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二分のギルド 7

 二分のギルドのモニカとライムたちは段々と強くなる。それに合わせ周囲は変化した。しかし終わる事のない修業に不安を感じる皆。

「エウロ、聞いてる?」

 エウロと話していたプリンシパルが尋ねた。


「悪い、考え事だ」


「最近どうしたの?」


「そうよ、時間が止まっているんじゃない?」


 エウロはダンジョンで手に入れたファーストを売ってオアシス湖に戻ってから、ずっと気になっていた。


「悪い。ゲイル達に紅蓮マントを託して俺は何もしないでいいのか考えていた」


「エウロいつもと違うじゃない。そんな気になるんだったらサンサンドの皆に会いに行けばいいでしょ」


「早すぎだ、まだ三十日も経っていない」


 エウロ達は外で修業をしたり休んだり、目標がないまま日々を過ごしていた。



 エウロ達は彼らを知る人が通る度、噂話されたり誹謗中傷を受ける。


「おい、あれってブルーオーシャンだろ」


「ああ 」


「仲間がダンジョンで殺されたらしいぞ」


「知ってる。何でもミノタウロスっていう巨大な化物らしいが、よく人前に顔を出していられるよな」


「ホントホント仲間見殺しにしたって自分たちが助かるためだろ。俺たちあんな男に護衛してもらっていたとは最悪だぜ」

 男がもう一方の男に耳打ちしているがエウロ達に届く声で言っている。


「もう引退したんだな、きっと」




「嫌な奴ら、弱いくせに」

 話しが聞こえたのでプリンシパルがバルバラに言うと、


「それなら出ていけばいいのに」

 バルバラも言い返す。




 また、他の冒険者が通って行ったときの事、


「ねえブルーオーシャン、あそこに座ってない?」


「そうだな、座っている」


「今三人になったんだー」


「もうこの街も危ないかもねー」


「危なくなったらサンサンドの街に移ればいいだろ」


「そうだけどぉ、ここでギルドの家建てたのにぃー」


 ブルーオーシャンのギルドを避けていくのであった。




 それからもエウロは陰口を叩かれたり馬鹿にされたり嫌なことが続いたが当然の報いだと思い全て受けとめた。


「おい、あそこ三人ギルドだぞ」

「違うよ、あと二人いたけどモンスターに倒されて減ったんだ」

「あんだよ、それ。逆だぞw」

「倒されたんだよ、これが」


「頭にこない?」

「くる。ねえエウロ聞いてる?私たち、あんな奴らに馬鹿にされてるの」


「・・・・」

 話は聞いていた、というより聞こえていた。以前対戦したことのあるギルドから揶揄を受ける。報いは街の人から受けるものではないと考えた三人は、自ら報いを選ぶことにした。

 そこでエウロ達は亡くなった二人と街の人のために自主的にオアシス湖の植物を取りに行った商人や冒険者の護衛にあたる。


 オアシス湖には半漁人がいるので襲われる危険がある。




「うわあああっ、た、助けてくれー」


「出たぞ!」


「張り裂けろ、雷火花!」

「サンダースパーク!!」

 プリンシパルが腕を伸ばし天に掲げる。


「バシャッ!!」

「パシャパシャパシャパシャ!!」


「あ~逃げてしまった・・」


 半漁人は湖の中へ潜っていった。


「ほっておけ、それより商人は?」


「無事よ」


「やあ、すまない。おっ!お前達は」

 商人は顔を見るなりギョッとした顔をした。どちらが半漁人か分かったものではない。


「ありがとう、もういいよ」

 そういって街に帰っていくのだった。



 という事もいれば、


「あなたはブルーオーシャンのエウロ・さん?すまないね、この街にずっと滞在させてしまって」


「いいんだ、俺たちは昔からここが好きなんだ」


 表向きは引退した冒険者と噂され仲間見殺しの陰口も叩かれた彼らも、冒険者から商人・住民まで全ての護衛をすることで感謝されていった。それからずっとエウロ達は、その役目を務めた。




