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二分のギルド 8

 またモンスターに街が襲われるのではと街の人は不安だった。その不安からか冒険者に八つ当たりするものが出てきた。ライムとモニカたちは修業をして三年の年月が経った。

 ◇二年後、


修業で一時、瀕死になり死にかけたことがあった。その時は剣が刺さり胸から大量の血液が外に溢れ出たのでヴィンスは急いでポーションを振りかけたのだった。傷口に注がれたポーションのおかげでライムは一命を取り留めたのだった。



「キィンキィン!キィンキン!キィンキィンキィン!」


「はぁぁ!シュパッ!カキン!」


「てえやっ!スッ、パサリ」


「カァン!サッ」


「せいやぁっ!シュキャ――ン!!」


 息もつかせぬ攻防、斬られたのはライムの髪の毛くらいか。


「伸びたな、髪の毛も」


「はい」


「カシャリ」

 剣を鞘にしまうヴィンス。


「やれやれ、既に上級ナイトの俺のレベルに達しているとは思わなかった。これからはエルドラと戦ってもらおう」


「でも俺は、一度もヴィンスさんに勝っていません!」


「エルドラはドラゴン族の力とエルフの速さがある。力だけなら俺でも勝てないことはなかったが、この期間の修業でどうなったかはわかるだろう」


「エルドラとヴィンスさんの戦いはいつも見ていましたけど、あれは俺との戦闘の疲れが出てるんじゃありませんか?」


「それもある、若いお前達二人を相手にするのは骨が折れる。子供エルドラの成長は、大人の俺と比べものにならない。そして何よりも俺はお前たちの戦いが見たい!!」


「エルドラはライムと戦うのはどうだ?」


「戦いたい!」


「そうかエルドラがそうくるなら、一度勝負だ!」

 ガキの癖に生意気な、お前だけ修業したわけじゃない。お前はまだ子供だ、大人に勝とうなんて百年早いことを教えてやるぜ。


「あーっ、うずうずするな。カタカタタ」

 足をバタバタするエルドラ。靴は何度かボロボロになったからベスコにレザーブーツも一緒に運んでもらった。だから新しい物を履いている。


「ああっ!」


「!!!」

 ハッタリをかました!?ちょっと怖いかも。エルフとドラゴンだっけ、そんなの掛け合わしてどんな風になってんの。そうだ!!手加減ってやつを教えないと、子供だから無茶して本気で斬りつけてきたりして。俺は武者震いなのか少し寒気を感じた。


「待った!」

 腕を伸ばし手の平を出した。


「なにー、ライム」


「お前は、その短刀か?」


「うん」


「子供だから手加減してやろう」


「ありがとう」


「・・・!?」

 あれ?“僕も手加減するって“こないのか。お前なら食ってかかるからそうなると思ったのに向こうは全力で・・・それはないだろう、これは修業だ、戦闘訓練だぞ。


「いくよ」


「こ、来いっ」






 アッキーは、

「うぐっ、はああぁ!」


「シュルン!キィン、カンカカカカカン!」


「ダメージを受けてのカウンターか」


「まだぁ、うあぁ」


「ふん、受けよう」

 アッキーは遠心力を利用し斧を振る。


「くっつ!!この俺が振られた!?だがよければたわいもない」


「ブンッ」


「サッ」


「おああ。ボテッ」

 倒れるアッキー。


「ガッ」

 スカルベは足でアッキーの腕を踏んづけた。


「はぁはぁはぁはぁ、まいった・・・」

 アッキーは敗北を告げた。攻撃が当たらず遠心力に対する求心力が働いた時、それを支える軸の役目をしなければいけないアッキーがバランスを崩してしまった。そしてスカルベにトドメを刺される結果となった。


