表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サファリア女学院から青藍高校へ潜入!? 〜お嬢様の「普通の恋」は、完璧な執事が絶対に許しません〜』  作者: 琥珀かえで


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
114/402

第96章:海が見える丘の残酷な真実〜消えた初恋と、彼の嘘〜

貝森財閥の痕跡は、ネットの海から完全に消え去っていた。

何度検索ボタンを押しても、出てくるのは無関係なページばかり。私の心には、ぽっかりと冷たい穴が空いていた。

(こうなったら……)

私はすがるような思いで、スマホのアドレス帳を開いた。

発信したのは、青藍高校時代の拓人の友人、早瀬碧はやせ・あおい

早瀬ホールディングスの御曹司であり、インテリ眼鏡が似合う彼は、実はかつて拓人と私の恋のライバルでもあった。

彼なら定期的に拓人と連絡を取っているはずだ。

「ねえ、貝森拓人さんのこと、何か聞いてない……?」

祈るように尋ねる私に、電話口の碧は少しだけ沈黙し、淡々と答えた。

『なんだ、知らなかったの? 拓人なら、あの海が見える小高い丘にいるよ。……見に行って、確認してきなよ』

その言葉に、私は弾かれたように走り出した。

やっと会える。彼に会ったら、たくさん話したいことがある。

(私をお迎えに来てくれる……!)

息を切らして海が見える小高い丘にたどり着くと、そこに愛しい背中があった。

貝森拓人だ。

「拓人……っ!」

私は思わず駆け寄り、その背中にすがりつくように抱きしめてしまった。

「ずっと、ずっと会いたかった……! ねぇ、私を迎えに来てよ……!」

あふれる想いが止められなかった。

しかし、その感動の再会を引き裂くように、遠くから無邪気な声が響いた。

「パパぁー!」

ビクッと拓人の体が強張り、私から離れる。

駆け寄ってきた幼い男の子を、拓人は思わず抱きとめた。その顔は、拓人の面影にそっくりだった。

「あ、あっ……これは親戚の子供なんだよ。遊びに来てて、預かっているだけで……」

拓人は私から目を逸らし、ひどく狼狽しながらとっさに嘘をついた。

その時だった。

みなと、待ってよ」

丘の下から現れた女性の姿に、私は息を呑んだ。

如月あやめ。

かつての高飛車なお嬢様の面影はどこにもなく、そこにはすっかり落ち着いた『母親』の顔をした彼女が立っていた。

嘘だ。

親戚の子供じゃない。湊くんは、拓人とあやめの子供だ。

拓人は結婚していた。あやめと。

南条隼人が言っていた『あいつは結婚している』という言葉は、本当だったのだ。

(早瀬碧も……知っていて、わざと私をここへ来させたんだ……)

ガラガラと、私の中で最後の希望が音を立てて崩れ落ちていく。

拓人の情けない嘘が、何よりも私の心を深く抉った。

私はただ後ずさり、逃げるようにその場を走り去った。

丘のふもとには、黒い車が静かに停まっていた。

執事の誠が、何も言わずにドアを開ける。

車に滑り込むと、誠はバックミラー越しに私を一度だけ見つめ、静かに車を発進させた。

遠ざかる海を見つめながら、私はぽつりと呟いた。

「拓人の……バカ……」

涙すら出ないほど、私の心は完全に死んでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