第211章:電光石火の拒絶と、粉砕されたプライド
「私は……南条、隼人だ……」
消え入りそうな声でようやく自己紹介をした隼人に対し、西園寺麗華は、同情すら混じっていない冷ややかな微笑みを浮かべた。その美しい指先でトントンとテーブルを叩きながら、彼女はすべてを見透かしたような口調で、容赦のない言葉を紡ぎ出した。
「あらあら……。南条様、お顔の色が随分と悪くていらっしゃること。……今、南条財閥は随分とピンチなんですの?」
「なっ……!?」
隼人は息を呑み、驚愕のあまり目を見開いた。麗華はふっと視線を外すと、まるで退屈な書類でも眺めるかのように、優雅に紅茶のカップに手を伸ばした。
「わたくし、南条財閥と聞いて、さぞや未来永劫安泰なトップエリートの財閥だと伺っていましたの。ですから、こうしてお見合いの席に足を運びましたけれど……。事前に我が西園寺家の情報網で調べさせていただきましたのよ」
麗華はカップを静かに置くと、真っ直ぐに隼人を射抜いた。
「内情はあちこちで綻び(ほころび)が見え隠れしているようですし、何より、次期当主であるはずの隼人様が、お見合いの席でろくに会話もできず、他の女の影を追って上の空……。とてもじゃないけれど、わたくしとの縁談は無理ですわ。西園寺家を、そしてわたくしを舐めないでいただきたいの」
「待て、西園寺、それは――」
慌てて引き止めようと手を伸ばす隼人だったが、麗華はすでに椅子の背からすっと立ち上がっていた。その一連の動作には、名門の令嬢としての絶対的な気品と、一切の迷いのない決断力が満ち溢れていた。
「すみませんがお断りします。……それでは、失礼します」
一瞥の未練すら残さず、麗華は美しい背筋を伸ばしたまま、カツカツとヒールの音を響かせて応接室の扉を開けた。待機していた彼女の付き人たちを引き連れ、嵐のように去っていく。
バタン、と静かに扉が閉まった。
静まり返った最高級ホテルの室内に、隼人は一人、完全に置き去りにされた。
「お断りします」――そのあまりにも容赦のない拒絶の言葉が、耳の奥で何度も何度もリフレインする。
かつては自分が女を値踏みし、切り捨て、支配する側だったはずだ。それなのに、今やかすみにそっくりな女から「ピンチなんですの?」「無理ですわ」と、そのプライドを木っ端微塵に粉砕され、足蹴にされてしまった。
おじさまや海斗社長、そして貝森財閥のガッチリと結ばれた最強の同盟の中で、未来のジュエリーを夢見て輝くかすみたちの光の世界。
その一方で、自らまいた傲慢の種によって、名門令嬢からも一瞬で見限られ、いよいよ社会的な破滅と完全な孤立へと突き落とされた隼人は、拳を血がにじむほど握りしめ、言葉にならない絶叫を胸の奥で上げるしかなかった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