「もっと力をつけ素振りの練習をしろ。お前は危なかしくて敵わん」




「はぁはぁ、風の魔術だけでも完成させないとね」


「動乱せよ、天変の風」

「テンペスト」


「あらっあらら」


「風か!?これは荒れるな」


 竜巻が発生、嵐が起こった。


「モニカ、いつもと顔つきが違うかなー」

 涼しい顔をして戦闘訓練していたシャティの顔が冷やかな顔に変化した。モニカはその態度の違いに気づく。


「なんかツンとしてる・・」


「よーやく、私を魔法使いとして認めてくれたようね」


「いいえ」


「またまたぁ」




「あのあのぉ!見て下さいフィアさん、私聖魔術を一つ覚えました」


「い、いつの間に?」


「私にもさっぱり。魔術名はシエルアトモスフィアです」


「それが、いつの間にか覚えた魔術なの?」


「はい、さっきメニューを見たら聖魔術の欄に表示されていました。すぐに使ってみたんですけど発動しません」


「発動しない?これよね、LVは35とかで覚える魔術かしら。私の感想としては名前が一緒だから親近感がある」


「・・・そ、そうですか」


「直訳すると空の雰囲気」

 カタリナが小声で呟く。


 カタリナの顔を見つめるフィア、


「な、なにか?」

 声が聞こえたかと思ったカタリナ。


「良い魔術ね」


「はい」

 意味が分からないカタリナ。





 ゲイルはヴィンスとギルドメールで連絡し、武器集めに奔走していた。


「これはどう?」


「魔法のローブか、魔法防御は高いが物理的な防御力が弱くなるな」


「魔法使いはそれが普通よ」


「新しい防具は、もうないぞ」


「それ、私が改良を手掛けましょうか?」

 ゲイルたちにプラマイアが話しかけてきた。


「それは有難い、頼む」


「高くなるけど」


「Goldとるのかよw」






 ◇三年後、


「これで、修業は終わりとする」

 ヴィンスが修業の終わりを告げると、面白い反応を見せるライムとエルドラ。


「もういいんですかー?」


「やだー、もう少ししようよ」


「構わん、怖いくらい強くなった。俺の剣がお前達に当たらないんだw」


「それは手加減してくれたんでしょ」


「手加減なし、手抜きなしの全力だ」

 そう言ってヴィンスさんはギルドメールをポチポチ押した。迎えを呼んいるのが分かった。


「僕、帰ったらスカルベおじさんと戦闘訓練しーよぉっ」


「みんな帰る準備をしておけ、明後日まで街に戻るぞ」


「早く戻れてよかった」

 俺はあと二年位我慢しないといけないと思っていた。


「若いうちに修業をして戦わないと体力がもたん」


 鉄は熱いうちに打てと同じだな、冷えて固まったら形が変わらなくなるもんな。それに使わず置いておくと錆びて使い物にならなくなるし。






「ディスクストライク」


「ガガ!ガガッガガガガ!・・・」


「うぬぬぬぬっ!」

 スカルベは攻撃をしようにも一糸乱れぬ攻撃の連続で防ぎきれない。また加えて回転から砂埃が巻き起こる、そこで退きスカルベは空に飛び立った。空中なら見渡しが良くなると考えたからだ。


