第188章:長谷部一族の瓦解、そして暗闇に消えた誠
伝説のおじさまに突き放され、完全に破滅した長谷部ホールディングス。その邸宅の応接室では、夜が更けてもなお、醜い責任のなすり合いの怒号が響き渡っていた。
「すべてはあなたのせいよ!」「黙れ、お前が余計なことを言わなければ!」
重光と玲子の夫妻は、互いに狂ったように罵声を浴びせ合っている。絶望の重圧が、長谷部一族の理性を完全に消し去っていた。
そんな修羅場の最中、部屋の隅で破滅の言葉を浴びせられ続けていた高倉麗子が、突然短い悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。
「うっ……あ、痛い……! お腹が、お腹が痛い……!」
麗子は大きなお腹を抱え、苦痛に顔を歪めて激しく呼吸を乱す。ただ事ではない異変に、それまで言い争っていた重光と玲子も色を失った。すぐに救急車が呼ばれ、邸宅の前にけたたましいサイレンの音が近づいてくる。麗子はそのまま、緊迫した空気の中で病院へと運ばれて行った。
新しい命が、もうすぐ生まれようとしている――。
それなのに、病院へ向かう救急車の中にも、騒然とする邸宅の中にも、誠の姿はどこにもなかった。
妻の出産という人生の重大な局面であるにもかかわらず、誠はすべてから逃げ出すように、跡形もなく姿を消してしまったのだ。
夜の闇の中、あてもなく彷徨う誠の足取りは重かった。
実家は倒産し、両親からは見捨てられ、麗子からは激しい不信感をぶつけられる。逃げ込んだ暗闇の中で、誠の脳裏に浮かび上がってきたのは、今や伝説のおじさまの庇護下に置かれた、かつての我が子の姿だった。
――凛、そして蓮。
かすみとの間に生まれ、自分の頼りなさのせいで長谷部家から冷遇され、離れ離れになってしまった大切な双子の子供たち。
「俺は……あの子たちに、父親らしいことを何一つしてあげられなかった……」
誠の口から、乾いた自嘲の言葉が漏れる。
実家の権力に怯え、かすみを守れず、子供たちの盾にもなれなかった。すべてを失った今になって、猛烈な後悔と寂しさが誠の胸を掻きむしる。
会いたい。もう一度、凛と蓮をこの手で抱きしめたい。
だが、そんな資格が今の自分にあるはずがなかった。
「今更……今更になって会いたいなんて言ったら、あの子たちは、怒るよね……?」
誠はぽつりと呟き、誰もいない夜の街へ、深く顔を伏せた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




