第8章:お嬢様の恋煩いと、納屋家の緊急家族会議!【中編】
「認めん、お父様は絶対に認めんぞ!! 貝森財閥の小僧など、国家権力で――」
髪を振り乱して大騒ぎする父・薫に向かって、かすみはスープのスプーンをカチャリと置き、珍しくキッと眉をひそめて立ち上がった。その純粋な瞳には、これまでにない強い意志の光が宿っている。
「お父様!! どうしてそんなに頭ごなしに否定なさるのですか!?」
「か、かすみ……?」
愛娘の滅多にない大声に、薫はビクッと肩を震わせて言葉を詰まらせた。かすみは両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、お父様に最大の正論を突き付けた。
「お父様だって昔、身分を隠して、この青藍高校であけみお母様とお付き合いされたのでしょう!? お父様たちがよ organizational で、どうして私はダメなのですか!? 拓人さんだって、私のことを一生懸命見ていてくださった、とっても素敵で優しい殿方ですわ!!」
「うっ……!!」
薫お父様の胸に、過去の自分の行動という名の巨大なブーメランがドスリと突き刺さった。
「そ、それは……あの時は色々と事情が……」と冷や汗を流して視線を泳がせる薫。横ではお母様のあけみが「あら、かすみちゃんの言う通りですわね。あなた、自分だけずるいですわ」と、ニコニコしながらトドメの一撃を刺している。
お父様が完全に論破され、大食堂が静まり返ったその瞬間――かすみは涙をポロリとこぼしながら、自由帳を強く抱きしめた。
「もうお父様なんて知りません……! 私、家出します!!」
「ええええええええええーーーーーーーっっっ!!!!!???」
薫お父様の絶叫が、納屋家の豪邸をビリビリと震わせた。
「い、家出!? かすみ、待ちなさい! お父様が悪かった! 宇宙の彼方へ強制排除するなんて言わないから、落ち着いて――」
「引き止めないでくださいませ! ごきげんよう、さようならですわ!!」
かすみはお上品にドレスの裾をひるがえすと、大慌てで追いかけようとするお父様を振り切り、トトトトッと猛ダッシュで大食堂を飛び出していった。
「お嬢様ァァァァァーーーーーッッ!!!!」
それまで直立不動で凍りついていた執事・誠が、メガネをズレさせながら本日一番の絶叫を上げてすっ飛んだ!
「お嬢様が家出!? 嘘です、私の人生の太陽が失われてしまいます! 今すぐ納屋財閥の全衛星を動員して、お嬢様の周囲半径10キロを完全封鎖――いや、私が盾となってお供いたしますーーー!!」
お父様と過保護執事が大パニックで頭を抱える中、かすみは自由帳とわずかな荷物を抱え、ついに納屋家始まって以来の大反乱――「お嬢様の涙の家出」へと踏み出すのだった。
行き先はきっと、あのファミレスでのお疲れ様会、そして海斗たちが待つ青藍高校の世界へ――!?
後編に続く