 ディスクストライクが終わるとアッキーは粉塵のある場所から移動して空にいるスカルベを見た。


 スカルベは空から急降下して攻撃する。


「ディスクストライク」


「ガキィィィィィン!」


「ぐっぬぁあっ!」


「バサッ、ズズズズザザザザザーーーッ」

 アッキーの斧を受けてスカルベは吹っ飛ばされた。


「チッ!」

 少し斬れたスカルベ。


「うぐっ」

 アッキーは手首と腰を捻ったので手で抑えた。






 ヴィンスから連絡があった時、モニカたちも修業の終わりに近づいている所だった。


「揺らせ、うなりふるえる大地を!」

「アースクエイク!!」


 モニカは土魔術のクレイモール、サンドストーム、アポカリファスも見事習得する。


「あ~あぁ、あとメテオライトがうまくいけば全て習得できたのに・・・」


「それはダンジョンで練習ね」


「そうします。これで火、風、雷、土、幻、魔の魔術をほぼマスターしたわ。残すは四つ位か、それも難しいのだけ」


「水魔術が使えないのよ、十二階層を超えるまえに火の最高魔術だけでも完成させなさい」


「最高魔術か、どうしようー!」

 頭を抱えながらモニカは叫んだ。




「変われ、天空の空に!」

「シエルアトモスフィア!!」


「―――」


「何も起きない!?」


「起こってる!冷たく清らかで懐かしい風が吹いた。そして空気が澄んでいる」


「空気が澄む魔術?聖魔術なのに変」


「カタリナ、皆さん待っていますよ」


「はい、すぐ行きます」



 日が暮れ街に戻るモニカ一行、


 街を照らす光球は岩壁にあたり橙色になる、普通の夕日と変わらない。街を歩くモニカ一行は教会に向かって話していた。


「アッキーいつもボロボロね」


「うん、ボロボロだね」


「明日まで治るから大丈夫よ」


「ふ、うん」


「アッキーさん、頑張れ」



「アッキーに押されてた、スカルベ?」


「見てたんだろ」


「ええ」


「少しだけ」


「生意気なエルフだ。次言ったら食うぞ」


「冗談よ、それ冗談よね」


「フィア何をしている?」


「これ、いい香りよ。人間が使うマダムパルファムという香水」


「目が染みるぞ」


「あら、ごめんなさい」


 シャティとフィアは夕食前の空腹なスカルベに食べられないように匂いの強い香水をつけたのであった。



 教会に入ると、聖堂の所で上位シスターが話しかけてきた。


「よくいらっしゃいました、セイラのご友人の方、いつも当教会にご寄付をありがとうございます」 

 年を召したシスターは、にこやかに頭を下げた。


「いえこちらこそ、いつも清めの場を貸して頂きありがとうございます。私たちは体を洗ったらすぐに帰りますのでお構いなく」

とモニカが挨拶すると、


「そうそうカタリナさん、あなたに大切な用があったの。これを教えておかなくちゃね」

 上位シスターはカタリナに話しかけた。そして魔術を授ける。


「こうやるのよ」


「捧げよう、数多の祈り!」

「シスターロザリオ!!」

 青い球で綴られた円が体を囲み入っていった。体の周りが青い光で包まれ消えた。


「これは祈りの魔術、他の魔術の効果が増すから何かあったら使いなさい」


「はい、大事に使わせて頂きます」

 カタリナは会釈した。三年修業して肝っ玉がすわり、はっきりと返事した。


 教会を出ると、すぐそこに立つ神父の格好の男、


「あらヒビアゲルじゃない!?」


「うるさい!なぜ髭を触るのですか」


「だって面白いから」


「はいw」


 シャティの手を振り払い、

「このっ、それよりこれをあげます。使いなさい」

 餞別(せんべつ)としてヒビアゲルはカタリナにロッドを手渡した。


「本当に貰って良いんですか?」


「そうしないと将来、私も仲間も教会のお世話になりますから」


「っふふ」


「おかしくない!」


 ―カタリナはマイリーロッドを手に入れた―



 それから宿屋に洗濯した装備品を置き、パァティカで夕食をとる。


 スカルベさんは食べるだけ、エルフの二人も行儀がよく食べながら話をしない。モニカはカタリナに話しかける。


「カタリナばかりもらえるのね。魔術とロッドが舞い込んでくるなんてあまりにもずるいっ」


「既にモニカさんもエリスさんからスタースティックと魔術書貰ってるからずるくありません」


「いいえこれは違うわよ」


「それじゃアッキーさんはどうなるんですか」


「技だから秘伝書とかあったらよかったですね、アッキーさん」


「う、うん」

 とまどうアッキー。ライムが言う、何も当たってない自分は必要なのか急に分からなくなったからだ。


 パァティカの料理を食べ終わると、宿屋に戻った。




「酒場は空気が淀んでいるから、久しぶりに食事が美味しかったわ」

とシャティ。


「空気も食べているんです」

とカタリナ。


「人の不安があるのかも」

とフィア。


「そうよねぇ。やっぱり一緒に食べる物が美味しくないと味わえないわねぇ」

 話を合わせるモニカ、

「空気が悪いと、お腹にガスがたまっちゃう」


「・・・」


「そうなんだー」

シャティとフィア。



「美味しかったな料理」


「美味しかった」

 感想を言うとはオウム返しに返すアッキー。


「む?」

 スカルベは片目を瞑りアッキーを凝視する。


