第200章:光のテラスと、闇の焦燥
貝森財閥の広大な邸宅へと迎え入れられた私たちは、庭園を見渡せる全面ガラス張りの美しいサンルームへと案内された。
テーブルの上には、目にも鮮やかな季節のフルーツがたっぷり乗ったタルトや、ひんやりと冷えた最高級の果汁ジュースが用意されている。
「わぁ……お菓子もジュースも、すっごく美味しい!」
凛と蓮は、長谷部家や南条家で味わったあの張り詰めた空気とは無縁の、心からの安心感に包まれて喉を潤していた。ひと息つくと、二人は待ちきれないと言わんばかりに、昨日おじさまと一緒に選んだ色とりどりのラッピング袋を抱えて立ち上がった。
「湊くん、百合ちゃん、さっそくこれ使って! はい、プレゼント!」
凛が百合ちゃんに手渡したのは、昨日一目惚れしたふわふわの可愛いクマのぬいぐるみ。そして蓮は、湊くんに男の子向けのお洒落なぬいぐるみをカゴから取り出して手渡した。
「わぁ、可愛い! 凛ちゃん、ありがとう、ずっと大切にするね!」
「蓮くん、これカッコいいな! さっそく僕の部屋に飾るよ!」
大好きな友達からの心のこもった贈り物に、湊くんと百合ちゃんは大歓声をあげて飛び跳ねた。
それだけでは終わらない。凛と蓮は、大きな袋をさらに抱えて、優しく見守ってくれている貝森財閥のおじちゃんやおばちゃん、そしてパパとママの元へとタタタッと駆け寄っていった。
「おじちゃん、おばちゃん、それに湊くんと百合ちゃんのパパとママにも、どうぞ!」
「みんなでお料理する時のエプロンと、夜寝る時のおそろいのパジャマだよ!」
小さな手から差し出された予期せぬ贅沢なプレゼントに、大人たちは一瞬驚き、次の瞬間にはこれ以上ないほどの満面の笑みを浮かべた。
「おや、私たちの分まで用意してくれたのかい? なんて優しい子たちなんだ」
「おそろいのパジャマなんて、今夜のパジャマパーティーが本当に楽しみね!」
心の底から喜んでくれる皆様の姿を見て、凛と蓮は誇らしげに胸を張り、嬉しそうに私を振り返った。
「これね、ママとおじさまと一緒に、みんなの顔を思い浮かべながら選んだんだよ! ねぇママ?」
「ええ、本当にそうなの。皆様に喜んでいただけて、私たちもとっても嬉しいわ」
私は二人の健気な頭を撫でながら、隣に座るおじさまと視線を交わした。おじさまも、自分の孫のように愛らしい双子が周囲を幸せにしていく様子を、深く満足そうに見つめて微笑んでいる。これ以上ない、光に満ちあふれた夏休みの幕開けだった。
◇◇◇
その頃――。
私たちが笑い声に包まれているのとは、あまりにも対照的な重苦しい空気が、南条財閥の邸宅を支配していた。
主である南条隼人は、豪華な革張りの椅子に深く腰掛け、かすみのことだけをずっと考えていた。頭から片時もかすみの面影が離れず、胸の奥で黒い執着の炎がチリチリと音を立てて燃え広がっていく。
カチ、カチ、カチ……。
部屋に響く時計の針の音さえも、今の隼人の神経を逆撫でする。
昨日、かすみの動向を探るよう部下に命じた。それなのに、未だに受話器は鳴らず、扉が叩かれる気配もない。
「いつになったら報告が来るんだ……!」
隼人はデスクの上の書類を乱暴に払いのけ、立ち上がって部屋を何度も往復した。
毎日毎日、実家の都合でお見合いの席に立たされ、心が擦り切れていく中で、かすみへの独占欲だけが異常なほどに膨れ上がっている。
「遅い……遅すぎる……! 一体何をもたついている!」
イライラと焦燥感で狂いそうになりながら、隼人は壁の時計を睨みつけた。
自分の知らないところで、かすみが誰かと笑い合っているかもしれない、自分の手の届かない場所へ行ってしまったかもしれない――その恐怖とプライドが、彼を限界まで追い詰めていた。
光あふれる貝森財閥の邸宅で、おそろいのパジャマに胸を躍らせるかすみたちの幸福な世界。
そして、暗い部屋で「遅い!」と怒りを爆発させ、狂気的な未練に身を焦がす隼人の闇の世界。
二つの世界は、交わることのないまま、じわじわと決定的な瞬間へと向かって動き出そうとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




