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二分のギルド 10

 アッキーたちは、本人が大活躍で半漁人を倒す。モニカたちも目的の物が見つかった(枝が腐っているため一つ入手出来ず)それを待つライムたちは切磋琢磨修業していた。

「街へ戻るか」


 その日のうちに半漁人が倒された話は、オアシス湖の街中に伝わった。ただモンスターの襲撃が再来するかもしれないから、あまり騒がないでほしいと話に付け加えた。


「さあ、召し上がれ」

 オアシス湖の街の店デイデイで昼食を運ぶ女が声をかける。



「お前、強いな」


「い、いや」


「あなた、凄腕のアッキーって二つ名がついてる冒険者なんでしょ」


「知らないけど・」

 赤・青・黄タンの殴られた顔で恰好つかないアッキーが謙遜して答える。


「そうだ、回復するのを忘れていました」


「バルバラっ、治したら街の皆はアッキーが半漁人を倒した事、ぜーったい気づかないわよ」

とプリンシパル。


「そう?このタンコブだと殴られただけにしか見えないわ、私は治した方が活躍したんだと思うからさ」

とバルバラが答える。


「結構やられたわね」

 バルバラがアッキーの隣に立つと、顔にロッドを近づけマドレヒーリングを唱えた。すると顔の腫れが引いていき、内出血の血もどこかへ消えていった。


「エウロ何、私は別に嘘はついていない。その証拠に奴らが、からかいにこないでしょ。アッキーを馬鹿にする絶好の機会を逃すはずないから」

とバルバラがアッキーを回復した理由について説明した。


「悪かった。勝てない敵を前にしたから顔が強張っていたんだ」


「え、ええ、どこ行くのエウロ?どうして」

 恐る恐るプリンシパルが尋ねると、


「どこへも行かない。これから誰かが襲われる度、あの光景を思い出さないといけないから、ちょっと疲れたんだ」


「よかった。エウロまでいなくなったらどうしていいか私・・」



 それから体を休めた皆、しかしスカルベとアッキーは街の外で修業をしていた。



「お前は瞬発力がない、だからその力を鍛えろ」


「さあ、その斧を持ってかかってこい!」


 アッキーは金の斧を振り回す、いつもと同じように手で止めるスカルベ。

「シュリンシュリン、カシィ!」


 しかし、今回はスカルベの反応が違った。

「その斧・・・・強いな」


「斧?」


「まだお前には早いかもな、その武器」


「・・・?」

 意味が理解できないアッキー。



 修業が終わり光球も傾いてきたので街に戻り夕食をとる。街は半漁人がいなくなったので大忙し、大盛況のお祭り騒ぎで活気づいていた。静かにと注意しても、その歓喜の声はとまらない。


「湖からあまり水を取らないように言っておくか」


「エウロ偉い!水は貴重で大切なものだから有効に活用しなくちゃ、モンスターがいなくなったとなると中央の家の商人が好きなだけ取ろうとするだろうからさ」

とバルバラが言う。


「アッキー、今日はここで泊まって明日の朝出発する」


「は、い」


「俺はちょっと出てくる」

 スカルベは街を出た。


「ぼ、僕は?」


「お前はここにいろ、あとは自由だ」

 こんな夜更けにどこ行くんだろうと疑問を感じたアッキーだが、スカルベだがら心配ないと思った。


 スカルベが出かけてすぐ、アッキーは気にかかったのでオアシス湖に行った。もちろん、リトルからもらった金の斧を持って。半漁人がいなくなっても、まだ外にはモンスターがいるから気を抜かない。




 オアシス湖に行くとぼんやりと岩に座るリトルの姿が見えた。アッキーは彼女の隣に腰かけた。この世界に突然一人だけつれてこられた、人間に見つかる不安と半漁人に苛められる恐怖を背負って生きてきたのだ、思うことはたくさんあるだろう。


「・・・・・大丈夫?」

 異世界ゲームプレイ中のようなイベント気分で話しかけるアッキー、でもこれは現実、正真正銘の本物の人魚が隣にいた。


「ちょっとねー、ここもいいかなっと思ってさー。私、海にいた時に一度人間に見つかったことがあるの」


「うん」


「それから人間たちは私を探して追い回し網を張ったり、魚じゃない動きをする生き物を放って捕まえようとした」


「恐いね、それでここにいたの?」


「いいえ、ここにいたのは他の場所に行けないから。私、湖に来てからも半漁人に追い回されその恐怖が続いた。半漁人は体が大きいから岩の間には入ってこられない。だから、ずっと私はそこに身を隠して生活していた、この湖は小さいけど、岩の間の隙間の空間に比べたらはるかに広いわ。そんな怖い思いから解放されたから外に出たの」


