第184章:連鎖する崩壊
長谷部ホールディングスの倒産――。
その決定的な破滅の報せが冷え切った邸宅に響き渡る中、長谷部財閥の応接室には、凍りつくような沈黙が支配していた。
部屋の主位に傲然と佇んでいるのは、納屋財閥の「伝説のおじさま」だった。その鋭い眼光は、目の前で必死に頭を下げている長谷部重光、玲子の夫妻、親族一同、そして長谷部誠と、その傍らで身を縮める高倉麗子を冷酷に見下ろしている。
おじさまの胸中にあるのは、ただのビジネスの損得勘定ではない。長谷部ホールディングスが崩壊したことへの冷徹な視線、術策、そして何より、この家族がかつて、かすみと、その双子の子供である凛と蓮に対して行ってきた非道な仕打ちへの、決して許すことのできない激しい怒りだった。
縋り付くような長谷部一族の視線を一蹴するように、おじさまは感情の籠もらない、重い声を響かせた。
「今後の援助はないと思え」
それが、すべての救いを断ち切る宣告だった。おじさまはそれ以上一言も発することなく、翻って長谷部財閥の邸宅を後にした。
バタン、と重々しい扉が閉まり、おじさまの足音が完全に遠のいた瞬間。張り詰めていた糸が切れ、応接室には醜い怒号と言い争いが沸き起こった。
「どうしてこうなるの……!」
頭を抱えて狂乱したように叫んだのは、玲子だった。重光と玲子の夫妻は、怒りと絶望の矛先を、一瞬にして我が子である誠へと向けた。
「誠、あなたがかすみさんとの間に生まれた子供がいけないのよ! それに、あなたは最初から長谷部ホールディングスに向かないってわかっていたでしょ!? どうしてこんなことになるのよ!」
実の親から浴びせられる、容赦のない拒絶と責任のなすり合い。かつてかすみと双子を冷遇し、追い詰めた結果がこの破滅だと突きつけられ、誠は言葉を失って立ち尽くすしかなかった。
だが、地獄はそれだけでは終わらない。
そんな誠の腕を、震える手で強く掴み、すがるように、同時に激しく責め立てるように見上げてくる存在があった。高倉麗子だった。大きなお腹を抱えた彼女の瞳には、涙と、逃れられない不信感が渦巻いていた。
「ねぇ誠さん……最近家に帰ってこないけど、まさか浮気してないよね?」
麗子の鋭いセリフが、誠の胸に深く突き刺さる。誠が息を呑むのも構わず、麗子はさらに言葉をぶつけた。
「私と結婚して、もうすぐ赤ちゃんが生まれるのに……まさか、まだかすみさんの子供に会ったりしてないよね!? 私だって出産準備もあるのよ、なんとかしてよ!」
会社は倒産し、親からは無能だと罵られ、現在の妻からは過去の女との繋がりを疑われ、現実の出産への責任を迫られる。誠は四面楚歌の絶望の中で、ただ呼吸を詰まらせるしかなかった。
――そして。長谷部邸の応接室でそんな醜い怒号と悲鳴が飛び交っていた、まさにその時。
南条財閥の巨大な邸宅の奥でも、まったく同じような、狂気と絶望に満ちた崩壊の光景が巻き起こっていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