 同じころのモニカ一行、


 アッキーはスカルベと睨めっこ。どちらにしろスカルベの動きをとらえられないから見なくても結果は同じだけど、それでもアッキーは目で追った。


「バシッ!!ボン!とととうわっ、ボテッ」

 体に足が食い込む、バランスを崩しアッキーは左側に倒れる。手は抜いたスカルベだが痛みがありHPが削られた。



 モニカは火の魔術の修業、出来ないことをするより出来ることを上達させる方が断然早いのではと考えたからだ。

「こんなの楽勝よっ!」

 自信たっぷり杖を空に翳し魔術を唱える。

「飛べ、ゆらめく不死の炎よ!」

「ファイアバード!!」


 空に炎のゆらめきがいくつも飛んで鳥が翼を広げるように燃え移る。


「あまり火ばかり起こしてほしくはないけどぉ、いいわよ・・・ふぅ」

 シャティは調子に乗っているモニカにため息をついた。また自分まで焦げつきそうな炎に慌てていた。


「シャティさん火の魔術、苦手でした?」

 照れとボケが混ざった感で尋ねるモニカ、


「火は木や街だけでなく森全て燃やすから嫌い、それと使えない苦手な魔術よ」


「自粛*します」

 モニカはシャティさんに感心した。エルフだと息苦しくなるのか?




「神様っているんですかー?」

 カタリナはフィアに霊神の存在について問う。


「どうかなー」

とフィアが返す。


 カタリナが、なぜ質問したのかというと聖魔術を詠唱しているからだ。


「授けん、神の息吹と加護を!」

「ゴッドブレス!!」


 神の加護と名がついた、その魔術は一定時間体を治癒し持続させる効果を持つ。この魔術はモニカの魔術書の1ページに貼ってあったものであった。どこでエリスがこの魔術の情報を手に入れたかは不明だけど、それでも冒険に必須の魔術の一つ。


 少し光ったビショップスタッフに霊神の姿は現れず、すぐに光は消えた。当然成功したわけでなくMPも減らない。




 アルスは商会の者として、ギルド協会と酒場でダンジョンの危険性について語った。

「ダンジョンにはモンスター始め、罠や問題が多くある。食料を・・・なんちゃらと言って最後に、ダンジョンの上層階の危険性を今一度皆に伝えてくれ!!それと不必要にダンジョンには立ち入るな!」と。


 ギルド協会、

「わかりましたアルスさん。ここに立ち寄る住人全てに言っておきます」


 酒場マスター、

「情報は痛いほどきている。安心して下さい」




 教会では、

 セイラがこの世界の平和と秩序が確立され、モンスターがいなくなってダンジョンが攻略されることを祈っていた。

「神よお願いします、この街と皆さんをお守り下さい」






 ◇三か月が経った。


 目に見える結果が出たのはちょうど三か月が経った頃、ダンジョン十階層の灰地で修業中のライムとエルドラが素振りをしていた時だった。


「僕、手に何も持ってない感じがするんだ」


「俺も、素振りでヒュッとなった音がたまに聞こえなくなって風の抵抗を感じないんだ。あれっ?と思い手を見ると手には剣が握られている!?」


「それは修業の成果だライム、これまでのスキルと同じような斬りが普通のお前たちの振りでやれている。やはりお前たちは俺の見込み通りの冒険者だ!!」


「いいえ、ヴィンスの腕には到底及びませんよ」

 謙遜ではない。尊敬の念を抱いて俺は言った。


「これまでの修業の日数を考えると、俺たちでは勝てない」

 そんな弱気だなヴィンスさんは~、俺たちが異世界人で、ダンジョンが開かれるまでの進捗率が早かったから強くなるのも早かっただけ。


「俺は同じモンスターばかり相手にしていたから、悪い癖がついたのかもな」


「ヴィンスさんともあろう方が気にしないで下さい」

 それを考えてダンジョンを封鎖したとすればダンジョンマスターは相当賢い。俺達より、ヴィンスさんの方が素振りや外のモンスターとの戦いには飽きや嫌気がさしているのかもしれない。


「そうだな、かははは。はあぁっ!」

 浮かない顔をして素振りを続けるヴィンスさん。弱音を吐いていた俺達に逆に励まされたので狐につままれたようだった、顔が引きつっているように見えた。また俺たちの成長にも驚いている。