「うん」


「ねえ、月を水辺で見れるって最高じゃない?」


「最高」


「そうだ、もう人間に見つからない様にしなくちゃ」


「うん・」

 もう水の中に行くんだなと思い、アッキーは足裏を岩に付けた。


「はい、それも底に落ちていたの」

 アッキーに何か手渡す人魚。


「これは?」


「あげる、あなたのおかげで私は自由になれた」


 ―何かの羽を手に入れた―。


「ありがとう。湖は底にも宝があるんだね」


「ふふふふしししっ。アッキー様、私の一番の宝は綺麗な水です」


「綺麗な水」

 そういって人魚の顔に見とれるアッキー。目もきれいだし尾だって鱗があり鮮やかな色である。


「それじゃー頑張って下さい、勇敢な戦士アッキー様」


「はい」


「パッ!・・・ポシャン」






「バサッ!」


「ガザッ、ザザァァアァァァア」


「グァア、グァアアアーゴォー」

 若いドラゴン族の男が吠える。


「グァァアー、ゴゴゴ、クゥォオーン」

と、別の若いドラゴン族の男が地図のある点を指で差す。


「つまり、この岩壁からモンスターが発生している」


「ゥゥ」

 若いドラゴン族の男が頷く。


「お前達、調査の進捗状況はどうだ?」


「はいっ、スカルベさん。この土地のモンスターの大部分はダンジョンから発生しております。ですが一部のモンスターはどうやら岩壁から発生したようです。先日の街を襲撃したモンスターは、その岩壁から来ていたことが分かってきました」


「うむ、ご苦労。大変だっただろう、土産を持ってきた」


「きゃあわぁ、いつもスカルベおじさん美味しい物をありがとう。私がこうして・・」


「それ以上言うな、お前達には世話になっているんだ。ここも窮屈だろう、しばらく我慢してくれよ皆」


「はーい!」

「グゥオ!」

 何十、何百にも達する声援がその言葉に応えた。






「ふぅ~」

 一安心、リトルの話を聞いて自分も閉鎖感から解放されたような気持ちになった。


 宿屋に戻る、まだスカルベは帰ってきていない。一体どこに行ったのだろうか、特段いなくても困ることもないアッキーだが部屋を閉めたままというのはスカルベさんに悪いので鍵を開けて寝ることにした。

 全力で戦ったので精神的にも肉体的にも疲れていた。こうしてまだ動けたのは、三年間の修業の成果と、戦士で体力のある職業だからである。

 しかし、なかなか寝付けず数時間、目を瞑り過ごした。


「カタ、ザザッ」


 薄目を開くとスカルベの姿が見えた。その一見で構わない、アッキーは安心から睡魔に襲われた、仮に敵に襲われてもスカルベさん(仲間)が守ってくれる・・。




「おい」

 翌朝、就寝中のアッキーの意識に声が襲いかかる。


「起きたか」


「うん、起きた」

スカルベさん、いつ見ても怖い顔と声。そして起きたのではない、起こされたのだ。とも言えず、朝になりサンサンドの街に出発した。




 モンスターが久しぶりに襲ってきた、なんとボルフライである。


「ちょ・・・」

 声をかける間にスカルベは翼を羽ばたかせ倒していた。


「久しぶりで体が鈍っていてな、いい運動になった」


「はい」

 修業のおかげで倒す姿は見ていたが、すぐに反応できなかった。


 昼になりサンサンドの街に到着。






 ライム達は五日間手持無沙汰になった、何もやらないわけにはいかない。それがリーダであり、この異世界から元の世界へ戻りたいという確固たる気持ちだ。


 ライム対ヴィンス、ヴィンス対エルドラ、エルドラ対ライムの組み合わせで戦うことにした。総仕上げとして組まされた戦闘は鞘のついた剣を使う。それでは少し甘いので“そこにあるもなら何を使ってもいいという“ルールが加わった。


「それじゃー、ライムと俺か」


「お手柔らかにお願いします」

 当たるのが刃でないなら思いっきりやってもいいよな。


「僕が審判だね、はじめ!」


 いきなり足蹴りするヴィンスさん、そんなのありかよ、鞘しか見ていなかった。そこにある物とか言ったから、俺はてっきり砂とか石を投げるのかと思っていた。


「きったない」


「これも戦術だぞライム」

 体勢を崩した所に鞘付き剣を振り下ろすヴィンス、


「どうせ」

 バランスを崩されたのなら後ろにいけばと俺は考え、踵を地面に当てて勢いを利用し後ろに跳んだ。


 追い打ちするヴィンスさんに俺はもう一度小ジャンプし体勢を整える。転ばなければ無抵抗状態にはならない。

 そして踵、つま先ともに地面につけた。所作を悟られない自然体で立ち、その状態から素早く縦に一刀を入れる。がヴィンスさんは、その一刀を振り出す時に突きを出す!


