第198章:焦燥の檻と、消えない執着
南条財閥の重厚な応接室には、重苦しい沈黙と、張り詰めた空気だけが漂っていた。
「隼人、本日のお見合いのお相手も、名門の素晴らしい令嬢だったのですよ? 一体何が不満だと言うのです!」
実家からの容赦のない圧力。南条の権威を繋ぎ止めるために、毎日のように繰り返されるお見合い。差し出される見合い写真の山を、南条隼人は冷酷な一瞥とともに、机の端へと乱暴に押しやった。
毎日毎日、贅を尽くした席に座らされ、笑顔を張り付かせた名門の令嬢たちと向き合う。だが、その誰の顔を見ても、隼人の心は微塵も動かなかった。
「……どいつもこいつも、退屈な女ばかりだ」
進展など、あるはずがなかった。どれほど着飾り、家柄を誇る女が目の前に現れようとも、隼人の冷え切った瞳の奥に焼き付いて離れないのは、ただ一人――かつて自分の手で手酷く傷つけ、そして完全に失ってしまった「かすみ」の面影だけだったからだ。
かすみが隣にいない世界は、どんなに富に溢れていようとも、隼人にとっては冷たい檻と同じだった。誠との離婚が成立し、戻る場所を失った男の惨めな姿を嘲笑ったばかりだが、自分自身もまた、底なしの焦燥感にじわじわと焼き尽くされようとしていた。
イライラが限界に達し、隼人はデスクの呼び出しボタンを激しく叩きつけた。
「失礼します、隼人様。何か――」
音もなく入ってきた部下に対し、隼人は鋭い眼光を向け、低く地を這うような声で言い放った。
「おい……かすみの様子を探れ」
「えっ……? しかし、彼女は今、あのおじさまと貝森財閥の絶大な庇護のもとに……」
「黙れ! 言い訳は聞いていない!」
部下の言葉を遮るように、隼人はデスクを激しく叩いた。その端正な顔は、嫉妬と独占欲、そして狂おしいほどの未練で醜く歪んでいる。
「彼女が今、どこで誰と何をしているのか。凛と蓮はどうしているのか、すべてだ。どんなに小さなことでもいい、今すぐ調べ上げて報告しろ!」
「は、はいっ! 直ちに!」
怯えた部下が慌てて部屋を飛び出していく。静まり返った室内で、隼人は荒い呼吸を繰り返しながら、拳を血がにじむほど強く握りしめていた。
毎日楽しくおそろいのパジャマやぬいぐるみを買い、貝森財閥の温かい面々に囲まれて光あふれる夏休みを迎えようとしているかすみたちの幸せなど、隼人はまだ何も知らない。
ただ、自分の手からすり抜けた極上の蜜を求めて、泥沼のような執着の闇へ、隼人はさらに深く堕ちていくのだった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




