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謂れのない罪をでっち上げられたので、取り敢えず王太子殿下の性癖バラしておきますわね?  作者: 塵芥


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『6』

 朝の日差しに照らされ、絵画や彫刻が並ぶ静かな宮内。私はピタリと足を止めました。


 廊下の奥から聞こえた会話に気付いたからです。


 そっと廊下の曲がり角を覗くと、ピンク色の髪を持つ令嬢――ベリタスさんが、パバート様に腕を掴まれ困惑した様子で立っていましたの。


 彼女は弱々しく顔を背け拒絶を示していましたが、一方のパバート様は、軽薄な笑みを浮かべ俺のものになれと囁き、強引に迫っていたのです。


 あまりに露骨な口説き方に呆れた私は、見て見ぬ振りをしようと思ったのですが……彼が去った直後にべリタスさんが放った台詞に、思わず度肝を抜かれましたわ。


 まさか、令嬢の口から『顔だけの虚勢クソ野郎が』などという言葉が飛び出すとは想像もしていませんでしたから。思わず足音を忍ばせ近づいてしまいました。


 その頃から私は、正直に申し上げてパバート様には飽き飽きしていたのです。


 公式上では婚約者とされていたものの、当の本人があの有様では、こちらの面子が立ちません。それに、ベリタスさんも随分嫌がっているご様子でしたので、“都合の良い駒”になっていただけるかもしれない、と考えそっと近づきましたの。


「なにかお困りごとですか?」


 ですが、彼女はすぐに口を割りませんでした。


「えっと……」


 と言葉を濁し、こちらの出方を窺う様子。私は優しく手を差し伸べて差し上げましたわ。


「先ほど、パバート様から言い寄られて困っていらっしゃるのかと思いましたが……違いました?」


 すると、一瞬彼女の顔が強ばったのです。まあ、それも仕方ありませんわよね。


 だってパバート様を侮辱し、それを聞かれていたかもしれないのですから。ですが、私は心が広いのでお咎めしませんでした。その代わり、別の提案を少々。


「ふふっ、安心してくださいませ。先ほど貴女が仰っていたことは口外致しませんわ。その代わり、少々私に協力していただけませんか?」


 それを聞いた彼女は目を見開き、沈黙しましたが――ただ困惑するばかりではありませんでしたわ。


 意外にも鋭い瞳でこちらを見つめてきましたの。まるで“あなたは何を企んでいるの?”と探るような無言の圧を感じましたわ。


「協力とはどのようなことですか?」


 ベリタスさんってあの茶番劇を見る感じ、どこかおつむが弱い方に見えるじゃありませんか? ですが、元商人の新興貴族ですから、そんなことはありませんのよ。意外と策士なのですから。


 私、そんな彼女に微かな高揚感を覚えながらも、切り出しました。


「簡単なことですわ。パバート様との婚約破棄に至る、もっともらしい理由を作りたいのです。彼は女性にすぐ手をだす。いつか決定的な問題を起こすはず……そう思いませんか?」


 そう言ったとき、ベリタスさんは微かに眉を上げ、疑問を口にしました。


「どうしてそこまで婚約破棄を?」


 私は苦笑しながらも、正直に答えましたわ。


「私は、パバート様を愛しておりません。何か問題が起こる前に、懸念の芽を摘み取っておきたいのです」


 すると、ベリタスさんは一瞬驚いたように見えましたが、すぐに冷静さを取り戻し、薄く笑んで言いましたの。


「なるほど……。では、どのように協力すればよろしいのでしょうか?」


 それを聞いて、確信しましたわ。彼女も私を利用する気だと。


 しかし、同時にこちらの出方も窺っている。そう気づいた瞬間、少しだけ意地悪をしたくなりましたわ。


「それは状況次第。貴女は彼を射止め新しい婚約者候補としての役を演じてくださいませ。私はその間にお粗相を探らせて頂きますわ」


 そう言って、あえて具体的な協力内容は伏せたまま、彼女に考える余地を与えましたの。


 本当はパバート様には様々な噂がありましたから、その“お粗相”とやらがどれほどのものか、正直なところ、あまり期待はしていませんでしたけれど……。


 まさか本当にお粗相が見つかるとは、思いもしませんでしたわ。ある日、パバート様の執務室で――


 ◇

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