「・・な!」

 なにぃ!!一刀の鞘付き剣の中間に突きの先端を当てている、そんな芸当人間技かよ。さらに突いた鞘付き剣の右に右足を前に出して体を右前へ移動、鞘付き剣と体が俺と同じ距離にある状態でさらに突きをする。これは早すぎる、鞘付き剣の突きに鞘付き剣を当てるには点を見るしかない。


 普通はね!


 素早くファーストステップで後方回避した。点は俺の立ち位置が変われば線に変わる、角度の問題だ。


「まだまだ!」

 鞘付き剣の先を俺の移動先にずらした、これでは鞘付き剣の届く範囲もそこまで変わらない。


「なら」

 少し身を屈めた、俺とヴィンスさんの体格差だ。どうする、こちらに合わせるのは難しいぞ。


「斬撃」

 鞘付き剣を斜めに弾いた、ちょっと難しい体勢で放ったため威力は劣るがそれでも鞘付き剣の動きを一時的に止めることはできるはずだ。


「はははっ」


 捨て身か?ヴィンスさんは近寄ってきた!俺は鞘付き剣を振った。


「はっ!この勝負は勝たせてもらう」


 俺の横にヴィンスさんがいるが、攻撃中で腕が言うことを聞かない。すぐ横に攻撃するには少し距離をとって攻撃しないとならない。


 ・・・!


「ぐへっ!!」

 腹に一発拳を入れるヴィンスさん、鞘付き剣は間に合わなかった。


「うぐぐぐっ痛いぞ、これは。あ~~痛すぎだぁ」


「お前の敗因は力の配分にある。俺の鞘付き剣を振り払うだけの力で振ったんだ、そんな急には止めれん」


「な、なんでです・・・」


「俺は力を変えて戦っている。だから鞘付き剣を持つ手の力でも軽く持つことがある。一方お前は、いつも力を入れたまま攻撃している。だから硬い、そして固まり、攻撃を引くことができない。お前があれだけ力を入れているんだ、受ける方は大変だ。それをお前は勝っていると誤解したんだ、自惚れたな」


「ち、力配分・・・。剣で押し合いになった時、相手の力を腕で感じたことはあったけどそれが本気じゃないのか」


「くれぐれも手ごたえを感じすぎないということだな、ははははは」


「ライムの負けー」


「エルドラ、どこ見てるんだw」


「あはっはっは。今回は勝てたが、それを知られたらもう勝てん」


 一日目は、バランスのとり方と力配分を覚え一日が終わった。




 二日目、


「ヴィンス対エルドラ、はじめっ」


 ヴィンスは鞘付き剣を片手で持つ。もう1方の手はどうするんだ?エルドラは鞘付きナイフを前に構え、ゆっくりと間合いを詰める。


「スッ――――、カチッ!!」

 一刀か?見えなかったぞ!!ああ、ヴィンスさんの腕が鞘付き剣と共に下に傾いている。片手で持っているから当然だよな。でもエルドラはそれ以上踏み込もうとしない、何かあるのか?


「っと危ない、僕の鞘付きナイフを鞘付き剣で相殺し、反対の腕で掴もうって作戦?そんなことさせない」

 見破るエルドラ。


「そう思うのなら気を付けてくるんだな」


「言われなくても行くよ」


「シュタッ、シュッシュッ・・」

 エルフの技ブリンク、足を瞬く間に動かす技。次に姿が現れるまで前の残像を見ているようだ。だが俺もこれくらいなら見切れるようになった。


「いいのか位置がわかるぞ」


「まだまだ、パサッ」

 翼を広げるエルドラ。


 エルドラ、お前翼を持っていたんだ・・。エルフともドラゴンとも思えない青と白が混ざった綺麗な翼である。


「ウィンドウィング!」

「シュラリリリ」

 風の羽と名が付いた技は空を素早く飛ぶことができる。空を飛んでいるエルドラは、まるで意図して見せているようだ。


「撃て、詰められた鉄砲水!」

「ウォーターガン!!」


「パシャン!」 

「うわっ」


 エルドラは水魔術が使えるのか!使えるのなら魔術もアリだよな、いろんな方向からウォーターガンを放つが、ヴィンスさんは全てかわした。また、少し体勢が崩れかけたが視界は奪えなかった。


