第150章:氷の微笑みと、崩れゆく仮面
納屋財閥の広間は、凛と蓮の泣き声と、南条隼人の冷徹な指示で満たされていた。
「これからは、この子たちに英才教育を施す。南条財閥の跡取りとして、物心つく前から帝王学を叩き込む必要がある」
隼人は、まだ歩くこともままならない凛と蓮を前に、無表情で言い放った。
私にとっては、ただ愛おしいだけの赤ちゃん。まだ柔らかいその手足に、重すぎる「南条」という看板を背負わせようとしている。
「……まだこんなに小さいのよ。英才教育なんて、酷すぎない?」
私の精一杯の抗議も、隼人には風にもならない。彼は私を冷たく見下ろし、「これがこの子たちの運命だ」と切り捨てた。
その時だった。
広間の扉が、豪奢な音を立てて開かれた。
そこに立っていたのは、長谷部誠と、彼に寄り添う美しく着飾った高倉麗子だった。
麗子はまるで、獲物を品定めするような優雅な足取りで近づいてくると、私を見てわざとらしく目を見開いた。
「あらっ、かすみさん。私達の結婚式に来なかったのね。せっかく招待したのに、残念ねぇ」
彼女の微笑みは、針のように鋭い。
招待状など届いていなかった。いや、例え届いていても、行くはずなんてなかったのに。彼女はそれを知っていて、私を傷つけるためにこの言葉を選んだのだ。
誠さんは私の姿を見ると、一瞬だけ痛ましいほどの苦渋の表情を浮かべたが、すぐに麗子によって腕を引かれた。
「ねぇ、誠さん。これから高倉財閥と長谷部財閥の、大事な食事会でしょ? そんなところで油を売ってはいけませんわ」
麗子は私の前で誠さんに甘え、勝利の微笑みを浮かべた。
二人の間にあるのは、私が決して踏み込めない、名門同士の強固な絆と、輝かしい未来。
誠さんは何も言えず、ただ伏し目がちに私を通り過ぎようとする。その背中を見ることさえ、今の私には拷問だった。
しかし、麗子は通り過ぎざま、足を止めて凛と蓮を覗き込んだ。
「あらっ……南条隼人さんの子供なのね。……なんて、かわいい……」
その言葉は、私にとって毒そのものだった。
「あなたの子供じゃないわね」と、無言で否定されているような気がした。
誠さんの愛を奪い、誠さんの子供を「南条の子供」として私の目の前で愛でる。麗子の冷酷な優しさに、私はその場に立ち尽くすことしかできなかった。
「本作の執筆にあたり、誤字脱字の確認や文章整理のためAIを利用しています(規約に基づき修正案の提案は受けない設定で使用)。物語の構成や本文作成は全て自分で行っています。」




