第128章:激痛と誓い〜すがる想い、動き出す命〜
熱を帯びた彼の瞳に射抜かれ、時が止まったかのように息を呑んだ。
掴まれた手首から、誠さんの温もりが全身へと伝わってくる。彼が、ただの執事としてではなく、一人の男性として私を――。
そう思った瞬間だった。
「……っ!」
下腹部を、鈍く重い痛みが稲妻のように貫いた。
立っていられないほどの激痛に、私は思わずその場にうずくまりそうになる。
「かすみ様!?」
誠さんが咄嗟に私を抱きとめた。彼の腕の中で、私は必死に痛みを堪えながらドレスの裾を強く握りしめた。息が荒くなる。こんな痛み、初めてだ。まさか、いよいよ……。
「ま、誠さん……っ、お腹、痛い……っ! 助けて……っ」
脂汗が滲む額を彼の胸に押し当てながら、私はすがるように声を絞り出した。
さっきまでの甘く熱を帯びた空気が一変する。私を抱き抱える誠さんの腕に、グッと力が入ったのがわかった。
「大丈夫です、私がついています! すぐに医療チームを!」
誠さんは私を軽々と抱き上げると、長谷部ホールディングスが極秘に手配した、最高峰の医療スタッフたちが待機する特別分娩室へと向かって駆け出した。
「かすみ様、しっかり息を吸ってください。絶対に、あなたも、お腹の赤ん坊も私が守り抜きます」
耳元で聞こえるその力強い声だけが、今の私を繋ぎ止める唯一の命綱だった。
陣痛の波が押し寄せるたび、意識が遠のきそうになる。けれど、その度に彼が私の手を強く、絶対に離さないと誓うように握り返してくれた。
南条隼人の監視の目から逃れ、ずっと想い続けてきた人に守られながら迎える、新しい命の誕生。
(どうか、無事に……!)
私は薄れゆく意識の中で、必死に彼の温もりを探してその手を握りしめた。
129章に続く




