第173章:禁断の来訪者と、明かされた真実
邸宅の玄関ホールに、重苦しい沈黙が落ちた。
貝森孝雄は、目の前の初老の紳士から視線を外すことができない。
納屋財閥の影の重鎮であり、かつて貝森財閥が存亡の危機に瀕した際、その圧倒的な力で裏から救い出したこともある「おじさま」。孝雄にとって、彼は決して敵に回してはならない、畏怖すべき伝説の存在だった。
「……あなたが、なぜここに。それに、長谷部や南条と揉めているこの家に、何の用だ」
孝雄の声は僅かに震えていた。
対するおじさまは、表情一つ変えず、静かに微笑んだ。その眼差しはすべてを見透かしているかのように鋭い。
「落ち着け、貝森。私はただ、この小さな子供たちの健やかな未来を願い、そして一人の母親の想いを届けるために来ただけだ」
おじさまはゆっくりと、邸宅の入り口の方へ視線をやった。
そして、誰もが予想していなかった言葉を告げた。
「……かすみが、来ている」
その名前が告げられた瞬間、ホールの空気が凍りついた。
隣で聞いていたあずみと拓人、あやめが、信じられないものを見る目で顔を見合わせる。
「……かすみさんが? 本人ですか?」
拓人が戸惑いながら問いかけると、おじさまは深く頷いた。
「ああ。あの子は今、この邸宅のすぐ近くにいる。凛と蓮を一目見たいと、ただそれだけの願いを抱えてな」
孝雄は、言葉を失った。
昨夜電話で「かすみを死んだことにしろ」と口裏を合わせ、必死に嘘を塗り固めてきたのは、かすみを守るためだった。その本人が、よりによって敵の影がうごめく貝森の邸宅まで来ているなど、正気の沙汰ではない。
「おじさま、あなたが連れてきたんですか……! 危険すぎます! 南条や長谷部の人間が、この周辺を嗅ぎ回っているのを知らないわけがないでしょう!」
孝雄の悲痛な叫びを、おじさまは静かに遮った。
「知っている。だがな、孝雄。子供たちが夜な夜な母を求めて泣く声は、かすみの耳にまで届いていたんだ。母親の愛を、誰が引き裂けるというのだ?」
おじさまの威厳に満ちた言葉に、孝雄は反論できなかった。
かつてこの男に助けられた記憶が、今の状況の危うさと重なり、孝雄の心は激しく揺れ動く。
かすみは今、すぐそこにいる。
その事実は、貝森家の守ってきた静寂を、根本から覆そうとしていた。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