「明日も頑張ります」


「んん」




 翌日、


「では最後の試験といこうか」


「試験?」


「まだ何か」


「出発はどうなったの?」

 右左見るモニカ、混乱する。


「三日だけよ」

 シャティさんが付け足す。



「ダンジョンに行く前にそれぞれの街の問題を取り除いておきたい。そこでだ、オアシス湖とツリーシードの森に行く」

とスカルベが話し始めた。


 話を聞いて、モニカはライムにギルドメールを送信した。

 ―――――――――――――――――――――――

 MEM 三日ほしい、五日後着く、準備を モニカ

 ―――――――――――――――――――――――






「ヴィンスさん、モニカからメールが来ました。五日後、到着するそうです」


「そうなるとこちらも手配が必要になるな」

 とヴィンスはメールを送信。

 ―――――――――――――――――――――

 MEM 了解。武器防具アイテム食料、他頼む

 ―――――――――――――――――――――


「みんなヴィンスからギルドメールだ、モニカたちは三日後に出発する。その時に手に入れた武器等を渡すぞ」


「会えなかったらどうすんの」

とハーゼリア。


「モニカ達が立ち寄ったら教えてくれるように宿屋と入り口の女に頼んでおく」


「それなら大丈夫だ」

とデメグラム


「うん」

とリコルチェ。



「オアシス湖には、俺とアッキーが行き半漁人を倒す。それが出来ないようなら、ダンジョンからは撤退だ」


「うそっ・・ 」

 思わず言ってしまった。


「なぜ俺が嘘をつく?」


「すみません」

 謝るアッキー。


「半漁人はエウロたちに協力してもらうつもりだ、勧誘がお前がやれ」


「・O○」

 呆気にとられたアッキーは顔も作れず、目と口が大きく開いていた。



「それじゃあ、私たちはツリーシードに行くの?」


「正解モニカ」

 シャティが優しい声で言うが、


「ツリーシード・・」

 カタリナに思い当たる節はない。


「ラクーダに乗って、二人とも」

 急かすシャティ。 


 二手に分かれるアッキーとモニカ。


「アッキー、頑張ってねー!」


「頑張って下さい!」


「ありがとー」


 そして二分が、さらに二分して旅立った。






「そう言えばさヴィンスさん、エルドラ。みんながミノタウロスと戦って死にかけの時、光の粒が見えたんだ」


「うん」


「エルドラ達がきて、それが俺の希望の光に変わったんだけど、死が迫る時って光が見えるもんなのかな?」


「あるかもな」


「それグリタータズルだよ」

 メニューを見せるエルドラ。俺とヴィンスさんがそれを見た。


「それで回復したのか?」


「回復はしないよ、エルフの技でキラキラして敵の目が眩むだけ」


「へぇ~、俺は天国からお迎えが来たのかと思った」


「ライムの人生つまんない、それで終わり?」


「終わりは・」

 キラキラ待っていたわけじゃないんだけど終わらなかった。終わるの待ってたら終わりだよな。






 昼にアッキーとスカルベはオアシス湖についた。


「ここでブルーオーシャンと連携を組めなければ、ライムやエルドラとも合わせられないと俺は見ている」


「連携」



 ブルーオーシャンの家に行くアッキーとスカルベ。ブルーオーシャンは家の外にいて誰かを見張っていた。


「あ・あの・・」


「ねえ、エウロ」

 バルバラが言う。


「何だ」

 バルバラの方を見たエウロ。バルバラはアッキーのいる方を指さした。


「・・・・・・」

 黙ったままのアッキー。


「なーに、用なら早く言って」

 バルバラがアッキーに催促する。


「・・・」


「おい、アッキー」

 珍しくアッキーの名前を呼ぶスカルベ、


「スカルベさんが言った方がいいのでは」

 プリンシパルが言うと、


「・」

 スカルベも黙ってしまった。



 こんな怪しげな連中を逃す奴はいない。


「おい、あそこに、ほら」


「なんだあの巨体!しかもドラゴン族がいねぇか?めっずらしい」


「あれは夕食の肉だ」


「ドラゴン族か、はははははっ。それはお可哀想なこった」


「新メニューに出たりしてな」


「まずい!」


「ぎゃははははははははっ」



「また奴ら、来たのか」

 エウロが注意しようと思った時、からかいにきた男たちの前にはスカルベがいた。男たちは目が黄色い、外見がモンスターのスカルベを見る。


「スカルベだ、ここで手合せ願おうか」

 エクセアの噂で有名な戦闘を挑んだ。


「す・か・る・・」


「べ」


「に、にげ」


「ろ~!」


「うわぁ~!!」

「うわ~!」

 男たちは街の奥へ走っていった。その知名度と言えば札付きだ。




「お願いします」

 アッキーが勇気を出して言う。


「なんだ俺たちに依頼か?」


「私たちは悪いけど、ここから離れないから」

 バルバラが厳しい顔をして口を挟んだ。


「ん」


「ほら」

 アッキーの背中を触るスカルベ、ドラゴン族の肉球がアッキーに異世界思考力を与えた。

 聖魔術、シエルアトモスフィアはシエルハザードにしようか迷いました。後者だと荒れもありそうで前者に決定。

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