表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サファリア女学院から青藍高校へ潜入!? 〜お嬢様の「普通の恋」は、完璧な執事が絶対に許しません〜』  作者: 琥珀かえで


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
138/396

第120章:月下の逃避行〜執事に託された、最も重い秘密〜

深夜の静寂を引き裂くように、納屋邸の裏門に一台の黒い車が滑り込んできた。

運転席から降りてきたのは、少し息を切らした誠さんだった。いつもの完璧に撫でつけられた髪が、ほんの少しだけ乱れている。

「かすみ様……!」

私を見つけた彼が、切羽詰まった声で駆け寄ってくる。

その声を聞き、彼の姿をこの目に映した瞬間。私の中で張り詰めていた最後の理性すらも崩れ去った。

「誠さん……っ!」

私は弾かれたように駆け出し、思わず彼の胸へと飛び込んで、その広い背中に腕を回して強く抱きしめていた。

ビクッと、誠さんの体が硬直するのがわかる。けれど、私は彼にしがみついたまま、子供のように泣きじゃくった。

「お願い……誠さん、このまま私をどこか遠くに連れて行って……!」

「……かすみ様」

「休息が必要だってわかってる。でも、もうここにはいられないの。南条夫妻が急に乗り込んできたり、早瀬碧が……あの『カフェ』ができたなんて言いに来たり……。あんな人たちのいる場所に、もう一秒だって居たくない……っ!」

私の震える背中を、ためらいがちに、けれどやがて力強く、誠さんの大きな手が包み込んだ。

彼の胸から伝わる温もりと、規則正しい心音だけが、今の私を現実の狂気から繋ぎ止めてくれる唯一の命綱だった。

「……わかりました。私が、必ずあなたを安全な場所へお連れします。……誰の手も届かない場所へ」

誠さんのその低く力強い誓いを聞いて、私は彼の胸に顔を埋めたまま、覚悟を決めて口を開いた。

「ねぇ、誠さん。……誠さんにだけは、本当のことを言うね」

「本当のこと……?」

「私……南条隼人の子供がいるの」

その言葉が落ちた瞬間、私を抱きしめていた誠さんの腕に、ギリッと強い力がこもった。

息を呑む気配。私は彼の胸に額を押し付けたまま、言葉を絞り出す。

「あの病室で寝言で言ったのは、ただの夢の中の子供のことなの。現実じゃない。……私のお腹にいるのは、間違いなく隼人の子供。でも……」

「……」

「隼人には、絶対に言わないでほしいの。もし知られたら、あんな誤解をしたままの彼に、この子はどう扱われるかわからない。……お願い、誠さん。私のために、隼人を裏切って」

それは、南条の忠実な執事である彼に対する、残酷すぎる願いだった。

けれど、長い沈黙の後。

誠さんは私を抱きしめる腕の力をさらに強め、私の耳元で、静かに、けれど絶対的な熱を帯びた声で囁いた。

「……承知いたしました。あなたの命も、そのお腹の小さな命も。この私が、全てを懸けてお守りします」

雲の切れ間から差し込んだ月明かりが、南条隼人を裏切る決意をした執事の、狂おしいほどに優しい瞳を照らし出していた。

121章に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