの観覧車にみんなで乗りましょうか」
ライトアップされた巨大な大観覧車が、ゆっくりと夜空に向かって回っている。
私たちは4人でひとつのゴンドラに乗り込んだ。
ゴンドラが地上を離れ、ゆっくりと上昇していくにつれて、窓の外の夜景がさらに広がり、息をのむほどの美しさで迫ってくる。
「うわあ! おもちゃの街みたい!」と、凛と蓮は窓ガラスにぴったりと張り付いて、きらめく光の海に夢中になっていた。
静寂が支配する、四人だけの特別な空間。
ゴンドラが、まもなく一番高い頂上へと到達しようとしたその時だった。
碧様が、窓の外を見ていた凛と蓮の肩にそっと手を置き、静かに語りかけた。
「凛、蓮。……ママと結婚してもいいかな?」
その言葉に、私は驚いて息を止めた。
碧様は、真っ直ぐに子供たちの目を見つめ、どこまでも誠実に、一文字ずつ言葉を紡いでいく。
「俺は、ふたりとこれからもずっと仲良くしたいし、もちろん、凛と蓮の父親になりたいんだ」
子供たちの小さな背中が、嬉しそうに小さく跳ねる。
正式に、愛する子供たちへ筋を通してくれた碧様は、ゆっくりと私の方を振り返った。その瞳には、夜景の光を映した、決して揺らぐことのない強い覚悟が宿っている。
「一点の曇りもない心で、君を――早瀬かすみとしてお迎えしたい」
世界で一番優しいプロポーズの言葉が、きらめく夜空の頂上で、静かに響き渡った。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




