二分のギルド 4
ライムたちが修業の中、街に戻ったモニカたちはギルド各々で動き出した。
街に戻りモニカ達と別れたゲイルたち、
ゲイル一行はサンサンドの街の中になるマッドの家でリコルチェの療養と仲間の疲労回復のための休息を取っていた。
疲労といっても体力は一日で回復したので別の疲労、他の記憶からくる精神的なダメージの事だ。例を挙げるなら戦意の喪失、桁違いの強さのモンスターと戦闘し大きく戦意を削られたのだ、また未来を思い高揚するまでしばらく時間が必要である。
ミノタウロスと戦った冒険者は残忍な姿のミノタウロスというモンスターの存在と戦闘を忘れる時間、つまり恐怖を失う時間が必要だった。しかし、これを教訓とするなら存在や恐怖を忘れていけない。覚えておいてそれと戦い勝たなければならない。
もし冒険者がその恐怖に支配されたなら、その残影がこれからの冒険に付き纏うだろう、そして体が震え竦み鈍り乱れ死へと誘うことになろう。
「 チャララ」
「みんなー、ヴィンスからギルドメールが来たぞ!」
ゲイルがマッドの皆に声をかける。
「どれどれー」
リコルチェがメニューを覗き込むとゲイルの目に禿げた後頭部が入った。無惨に毟られ綺麗な髪がなくなった頭皮が剥き出しになっていた、泣き明かした顔と擦れた声と白い頭皮と揺らいだ心にゲイルは胸が締め付けられる。言葉を出そうにも見つからず口元が動くだけ、どうかけていいのか迷うだけ。
「・・・」
「ゲィル、これ修業のため送ってきたの?」
「んん、ライムとエルドラに運命がかかかっているから送ってきたんだ。俺はベスコの家まで、ちょっと行ってくる」
「気をつけてよ」
自己警戒レベルが上がったままのハーゼリアが言うと、
「ああ、ダンジョンじゃないんだ心配ない」
「でもねぇ~、街にもファーストの情報を横取りする盗賊がいるから私もついて行くっ」
「ホパーのギルドの家まで、すぐそこだぞ」
「いいからいくのよ、戸締りお願いね」
そうしてゲイルとハーゼリアはドアの鍵を開け、外に出て行った。
デメグラムは鍵を閉めた後、部屋の角の椅子に腰を掛けながらリコルチェに話しかけた。
「あいつらできているのか?」
「ええっふ、いつの間にそんな関係になっているの。それじゃー私たちも対になってるみたいじゃない」
「お、俺はいい。そんなこと考えない」
真に受けてしまうデメグラム、色恋は奥手だった。
「はぁ~、こんな髪の毛が薄くなったら誰にも相手にしてもらえない・・か」
「そんな事はない、お前は良いと思う。ただ俺は女自体があまり好かん、ヴィンスに勝つまでは誰かと付き合おうと考えていないし、ゲイルにしても女は苦手だからな」
「ヴィンスは、そう言わないわ」
「同じだって、なんならギルドメールで聞いてみたらどうだ?」
「ギルドメールねえ・・・」
つまらないことばかりでリコルチェは腹いせに我がままを言った。仲間の自分を見ない視線を感じて嫌うリコルチェは何も言わずにはいられない。
「チャララ」
音がなったが、ヴィンスは眠りについていた。
「どうしたんだハーゼリア、俺に気を使うことはない。リコルチェとソファーで寛いでいたら」
「リコルチェにどう接しようか悩んで、頭がいたいのよっ」
「治るまでの辛抱だ、気長にいればいいんだぞ」
「それが治らなそうだから、気が重いんでしょー」
「そんなっ一時のことだろ」
「その一時が人生を左右するって言うじゃない!」
「一時か・・・」
「コッコッ!」
ホパーのギルドの家の前でドアをノックするゲイル。
「カチャ」
「これはゲイルさんよくお戻りになられました。ところで、どうしましたこんな夜分に」
「悪いな、一つ頼みたいことがあって来たんだ」
「なんでしょう?」
「ダンジョンの十階層にいるヴィンスたちに食料を運んでやってほしいんだ。出来れば明日にでも出発してほしい」
「ヴィンスさんはダンジョンにいるんですね」
「いる」
「それはいいんですが、自分たちで持っていくのはダメなんですか?」
「俺は街の護衛と仲間の傷の手当てがある、その他にも準備があってな。もちろんお礼を払う、ファーストの物をヴィンスから受け取ってくれ。もし手に入らなければ俺たちがGoldで払う。あの迷いの森を抜けるのも一苦労でな」
「ぜひ!お引き受けします、こんな話願ってもない」
「そうか引き受けてくれるか、それは助かる」
「いいえ、こちらとしてもその方が安全に稼げます」
「ありがとうベスコ」
「いいえ、いいんですハーゼリアさん」
三日目の朝のライムたち、
「チャララ」
ギルドメールの通知音を目覚まし代わりにできそうにない。だから生活の習慣として持つ体内時計でヴィンスはいつものように目を覚ました。
「ギルドメールが鳴ったか」
!?
