第7章:お嬢様と踊る、奇跡のダンスパーティー?【ダンスパーティー決戦編】
夕暮れ時の中庭。特設ステージを囲むように灯されたイルミネーションが、色鮮やかに夜の闇を照らし出していた。
ロマンチックなBGMが流れる中、おろしたての純白のドレスに身を包んだかすみが、一歩、また一歩と中庭の中央へ進み出る。
「お、おい……見ろよ……」
「サファリアの、納屋かすみお嬢様だ……」
その瞬間、周囲にいた青藍高校の生徒たちから、地鳴り collective な感嘆の息が漏れた。
きらめく光を浴びて佇むかすみは、まるで夜空から舞い降りた天使か、絵画から抜け出してきた本物のプリンセスのようだった。普段は肩をそびやかし、大声を上げている不良生徒たちも、今日ばかりはその圧倒的な美しさに言葉を失い、ただただうっとりと目を奪われて立ち尽くすことしかできない。
かすみは少し緊張した面持ちで、お気に入りの自由帳をそっと胸に抱きしめながらパチパチと目を瞬かせた。
(皆様、そんなに見つめられて……私、ドレスの着こなしを間違えてしまいましたかしら?)
男たちの視線がかすみに集中し、誰もがその美しさに気圧されて最初の一歩を踏み出せずにいた、その時だった。
「かすみお嬢様」
人混みをかき分けて、迷いのない足取りで真っ直ぐにかすみの前へと進み出た男がいた。
首にかけていた大きなヘッドホンを外し、いつもの眠たげな目を優しく、けれどこれまでにないほど熱い光を宿してきらめかせている――貝森拓人だった。
海斗や碧が「お嬢!」「納屋さ……」と言葉をかけようと喉を鳴らした瞬間を完全に追い抜き、拓人はかすみの目の前でお上品に、かつスマートに深く頭を下げた。
「かすみお嬢様。今日も、すっごく素敵です。……俺と一緒に、ダンスを踊ってください」
のんびりとした口調の中に、隠しきれない情熱を込めて、拓人はそっと大きな右手を差し出した。
誰もが知る大衆スーパー『スーパールッツ』を運営する、巨大な貝森財閥の隠れ御曹司としての気品が、その一瞬、隠しきれずに溢れ出ていた。
「まぁ……拓人さん」
かすみはドキン、と胸が高鳴るのを感じた。
昨日、教室で拓人のヘッドホンから聴かせてもらったサルファーン作曲の『愛のワルツ』の美しい旋律が、頭の中でリフレインする。いつも優しく自分を見守ってくれていた拓人の真っ直ぐな瞳に見つめられ、かすみは頬をぽっと薔薇色に染めながら、嬉しそうに微笑んだ。
「はい、喜んで。……よろしくお願いいたしますわ、拓人さん」
かすみはそっと、拓人の大きな手の上に、自分の小さな白手袋の手を重ねた。
「な、なぁァァァァァッッッッッ!!!!!!」
二人が手を取り合った瞬間、背後から世界がひっくり返ったような絶叫が響き渡った。
「て、てめぇ拓人ォォォッッ!!! お前、何一番乗りにエスコートしてんだよォォォッ!!」と、ツブツブの瞳(?)から文字通り涙と炎を同時に噴き出さんばかりに激昂する森野海斗。
そして、「貝森……君という男は、本当に計算が狂う男だ……!」と、メガネの奥の目を氷のように冷たく据わらせて拳を握りしめる早瀬碧。
ついに重なったかすみと拓人の手。
お嬢様を巡る財閥の男たちの戦いは、ダンスのステップとともに、さらなる大波乱の渦へと巻き込まれていく――!
中編に続く