ヴィンスさん、悪い癖があるか調べながら剣を振っているのか。



 俺達は素振りを続けた、そこに未来を開く鍵があると思うから。




 街の外のモニカ達、


「爆ぜろ、消えた竜巻を集めて重ねて!」

「エアブラスト!!」


「ブゥウン、ドゥッ!ボファアアッ!!!!」


「うわああーっ!!」

 アッキーの髪の毛が逆立ち、ぐちゃぐちゃに。


「強いな、この風を翼に受けて飛ぶのは至難か」

 自然体の状態で風を受けるスカルベ、少し体が揺れている。



「やった、やりましたシャティさーん!」


「すぐに上手くいきましたねぇ~」


 モニカはテンペストを残し風魔術を全て使えるようになった。




 聖魔術が上手くいかないカタリナは治癒魔術の練習をした。精霊や霊神が見えると回復範囲の正確性が向上し、より多くの回復が可能になる。


「包み咲かせよ、癒しの大輪!」

「マクスレイズヒーリング!!」


「どう、見えた?」


「全然・・。回復すらできていない」


「最大回復魔術だから難しいわ。気を落とさないで」



 アッキーは全方向に集中し目と体を向ける、かつガードの特訓中。どれかが欠ければ破られてしまう。


「バサッツ!!」

「ドッドドカカァ!・・・」

 旋回飛翔したスカルベの蹴りをアッキーはガードする、さらにスカルベは少し攻撃をするが、攻撃にも反応できるまでになった。


「おい、かせ」

 アッキーから盾をとるスカルベ。


「さあ、攻撃してこい。俺が受けてやる」


「えっ!いいの?」


「だから言ってるんだ!」


「・・・・ガキィーン!」


「キンキン!キィーン!ブンッ!」


「ブンッ、ブンッ、ブワァ!おわぁっ!」


「外してばかりだぞ」

 最初は攻撃を意図して盾で受けたスカルベ。その後、素早くかわすものだからアッキーは調子が狂い、当てることができなくなった。






 ◇半年後、


 世界が変わると常識なんて通らない、そんなことを誰かが言った。

 人生で非常識なことをして上手くいっただろうか。常識に基づいて修業したからこそ、うまくいったのだ。


「スッ」


「―――・」


「ほとんど音が出ない」


「僕も音が出ない」

 エルドラもナイフである短剣を持って練習した。


「なかなかやるな、これが俺たちなら五百日はかかったな」


「へぇ~、俺達早いんですね」

そんなにかかったのか、それなら俺たちは相当早い。




 モニカは氷の魔術のアイシクルランスからフリージア、スタンコールドを習得した。


「もう一つあるみたいだけどこれがイマイチわからないんですけどシャティさん、わかります?」

 スキル欄に空欄があった。


「はいはい、それは忘れましょう」

 そう言ってシャティは魔術書のページをめくった。



「授けん、神の息吹と加護を!」

「ゴッドブレス!!」

 息吹のような風がカタリナの頬を撫でた。温かく疲れがとれるような心地よさがするので目を閉じていた。

加えてマクスレイズヒーリングも正確ではないが、唱えられるまでになった。またカタリナはギルドの弱点とならないようにフィアと攻撃をかわす・受ける修業を積んだ。



「生ぬるい、それでも戦士か?攻撃が決まってもそれでは倒せん」

 スカルベはアッキーを説教中、


「そんな事言ったって・・」

 できないので言葉に詰まるアッキー。






 ◇一年後、

 この世界で三百六十五日たったとは思わないし思えない。しかし毎日のギルドメールがそう言っている。俺は毎日引いた線を数えて三百六十五本あることを確認した。

 つまり元の世界に換算するなら七十二日経ったわけだが、修業しているうちに幅が広がりヴィンスさんと一緒に十一階層に上がり入り口付近で修業をすることになった。

 違う環境に行って初めて知る。無機質なフロアで修業したことで、暗い中でも砂が動くだけで“何かいる“と分かるようになった。どうやら俺達にそれを実感してほしかったみたい。


