第1章-4 食べられない
社宅は、巨大な建物のすぐ傍にあった。
その建物は圧倒的な存在感を放っている。
「ねえ、あの大きな建物は……何?」
「あれは裁判所です。
私の職場であり、この国で最も強い権力を持つ場所になります」
ガーディが説明してくれた。
「そうなんだ。なんだか、暗そうだね」
「そんなことありません。
図書館などもありますし、一般の方も出入りしていますよ」
僕は話を聞きながら、バッグを強く握った。
「寒いですか? 急ぎましょう」
ガーディの足が早くなる。
社宅の門を潜り、一室の扉の前で止まった。
ガーディが鍵を開け、明かりをつけた。
部屋は広く、ベッド、トイレ、キッチンまで揃っていた。
ガーディは僕をソファに下ろした。
「少しお待ちください。お風呂と布団を用意してきます」
そう言って奥へと消えた。
僕はバッグを開ける。
フクロウは羽を咥えたまま、丸くなって眠っていた。
ふいに声がかけられる。
「お腹は空いていませんか?」
顔を上げると、ガーディが戻ってきていた。
片手でお茶と焼き菓子の乗ったお盆を持ち、反対の手には毛布を持っている。
「恋人が好きなお茶とお菓子です。
きっと美味しいはずです」
ガーディはお盆をテーブルに置くと、僕に巻いたスカーフを外し、肩に毛布をふわりとかけてくれた。
温かい。
「ありがとう。いただきます」
お茶を口に運び、一口飲んだ。
だが――
――消えた。
代わりに、お茶の情報がデータとして流れ込んでくる。
「……あれ?」
お菓子も食べてみたが、同じだった。
味わえない。
僕は静かにテーブルに戻した。
「……ご馳走様でした」
ガーディは頷く。
「もう良いのですか?
よろしければ、お風呂もどうぞ」
大きなタオルが手渡された。