「トンッ」

 あきらめ地面に下りるエルドラ、


「もういいのか?」


「いくよ」


「ああ、こい」

 二人見合っている、瞬き一つで勝敗が決まるような緊迫感で、先に攻撃を仕掛けたのはヴィンスであった。


「ダッツ!!」


「くっ」

 足が滑ったヴィンス。


「カカッ、カン、コロン」

 受け止めるヴィンスさん、だが鞘付き剣を落とす。


「パシッ、バッ」


「うわわっ!」

 砂を投げるヴィンスさん、エルドラは目に砂が入り瞑ってしまった。その隙に、鞘付き剣を拾ってエルドラに斬撃を入れる。


「カカン、カカン!」

 それを受けるエルドラ。目が開いていないのに音か風かで捉えている、目を瞑る前の位置なら覚えておけるが・・。


「パシィン、バシバシッ」

 クイックカットでギザギザに鞘付ナイフを入れるエルドラ、ヴィンスさんの手から鞘付き剣が弾き落とされた。エルフの技なんて初めてで見切れないヴィンスさん、これは慣れの問題だ。


「負けだ、俺の負けだエルドラ。一瞬勝てたと思ったがお前はそれ以上に強くなった」


 直感力か?不思議な力によってヴィンスさんの動く位置まで正確に予見がついていた。


「ぼ、僕、勝っちゃった?勝ったんだ。やった、やったあ~」

 跳び上がり喜ぶエルドラ、この戦いエルドラも危なかったぞ。


「ヴィンスさん、もっとカッコよくじゃなくてカッコ悪く勝ってもいいんじゃありませんか?」

と言うと、


「それはだなライム、時と場合だな。勝てる敵にはそうはしない。ミノタウロスの時は手段が何もなかったからしなかっただけだ、俺だって死ぬとなったら汚い手でも何でもする。それに俺はお前達には、もう敵わない」


「は・・・い」

 俺は思い上っていたようだ、ヴィンスさんの事何も考えず言ってしまった。




 三日目、エルドラ対ライム。


「それじゃーいくよ」


「どうぞ、どこからでもこい、俺はもうそんな弱くない」


「・・・・」

 キラキラと辺りが光る、これはあの時の・・エルドラだな。光の中から攻撃が来そうだ、俺はキラキラから抜け出した。


「ドラゴンクロウ」


「おおっと、」

 俺は体をくの字にしてエルドラの攻撃を寸前の所でかわした。鞘付きナイフで攻撃じゃないのかよw。そっちの方が痛いし手加減なしだな、まあそれもアリだけどさっ。


「あれー、かわされた」


「俺は強いからな」

 一瞬、殺されるかと思ったぞ。ドラゴンクロウってミノタウロスとかに当てるやつじゃねぇ?お前使う相手間違えてないか。とにかくヤバイな。


「貫け、滴る雫を冷酷な槍と化し!」 

「アイシクルランス!!」


「お前そんなの卑怯だってー!」

 言ってたぞ、先生が魔術は人に使っちゃダメってさ。


「ありだ」

 審判のヴィンスさんが言う。


 先生もう知らない、うぇ~ん、先生に裏切られた。そんなもんだからうまく氷をかわしたら、エルドラの姿が見えなくなった。


 どこだ、どこだ。エルドラがいない。どこからくるんだ!?


「ポン」

 鞘付きナイフで頭を叩かれた。真正面から、しかも空。早すぎ~お前。勝負は五分位で終わってしまった。


「エルドラの勝ちー!」

 ヴィンスさんが勝敗を告げる。


「剣やナイフの動きに目が慣れすぎたかもな。お前たちは他が蔑ろになっている。あとエルドラはナイフの練習をもっとしなくちゃいけない。ライムは自他の技が瞬間的にどう動くか観察すること、そうすれば、もっと多くの事を把握できるぞ。以上それぞれの反省点を含め修業すること、いいか!?」


「はいっ」

「はい」

 色んな事情からスカルベが出かけている場所を書くことにした。

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