第203章:過去との決別と、新たなる絆の予感
湊くんと百合ちゃんの少し心配そうな問いかけに、凛と蓮は顔を見合わせ、それから弾けるような笑顔で大きく首を横に振った。
「ううん、してないよ! 難しいお勉強なんて、もう全然してないの!」
凛がドリルをめくる手を止めて、きっぱりと言い切る。その表情には、かつて南条財閥の邸宅で泣きながら物を投げていた頃の陰りなど、微塵も残っていなかった。蓮も鉛筆を置いて、誇らしげに胸を張る。
「うん。この前ね、おじさまが私たちをお買い物に連れて行ってくれた時に、とっても素敵なことを教えてくれたんだ。『プレゼントを選ぶ時は、相手が喜ぶ姿を思い浮かべなさい』って」
「そうなの!」
凛が嬉しそうに言葉を引き継ぎ、目を輝かせた。
「だから、昨日みんなへのプレゼントを選ぶ時もね、貝森財閥にお泊まりに行くから、みんなで楽しく過ごしたいな、喜んでくれるといいなって、ずーっと考えていたんだ。もちろん、おじさまとママにも一緒に選んでもらったんだよ!」
双子の口から語られるおじさまの優しい教えと、心のこもった贈り物のエピソードに、湊くんと百合ちゃんは感心したように何度も頷いていた。
「カブトムシ捕りに行くのも、一緒にお菓子を作るのも、本当に楽しみだなぁ……。だって、今までそんなこと、全然できなかったんだもん」
蓮がぽつりと溢したその言葉には、かつて長谷部家や南条家という冷酷な環境で、子供らしい自由をすべて奪われていた日々の記憶が滲んでいた。毎日毎日、大人の顔色を窺い、英才教育という名の檻に閉じ込められていた二人。だからこそ、今こうして大好きな友達と普通の夏休みを過ごせること自体が、奇跡のように幸せなのだ。
「でもね、もう大丈夫。私たちは、もうあの財閥(長谷部や南条)とはなーんにも関係ないの!」
凛が過去を吹き飛ばすように明るい声で言う。
「唯一、ママのお母様とお父様、それから親戚の海斗社長だけは、今でもまだ交流してるんだよ」
「海斗社長……?」
湊くんが首を傾げると、蓮がパッと名案を思いついたように声を弾ませた。
「あっ、そうだ! 今度ママにお願いして、海斗社長に会わせてってお願いしようかな? 凛と蓮をいつも気にかけてくれる、とっても優しい社長さんなんだ!」
「あ、それいいね! 海斗社長にも、私たちがこんなに元気に楽しく過ごしてるって教えてあげたいな!」
かつて自分たちを縛り付けようとした冷酷な大人たちを完全に切り捨て、凛と蓮は自分たちを本当に愛してくれる人々との絆を、さらに深めようとしていた。
おじさまの鉄壁の庇護のもと、親戚の海斗社長という新たな存在へのワクワクする予感を胸に、子供たちの賑やかで愛おしい夏休みの初日は、どこまでも眩しく続いていくのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