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MEM リコルチェだけど私のこと好き?
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MEM 朝だ。ベスコに食料頼んでおいた
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二通のギルドメールが入っていた。
「二つ目がゲイルだとすると、一つ目はリコルチェなのか?」
「ゲイルにお礼を入れてっと、リコルチェは寝ぼけていたんだな」
と自問自答し、メールの返事をゲイルだけに返した。
「ライム朝だぞ!ほらエルドラも起きなさい」
決め台詞とポーズ、装備(衣装)とカッコいいヴィンスが仮の父親のようになる。
「う~ん、もうちょっと寝かせてよ。僕はいいんだ」
「起きないと強い冒険者に慣れないぞ、早く起きなさい」
そして、子供の扱いに手こずっていた。
「うう~ん、うごうぐぐぅ~、ううぅぅぅん」
「ライムはテリーヌのリーダーだろ、起きろ」
「お~し、起きないなら」
二人とも起きない、そこでヴィンスは力づくで二人を立たせた。温かい空気が外へ逃げると寝心地が急に悪くなったので二人は目が開く。立たされた状態だと転ぶので目覚めないわけにはいかない。
「もう少し優しく起こしてよー」
「もう朝?、早すぎだって」
この寝坊のふぬけ者は、生意気な目つきと口調でヴィンスに愚痴った。
「元気よしだ!今日から修業のペースを上げても大丈夫そうだな」
「ごめんなさぁぃ」
「勘弁して下さぁぃ」
「謝らなくていい、ペースはそのままだ。それでライム、ゲイルからメールがあってベスコに食料を頼んでくれたぞ」
「それは安心しました」
それから俺たちは3人並んで修業に打ち込んだ。
「はぁっ!はっ!はぁあ!はっ!」
一刀ごとに気迫とキレが冴えるヴィンスンさん、
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ・、はぁく」
俺は左隣のヴィンスさんに感化されて乱れた。
「やあっ!やっ!やぁ!やぁっ!やー!」
俺の右隣で鞘を振るうエルドラは、ビッと真っ直ぐに鞘を振り下ろして練習を続けた。
教会に遺骨を置いたエウロたちは、バルバラが祈りを捧げて翌日に持ち越すことにした。教会の長椅子で泊まったのは遺骨が二人が心配だったからだ。
早朝起床からツリーシードに捧げ花を取りに行き昼前まで戻る。捧げ花は白い花で遺体を燃やす時に一緒に添える花。
「ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!ガラン!」
昼の時を打つ教会の鐘が鳴った。捧げ花を遺体に手向け、プリンシパルたちは両手を合わせた。
「皆さん、準備はよろしいですか?」
「はい、シスター」
シスターの女が天使の銅像の前に立ち、なくなったアシュリーとセイロンに祈りを捧げた。
「神よ。この勇敢な冒険者は仲間を助け、命尽きてしまいました。この二人が安らかに天国へ行けますよう見守り下さい」
「すまないアシュリー、すまないエウロ、俺は力不足だ。これからは、お前たちの分だと思って多くの人々に尽力を注ぎたいと思う」
エウロが自分の失敗を戒め誓う。
「アシュリーの分まで魔法使いを引き受けるわ、だから安心して眠って下さい」
プリンシパルが言う。
「次に生まれてくる時も、またアシュリーとセイロンに出会いたい」
ハンカチで涙を受け止め言うバルバラ。
シスターがいなくなってからも三人は教会でしばらく祈りを捧げた。
次はアシュリーがお世話になった魔術加工場に行く、遺体は燃やした後だが伝えるのは早い方がよいからだ。アシュリーは街で会うと話かけられたり挨拶をかわしていた。
「呼ぶわよエウロ」
「ドンドン」
「プラマイアさんいます?」
「何?うんっとあなたはプリンシパルさん、魔法使いですね。ここで働きたいと・」
「すまんプラマイア」
「あーら、あなたのことも覚えています。たしかアシュリーを引き抜いて行ったエウロとか言う冒険者だったかしらぁ?
