第174章:再会、そして崩れ落ちる母
かすみは、おじさまの背に守られるようにして、重厚な貝森家の邸宅へと足を踏み入れた。
長く厳しい逃避行と、子供たちを引き裂かれた心の痛みが、彼女の体力を限界まで奪っていた。
「……かすみさん?」
玄関ホールでその姿を認めた瞬間、あやめは息を呑んだ。
かすみの顔色は青白く、以前よりもあまりに痩せ細っていたからだ。頬はこけ、着ている服もどこか心許ない。母親がどれほどの苦難を背負ってここまで来たのか、一目見ただけであやめには分かった。
「そんな……一体、どれほどの……」
あやめの言葉は、最後まで紡がれることはなかった。
かすみは、あやめの問いかけに応える気力すら残っていなかったのだ。
糸が切れた人形のように、彼女はその場に崩れ落ちた。
「かすみ!」
おじさまが駆け寄り、孝雄とあずみも慌てて彼女を支えようとしたその時だった。
奥の部屋から、無邪気で愛らしい足音が響いてきた。
「ねえ、お腹すいたよー!」
「今日のご飯、なーに?」
湊と百合、そしてその後ろに凛と蓮が、屈託のない笑顔で姿を現した。
しかし、その声は玄関ホールにいる大人たちの凍りついた空気に触れて、ふと止まった。
子供たちの瞳が、床に倒れ伏している女性――かすみ――を捉える。
一瞬の静寂。
次に起こったのは、劇的なまでの変化だった。
「……ママ?」
凛と蓮の口から、掠れたような声が漏れる。
写真の中の存在でしかなかったはずの母が、目の前にいる。
二人は駆け寄り、倒れたかすみの腕に、小さな体ごと飛び込んだ。
「ママ……ママ、ママ!」
冷たい床の上で、凛と蓮が声を上げて泣きじゃくる。
さっきまで「お腹すいた」と笑っていた子供たちが、かすみの温もりを確かめるように、何度も何度も「ママ」と呼びかけ、その胸に顔を埋めていた。
大人の戦いや隠蔽など、今の彼らには関係ない。ただ、ずっと会いたかった、大好きなお母さんがそこにいた――その事実だけで、二人の心は溢れんばかりの涙で満たされていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




