第6章:お嬢様と踊る、奇跡のダンスパーティー?【後編】
ついに迎えた、青藍高校の学園祭当日。
納屋財閥の大食堂には、おろしたての豪奢なドレスに身を包んだかすみが、少し緊張した面持ちで朝食の特製エッグベネディクトを口に運んでいた。
目の前に座る父・薫は、愛娘のあまりの美しさに目元をこれでもかと緩ませている。
「よく似合っているよ、かすみ。今日の青藍高校の学園祭、存分に楽しんでおいで。お父様とお母様が出会ったあの場所で、かすみも素敵な思い出を作れるといいね」
「はい、お父様! 皆様が一生懸命準備してくださった学園祭ですから、私、とっても楽しみですわ!」
朝食を終え、いざ青藍高校へと向かう高級車の車内。
後部座席のかすみの隣には、いつも以上に殺気と負のオーラを放ち、ハンドルを握る運転手をバックミラー越しに怯えさせている執事・誠の姿があった。
「……お嬢様。やはり、今からでもあの泥の祭典への参加は拒否されるべきです。私の計算によれば、あそこの男子生徒どもがお嬢様を不潔なツブツブの瞳(?)で見つめる確率は100%。想像しただけで私の胃壁が嫉妬でスクラップ工場行きになりそうです。ダンスパーティー? 必要ありません。お嬢様の初めてのダンスパートナーはこの私です。もしあの金髪総長(海斗)やインテリメガネ(碧)、あるいはスーパールッツの隠れ御曹司(拓人)がお嬢様に1ミリでも触れようものなら、私は嫉兆のあまり、その場で国家権力を発動して彼らを宇宙の彼方へ強制排除いたします」
「ま、誠さん、車内でそんなに嫉妬ばかりなさらないでください。皆様は大切なお友達なのですから!」
かすみがハラハラしながら窘めているうちに、車は熱気に包まれる青藍高校の校門へと到着した。
車を降りた瞬間、かすみの目に飛び込んできたのは、普段の荒々しい雰囲気からは想像もつかないほど、色鮮やかに彩られた学園祭の光景だった!
「まぁ……! なんて活気があって、素敵な世界なのかしら……!」
校庭にはたくさんの模擬店が立ち並び、焼きそばやわたあめの香ばしい匂いが漂っている。壁の落書きはカラフルなポスターで綺麗に隠され、不良生徒たちも今日ばかりは法被を着て、「いらっしゃい、お嬢さん! 焼きそば安いよ!」と威勢よく声を上げている。
教室を覗けば、海斗たちの2年A組が作った「メロンソーダ喫茶」が大盛況で、大翔と凌駕が汗をかきながら接客をしていた。
かすみの姿を見つけた海斗が、長ランの襟を正しながら真っ赤になって駆け寄ってくる。
「お、お嬢……っ! 本当に来てくれたんだな……! 泥臭い学校だけど、楽しんでってくれよ!」
「はい、海斗さん! とってもエモくて、マジ卍な素晴らしい学園祭ですわ!」
碧が計算し尽くした美しい飾り付け、拓人が試作した美味しいメロンソーダわたあめ。かすみはこれ以上ないほど充実した時間を過ごし、学園祭の興奮は最高潮へと向かっていく。
そして、夕暮れ時。
校内にロマンチックなチャイムが響き渡り、中庭の特設ステージのまわりに一斉に美しいイルミネーションが灯った。
ついに、誰もが待ち望んだ学園祭のクライマックス――【ダンスパーティー】の時間が幕を開ける。
夕闇の中、きらめく光に照らされたかすみが中央へ進み出ると、周囲の不良男子たちから「おぉ……」と地鳴りのような感嘆の声が漏れた。
その瞬間、意を決した男たちが、火花を散らしながら一斉にかすみへと歩み寄る。
「お嬢! 俺と……俺と一番最初に踊ってくれ!!」(海斗)
「納屋さんの初めての手は、僕が握るべきだ」(碧)
「かすみちゃん、俺と『愛のワルツ』で踊ろう?」(拓人)
三者三様の御曹司たちが、ドレス姿のかすみへ同時に右手を差し出す!
お嬢様の初めてのパートナーを巡る、運命のダンスパーティーが今、大波乱とともにスタートする――!
第7章ダンスパーティーに続く




