第98章:純白の絶望と、鳥かごの夜〜帝王の完全な支配〜
豪華絢爛なシャンデリアが輝く式場。
鳴り響く祝福の拍手とウェディングベルの中、納屋かすみと南条隼人の結婚式は始まった。
誰もが羨むような豪奢な純白のドレスを身に纏いながら、私の心にはずっと、ぽっかりと冷たい穴が空いていた。
(きっと、隼人さんは全部知っていたんだ……)
貝森拓人が結婚していることも、あの丘に子供と一緒にいることも。
私が直接それを目の当たりにすれば、拓人への想いを完全に諦め、絶望することすらも計算して、わざと私を泳がせていたのだ。
抗う気力すら奪われた事実に、私は式の途中で急に気分が悪くなり、一人で控え室へと逃げ込んだ。
ソファに崩れ落ちると、我慢していた涙が後から後から溢れて止まらなかった。
どれくらい泣いていたか分からない。
突然、控え室のドアが「ガチャン」と冷たい音を立てて開いた。
そこに立っていたのは、今日から私の「夫」となる男、南条隼人だった。
彼は泣き濡れた私の顔を見下ろすと、何の慰めの言葉もかけず、ただ低く、絶対的な声で言い放った。
「……最後まで、俺の隣にいろ」
それは夫としての優しさではなく、絶対的な支配者からの命令だった。
私は逆らうこともできず、ただ頷き……愛のない結婚式は、淡々と最後まで続いた。
そして、その日の夜。
南条家の広大な寝室で、私は一人、冷たい窓の外を見つめていた。
すると、背後から大きな影が近づき、力強い腕が私を後ろから深く抱きしめた。
隼人さんだ。
私の耳元で、彼が低く甘い、けれど逃げ場のない声で囁く。
「かすみ、全部忘れろ。貝森拓人はもう来ない」
ビクッと肩を震わせた私を、さらに強く腕の中に閉じ込めながら、彼は決定的な言葉を告げた。
「明日から、南条財閥の秘書として俺の傍におくからな」
妻として家に閉じ込めるだけでなく、仕事でも、日常でも、私のすべてを彼の支配下に置くという宣言。
それは、納屋かすみという人間の自由が、この世界から完全に奪われた瞬間だった。
99章に続く