「カチ」

 砂の粒が一つ落ちた。


「あれだな」


「僕がやる」


「任せよう」


「やぁっ、スパァ、スピッ!バタバタバタガサガササ・・・」


 一年目の節目に俺は家族の事を考えていた。フリーターで心配をかけて、さらに失踪、警察にも迷惑をかけているかもしれない。親不孝もいいとこだ。俺は修業の合間、元の世界を思い返す度に家族の事を考えてしまった。


「よし十階層に戻って修業再開だ。今日からライムは俺と戦闘だからな。もちろん真剣でいいし回復できる範囲なら傷つけても構わない、ポーションもたくさんある」


「ヴィンスさん、負けませんよ」


「望むところだ」


「エルドラは審判をやってくれ」


「わかったぁ」


「それじゃいいぞ」


「はいっ」



「いくよ、始め!!」


「先手必勝」

 俺は速攻走る。


「シュッ、シュタッ!」

 ヴィンスさんが剣で縦、横に一刀を繰り出す。


「ザ、ザザザーザァァァ!」

 俺は後方回避、そううまくいかないか。俺は攻め続け強くなった。ファーストステップで速攻し剣を振り下ろす。


「キィーィン!」

 それを右下から左上に振り上げたヴィンスの剣が弾く、剣同士がぶつかり響く。さらに剣先を戻し斜め一刀してきた!


「・な!」


「キシャン!シャシャシャ」

 斜め一刀でぶつかり剣を押し合う、俺がヴィンスさんを見ると向こうも見て対峙した。


「ぐぎぎぃ、いいい」


「どうしたお前の力はこんなものか」

「カキィイイイン!」

 剣をまた弾く、今度はヴィンスさんから速攻を仕掛けてきた。


 剣を突き立てている、来る!!


「ダブルキル!!」


「キィン!キィイン!!」


 俺は技を使った、真っ直ぐ突き刺してきたのを普通に返すと力負けするからである。


 ヴィンスさんの剣は上に下に揺さぶられたが、こちらの剣を絡め取りそれを返す。剣先を下から上に入れ回す。


「こっのおっ!」

 俺は力を入れ剣をコントロールし突き刺すが、刃がぶつかり合う位置が違っていた。ヴィンスさんは手から近く、俺は遠かった。それがヴィンスさんの作戦、俺は力をうまく活かせず力負けした。そして手首の力を削ぎ落とされていく。


「シィリィリィ・・・カキィン」


「スパッ!!」


「ッ―――」

 剣を返され手首が斬られた。一時的に力が消費して力が入らず、剣は相手のいいように弾かれた。そんな所から攻撃は出来ず、肘を伝い手首で滴り落ちる血が俺の足元に付く。



「ヴィンスの勝ちぃー!」

 エルドラが二人の間に入り言う。


「はは、負けた」

 俺は勝ちたくて強くなったのを見せたくて技を使ったが、ヘマをして当たっていたら人を(あや)めていたかもしれない。

 そしてもう一つ俺はヘマをした、技を返された時に後退すればよかった。そしたら力を回復させる時間が稼げたものを。


「落ち込むな」


「そうではないんです、後先考えず行動したので反省していたんです」


「そうだ、お前は大技を使ったから負けたのだ」


「えっ?でも危なかったでしょー」


「何を言うんだw俺が相手してるんだ、斬られることはない。スキルは完璧に決まる時以外使うなよ。外した時に生まれる隙がでかいからな」


「はい!気をつけます」

 何個も反省点が見つかった。




 -シャティとモニカ-


 モニカは雷のライトニング、サンダーボルト、サンダースパーク、サンダーアークを習得した。


「雷は属性として火に近いのかしら?」


「そのとおり。モニカは中々良い魔法使いになったわよ」

 右から左と雷をうまくかわしシャティは見ていた。




 -カタリナとフィア-


「次はマクスレイズヒーリング!!」


「霊神がようやく見えるようになりました!!」

 黄色い光が何かの形を縁取っていた。


「おめでとう」

と言い笑みで頷くフィア。



「エクソシストクロス!!」

 偶然でなく魔術は成功!!カタリナはヒーラーとして次々と腕を上げていった。同時に回避力をあげるため、攻撃をかわす修業も行った。

 修業の時間はエウロやゲイル達の方が勝る。しかし必要最低限の時間で最高の質を得る指導者がついているライムたちはあっという間に強くなった。

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