第183章:崩れ落ちる巨塔、そして約束の時
翌朝、世界は昨日までとは違う顔をしていた。
南条財閥のオフィス、そして長谷部ホールディングスの本邸――そこには、かつての威厳など欠片も残っていなかった。
「……なんでだ。一体、何がどうなってこうなるんだよ……っ!」
南条隼人の怒声が虚しく響く。銀行からの口座凍結通知、株価の暴落、そして早瀬ホールディングスによる買収完了の通達。すべては「おじさま」の一言で、夜の間に仕組まれていたことだった。
長谷部誠もまた、ただ呆然と椅子に座り込み、デスクに散らばった解雇通告の書類を眺めていた。あれほど強気だった二人が、一夜にして社会的な影響力を失い、ただの「過去の人」へと追いやられてしまったのだ。
自分たちがかすみや子供たちを追い詰めてきた代償が、あまりにも巨大な形で、そしてあまりにも速いスピードで彼らを飲み込んでいた。
その頃、街の幼稚園では、そんな大人たちの阿鼻叫喚とは無縁の、透き通るような空気が流れていた。
園庭には、凛と蓮、そして湊と百合の笑い声が満ちている。
四人は仲良く手を繋ぎ、砂場で夢中になって遊んでいた。凛の顔には、かつてあった陰りなど微塵もない。蓮もまた、湊と百合と一緒に屈託のない笑顔を見せている。
「ねぇ、湊くん、百合ちゃん!」
蓮が嬉しそうに目を輝かせながら言った。
「今日ね、ママがお迎えに来てくれるんだよ!」
「本当? ママが?」
湊が驚いて聞き返すと、凛が自慢げに付け加えた。
「うん! それにね、あのおじさまも一緒なんだよ。……僕たちのこと、守ってくれるんだ」
「すごい! 楽しみだね!」
四人は顔を見合わせて、ケラケラと笑い合う。
二人が口にする「ママ」という言葉。それはもう、夜に泣きながら呼ぶ名前ではなく、もうすぐ自分たちを抱きしめてくれる、温かな現実の名前だった。
幼稚園の門の向こう側で、かすみと「おじさま」が、自分たちを迎えに来てくれる。
その約束を胸に、子供たちは今日という日を、これ以上ないほど幸せな気持ちで過ごしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




