第212章:拒絶の残響と、閉ざされた扉
西園寺麗華から電光石火のごとくお断りを突きつけられ、最高級ホテルの応接室に一人取り残された南条隼人は、屈辱と怒りで顔を真っ青に染めながら、逃げるようにそそくさと南条財閥の邸宅へと帰ってきた。
エントランスの重厚な扉を乱暴に押し開けて入ってきた息子の姿を見るや否や、リビングで朗報を待ち侘びていた両親が、パッと表情を明るくして駆け寄ってくる。
「お帰りなさい、隼人! どうでした、西園寺家のお嬢様は? 素晴らしい方だったでしょう!」
しかし、隼人は両親の期待に満ちた声を完全に無視し、狂気的な苛立ちを孕んだ瞳で二人をキッと睨みつけた。
「……もう二度と、僕の前に縁談(お見合い)の話を持ってくるな」
「えっ……? 隼人、一体何を――」
「不愉快すぎるんだよ!!」
地を這うような、けれど激しい怒りを爆発させた絶叫。隼人はそれ以上一言も発することなく、唖然とする両親を突き放して階段を駆け上がり、自分の部屋へと飛び込んでバタンと激しく扉を閉めた。内側からガチャリと鍵をかける音が響き、彼は再び、かすみの幻影だけが蠢く冷たい自らの檻へと引きこもってしまった。
静まり返ったホールに残された父親と母親は、狐につままれたような顔で立ち尽くしていたが、やがて事態を把握すると、母親の顔がみるみるうちに憤怒で真っ赤に染まっていった。
「ま、まさか……あの西園寺麗華様までダメだったというの!? あんなに名家のお嬢様で、容姿も家柄も文句なしの条件だったのに……!」
父親も苦々しく拳を握りしめ、天井の息子の部屋を睨みつけながら忌々しげに声を荒らげる。
「全く、隼人は何を考えているんだ! 南条財閥の跡取りとしての責任をどう思っている!」
「本当に忌々しいわね! さっさとあの女のことなんて忘れればいいものを……! あんな女のせいで、我が南条財閥の未来が狂わされるなんて絶対に許せませんわ!」
我が子の精神が限界まで崩壊しかけていることなど目に入らず、ただ「南条の家名」と「財閥の都合」だけで怒り狂う両親。
その冷酷な怒声は、閉ざされた部屋の奥で耳を塞ぎ、届かぬかすみの面影を必死に追いかけている隼人の元へ、虚しく響くだけだった。
一方その頃、彼らが未だに執着し、見下しているかすみは、おじさまや海斗社長、そして貝森財閥という日本屈指の絶対的権力者たちに囲まれ、子供たちと共にこれ以上ないほど贅沢で温かい光の中にいた。
南条財閥の足元で、自業自得の破滅への歯車がガタガタと音を立てて回り始めていることに、彼らはまだ誰も気づいていなかった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