それで戻りたいというご相談ですか?こき使ってるのでしょう。ああ見えてもアシュリーはじっくりとやる方が好きなんです、そんな急に忙しくなる冒険者なんて」
「すまない!昨日戻ってきた時、閉まっていて伝えられなかった」
「夜は物騒ですから、それで何?」
「隠さず話す。アシュリーが死んだ」
「―――--・」
絶句するプラマイア。
「俺達のギルドに入らなければ、こんな事にならなかったのにぃー」
土下座するエウロ。
「はぁ?ここで、わいわい話していたアシュリーをあなたが引き抜いたんじゃない。それで死んだ?ふざけんな!!あなたが見殺しにしたんでしょ!!」
プラマイアはすごい剣幕と形相でエウロに毒突いた。
「すまない」
「バチン!!」
プラマイアはエウロの頬を平手で叩いた。
身をよるエウロ、何も言えず。
「ちょっと待って」
バルバラが止めに入る、
「俺は!俺はどうすればいいんだ!?見殺しにしてしまった俺はどう償えばいいのか教えてくれ」
プラマイアにしがみ付くエウロ。
「アシュリーの死を見つめなさい。自分はどうすべきで、どう生きればいいか」
「バタン!」
プラマイアは中に入って行った。
「そんな!・・・」
答えが見いだせず、苦しむエウロ。
「条件は皆同じだった。二人が死んで私たちは生き残れた、それで戻れたことも真実、私たちはそれを受け止め生きていくわ」
プラマイアとエウロのために、バルバラがドアの前で言う。
「私も一生この街の人々のために生きていく」
プリンシパルも訴えるように言う。
ドア越しにいたプラマイアはバルバラたちの声を聞き、閉めたドアにもたれながら泣いていた。
――楽しかった日々を思い出す――
「ねえ、プラマイアさん。これってファーストの鉱石ー?」
「そうよ、でもたくさんあるからそんなに気を使わないで」
「そうだけどぉ、ファーストって聞くと何かこう大事な物なんだという感じがする」
「いいから加工してみなさい」
「やってみます、ヒートバーニング!!」
「ああっ!!」
「どうしたの? 」
「燃えて消えちゃった!ごめんなさい、ごめんなさい」
「ふむふむ、鉱石を炎に近づけすぎたのね。そんなこともあろうかと、ほらっじゃじゃーん!」
「あーっ素敵、プラマイアさん」
アシュリーはプラマイアに抱き付いた。
失敗してもあなたは諦めず挑戦した。
「ありゃりゃ、焦がしちゃった」
「大変~、部屋中煙が充満してるから窓を開けて!」
「はい、ごめんなさい」
――出来た物を武器屋で取り扱ってもらえるように行った時――
「何度言ったらわかるんだ?こんなの武器として売れねえって言ってんだろ!」
「決まっていないわ!武器は使い様って言うから」
「阿呆、面倒だろ」
「その武器を見せてもらおうか」
「お目が高い、旦那」
「この武器は、何ていう武器なんだ」
「これはですね・・」
「アシュリー、あなたほどこの職業に合う人はいなかったわ」
――――
「次はチェイサロのギルドか」
「ドンドン」
「すみません」
「なにー」
少しして、頭の悪そうなカールヘアの女が出てきた。
「セイロンのことで伝えたいことがあるんですがリーダーの方いますか?」
「私よ!失礼なババアねぇ」
カールヘアの女が怒って言う。
「すみません、初めて会うので」
ハーゼリアはババアとキレられても言い返せなかった。
「ミラよ、それでセイロンがどうかしたのぉ?」
鉛あるしゃべり方をするミラ。
「セイロンが・・んだ」
「聞こえないわ!だからなにい?」
「セイロンがダンジョンで死んだ、遺骨は教会にある」
「な!なに言っているの!!セイロンよ!!あんな必死に修業してたセイロンがなぜ死ぬの!?」
「俺のせいだ」
「あんた・・あんたのせいでセイロンが死んだの!!」
「バン!!」
「ちょ・・っと待てよ!リーダーてのは死んででも仲間を守るからリーダーだろが!」
家の中から男がとび出してきた。
「待って!その責任は私にもあるの」
ハーゼリアがとめに入る。
「お前もかー!言ってみろよ」
「役立たずだから」
こたえるハーゼリア。
「私たちが気づいた時には、既に死んでいて」
プリンシパルも言う。
