第7章:お嬢様と踊る、奇跡のダンスパーティー?【中編】
中庭に響き渡る、サルファーン作曲の『愛のワルツ』。
イルミネーションの光の海の中で、かすみは拓人のリードに身を任せ、ゆっくりとステップを踏んでいた。完全に二人の世界――まさにダンスパーティーは、拓人の独占状態だった。
「かすみちゃん、上手上手。……あのね、かすみちゃん」
拓人はステップを止め、かすみの小さな両手を自分の大きな手でぎゅっと包み込んだ。いつも眠たげな拓人の目が、この時ばかりは吸い込まれそうなほど真剣な光を放っている。
「俺、かすみちゃんが『スーパルッツ』に買い物の社会勉強に来てくれた時、実は裏からずっと君のことを見てたんだよね。あ、俺の家、あそこの創業者一族だからさ。慣れない場所で一生懸命がんばるかすみちゃんを見た時から、ずっと君のことが忘れられないんだ」
「まぁ……! あの時、拓人さんは私を見ていらしたの……!?」
かすみが驚きに目を見張る中、拓人はさらにストレートに言葉を重ねた。
「うん。だからさ――あのかすみお嬢様。俺とお付き合いしてください。もちろん、結婚を前提にです」
「け、けけけ、結婚前提だとォォォォォーーーーーッッ!!!!」
静まり返る中庭で、誰よりも激しく叫んだのは森野海斗だった。海斗は地響きを立てながら二人の間に割って入ると、拓人を指差してツブツブの瞳をカッと見開いた。
「てめぇ拓人ォォォッ! お嬢がスーパルッツでパニックになってた時、裏で見てるだけだったんじゃねぇか! あの時、泣きそうなお嬢の手を引いて、男らしく連れて帰ったのはこの俺だァァァッッ!!! お嬢のピンチを救ったのは俺なんだよ!!!」
「あ〜、あの時かすみちゃんを連れて帰ったの、やっぱり海斗だったんだ。でも、これからは俺がずっと守るからいいよ〜?」
のんびり答えつつも、かすみの手を絶対に離さない拓人。
「貝森……! 君という男は、のんびりした顔をして一番凶悪なスピード違反を犯すんだね。納屋さんの初めてのパートナーは、僕が相応しい!」
早瀬碧もメガネの奥の目を氷のように冷たく据わらせ、凄まじい嫉妬のオーラを放っている。
「ま、まぁ……皆様、お付き合い……け、結婚……っ!?」
あまりにも情熱的な拓人の告白と、海斗の「俺が連れて帰った」という猛アピールに挟まれ、かすみの頭の中はマジ卍で真っ白になってしまった。
その時、青藍高校の上空に、バリバリバリバリと凄まじい爆音が響き渡った。
『――緊急警告。ターゲット周辺に、お嬢様の純潔を脅かす害虫どもを多数確認。これより駆除を開始します』
夜空からライトをギラギラと光らせた納屋財閥の大型ドローンが急降下してくる!
「お嬢様の初めての婚姻届の相手はこの私ですーーー!! 買い物の社会勉強の時からお嬢様を覗き見していた貝森財閥も、勝手にお嬢様を連れて帰った不届きな金髪(海斗)も、全員まとめて私が国家権力で宇宙の彼方へ強制排除いたします!!!」
拡声器を握りしめ、ヘリのロープから命綱なしでスライディング降下してきたのは、嫉妬で完全に理性を失った執事・誠であった!
後編に続く




