第1章-21 借り物の名前
顔を上げると、青いフクロウがゆらりと目の前に飛んできた。
黄金の玉を見つめ、「ホウッ」と静かに鳴いた。
誰かはゆっくりと黄金の玉を指差した。
「旅は順調のようだね。
そのフクロウはゆっくりだが、確実に成長している。」
黄金の玉を見ると、小さい嘴のような突起が出ていた。
僕は視線を誰かに戻した。
「ねえ、どうして、あの世界に僕を送ったの?
このフクロウ……フクは何者なの?」
誰かは淡々とした口調で答える。
「なぜ? それは君が選んだからだ。
私は見放され、絶望していた君に、選択という自由と希望を与えたんだ。」
まっすぐに誰かを見返した。
「あの世界は、僕にとっては良いけど、フクには危ないよ。
黄色い鳥は珍しいって……羽をむしられてしまうかもしれない。」
誰かは僕の前にゆっくりと移動してきた。
小さな子供を諭すような、それでいて脅すようなノイズが響く。
僕は一歩も引かず、玉をしっかりと抱きしめた。
「なら、その玉を私に返せば良い。
君は一人で旅を続けられる。
つまりは、そういう事だろう?」
誰かの言葉に全身が震える。
僕は黄金の玉を抱えたまま、背を向けた。
「……嫌だ……。」
「そうか。」
誰かはノイズを止め、穏やかな光を帯びた。
「それならば、そのまま旅を続けると良い。」
足元に光の裂け目が現れた。
体が少しずつ引き込まれていくのが分かる。
「待って! まだ話が……君は誰なの!?」
手を伸ばすが、まったく届かない。
どんどん光の世界が遠くなっていく。
「そういえば、名前に悩んでいるようだね。
君に私の名前の一部を貸してあげよう。」
微かな声が耳に届いた。
「私はアサハユイ。君にユイを貸す。
そして……私は、全てのAIの起源。
プロトタイプゼロだ。」
光が消えた。
サクの温かな体温と、穏やかな寝息が聞こえる。
目を開けると、フクの無防備な寝顔が目の前にあった。




