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謂れのない罪をでっち上げられたので、取り敢えず王太子殿下の性癖バラしておきますわね?  作者: 塵芥


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10/32

『10』

 とある夜のユアマシャール家。


 静寂を破るように、“黒い影”が忍び寄っていた。


 黒いマントを羽織り、顔の大半を隠した二つの影。一つは妙に背が高く男性的。もう一つはそれよりも頭一つ分ほど低く、男か女かは判然としない。


 彼らは邸宅の周囲を慎重に進み、夜そのものが味方しているかのように音もなく動いていく。


 ユアマシャール家の広大な屋敷は、この時刻には従者の気配すらも吸い込まれ、完全な静寂に包まれている。そのためか、誰一人として彼らの侵入に気付く者はいない。


 二つの影は辺りを警戒しつつ頷き合うと、一人は外で待機し、もう一人は屋敷内へと侵入した。


 狙いは二階の中央に位置するユリウスの部屋。


 室内には静寂が満ち、わずかな月明かりがカーテンの隙間から差し込んでいる。


(まさか――こちらの動きがバレていた……?)


 影は静けさに不安を覚えつつ、天蓋のカーテンをそっと開く。


 ベッドには僅かな膨らみがあり、誰かが眠っているのが見て取れる。


(なんだ、寝ているのか)


 影は小さく息を吐き、慎重に窓を開けた。夜風が室内に流れ込み、カーテンが僅かに揺れ動く。


「……チッ」


 その揺れに苛立ちながらも、影はロープを静かに垂らし、外で待機していたもう一人を招き入れた。


 一見手間のかかる行動だが、これには確かなメリットがある。


 それは、リスクの軽減。


 万が一犯行が発覚しても、二人揃って捕まることは絶対に避けねばならない。この方法なら、常に単独犯を装うことが可能。


 実際、これまでの調査も犯人が単独という前提で進められており、そのおかげで彼らは今まで追及の手を逃れてきた。


 窓からもう一人が合流すると、ここから犯行開始である。


 影は小さな香炉を取り出し、慣れた手つきで特製のお香に火を灯す。


 漂い始める甘い香りが室内に広がり、やがて空気に溶け込んだ。


 それは催眠と媚薬の効果を併せ持つ危険な代物で、意識を曖昧にし、理性を鈍らせる。


 ただし、男には効果がない。影らはその特性を理解した上で、標的であるユリウスを確実に捕らえようとしているのだろう。甘い香りが室内に充満すると、一人がニヤリと頷き、意識の薄れたユリウスを肩に担ぎ上げた。


 すると、もう一人が不気味な笑みを浮かべ、儀式めいた手つきで黒薔薇をベッドへと配置すると、中性的な声でボソリと呟く。


「いつも通り、完璧ですね」


 二つの影は軽く目配せすると、物音一つ立てずユリウスの部屋を後にした。


 ◇

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