「はぁ!!?死んでいたって!!お前達がブルーオーシャンにいるからそんな事になったんだろぉ!セイロンはなぁ~っぁ下の下から、血の滲む努力をしたんだぞぉー!!」
「そうだ!俺たちは弱かった。そしてセイロンが入り強くなって、ここまで飢え死にせず生き残れた。あいつはうまく周囲と俺たちを取り持ってくれた」
「それなのに見殺しにしたんだぞ、お前達最低だぁ!」
「あんたたちなんか死んじゃえばいいのよぉ!!」
「俺たちが、ここで暮らせるのはセイロンがお金を出してくれたからだ」
中背のひょろっとした痩せた男が出てきた。
「セイロンがいなくなるなんてえぇ~っぅぅうううぅぅ・・あぁぁあぁ・・」
肩を落として泣き崩れるミラ、ドアの間でしゃがみ込み項垂れている。もう一人中にいた、体が弱いのか椅子に座り白い肌をした女。女にも話を聞こえていて頭を下を落とし震えていた。
「これはセイロンのこだわっていたマントよ、恰好良くして皆に見劣りしないよう気遣ってたの」
緑一色の戦ぐようなマント。
「あ、あなた・・・その縛り方」
「これは・俺が冒険者になった時から縛っているやり方だ。止めるだけじゃーとれそうで癖になった」
「セイロン、あなたはリーダーを目指して」
「・・・?」
「もう帰っていいわ」
「おい、いいのかミラ。金をふんだくって憂さ晴らししてもいいんだぞ」
「いいの、あんたらを庇いセイロンが命を懸けたんだ、死んだら絶対ゆるさなぃ、覚えておいて」
「忘れない」
「私も心に刻んでおくわ」
「はい」
ギルド、チェイサロの家から出たエウロ一行。
「どうするエウロ」
バルバラが歩きながら尋ねると、
「もう少し待ってあげて下さい」
プリンシパルが言う。
「・・・・考えがある、エクセアとテリーヌのギルドに武器か役立つアイテムを送ることだ。ファーストの情報を売るか、この拾ったガラス球の屑を使うか」
「私はその仕切り部屋から崩れた石を拾ったけど」
とバルバラ、
「私は何もない」
プリンシパルは、ローブの内側ポケットを漁ってみたが糸屑すら入ってなかった。
「構わん、他は穴の下に落ちた」
「私はこれ(石)で他の冒険者に未来を託すの」
ダンジョンの方(霞んだ空)を見てバルバラが言う。ダンジョンは霞まないにしろ見えなかった。
「さあ行くか、俺たちの未来に向かって」
「行こう」
「ええ」
「コンコン」
アッキーが起きると隣のスカルベは既に起きていた。部屋のベッドは鼾の事も考えて端と端にあった。スカルベはボーっと眺めていた。
「お、おはよう」
昨夜のこともある、緊張したがアッキーは勇気をもって挨拶した。
「朝は言えるガァ、失礼した」
スカルベが言葉を返すが上手くしゃべれない。
「うん」
「お前は何歳だ?」
「三十歳 」
一瞬迷ったアッキー、探りを入れたのか?
「なんだ、かなり若く見えたぞ」
「うん 」
「お前は話すことが苦手なようだが気兼ねなく何でも話せ、そうしないと俺が教えたことが理解できたか伝わらない。俺はそれで怪我するのも負けるのもご免だ」
「はぃ」
「そうだ、意思表示は大事だ 。小さくてもいいから俺には言え」
「うん」
!
「はい」
ギロッとした目で怖い顔をしたのでアッキーは言い直した。
「頃合いだな、支度だ」
アッキーとスカルベは着替え部屋を出ると、良いタイミングでモニカたちも部屋から出てきた。
「おっはよう、みんなぁ」
シャティが爽やかに朝の挨拶をする。
「おはよう」
「これからどうする~?」
「教会でアシュリーとセイロンに一度お祈りを捧げてから、任せるわスカルベぇ~」
「なんだそのべ~ってのは気に障るな」
シャティが言いスカルベに向かって舌を出す。
「あはははぁ、嫌味でやっているのかも」
モニカが説明する。
「モニカさん、むっとしてますよスカルベさん」
フィアがモニカに言うと、
「ありゃ・・」
やってしまったなと思ったモニカ。
「怒らないスカルベっ」
フィアが言うと、
「その、べっも好かんな」
「フフフ」
「それでは行こうか」
当初修業は『それから修業を〇日して』と簡略していた。しかし皆の人生が曖昧になるので繁雑に書くことにした。




