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二分のギルド 3

 ダンジョンから無事戻ったモニカたち。順調にいく女たちと対照的にアッキーはコミュ症でスカルベとの関係が縺れる。

 二日目のライムとエルドラ、ヴィンス。


 起床して朝食を済ましヴィンスさんの指導の下、俺とエルドラが横に並ぶ。


「さあ始めろ!」

 ヴィンスさんのかけ声と共に剣を振る三人、エルドラはナイフしかないので剣の鞘を振る。素振りの時こそ剣を持って振らないと腕力と体力が付かない、実力を測る対戦の時は怪我するので鞘を使っている。


「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」


 一振り一振り、力を込めて素振りする。真剣なので気が抜けない。それから二時間ぶっ続けで剣を振るった。


「ふうふう、はぁはぁ~っ」


 素振りで余計に剣が重く感じ動きが止まった。

 俺はこの世界でナイトの職種と能力を与えられているのに。


「うぎぎいぃ、上がれ上がれよ、俺は強くならなければならない」

 俺はもう、誰も見殺しにしたくない。


「はぁはぁ、お兄ちゃんどうしたの?」

 隣のエルドラが剣の鞘を上げた時に尋ねた。


「腕が硬くなって剣が振れない」

 たかだか二時間で動かなくなるとは昨日頑張りすぎたか。学生時代は後半が文化部(TCG)だったから体力がないのか?俺のアルバイト人生では、この世界のナイトには不適合扱いされるのか?いいから上がれー、うぉおおおお!


「ぱっ・・ガッ!チッ!」


「おいライム、さっきから動いていないと思ったら剣を落としたぞ」


「なんですか?」


「剣だ剣が手にないだろ」


「剣!あれ?」


 俺は素手で振りをしていた。どうにか腕だけなら上がったが、まるで金縛りのように自由がきかなかった。手元から抜け落ちた剣が足元にある。


「ちょっと貸せ」

 ヴィンスさんが俺の手の甲を三回タッチ、メニューを開いた。


「HPは回復しているな、他も異常なし。慣れない筋肉の強張りか一時的な体力の消費で動かないだけだろう」

 どうやら、前日の無理が祟って筋肉痛と生命力に近い体力が回復しなかったらしい。


「はっはっはっ、お前たちは若いのにだらしがないな」


「僕は動けるよ、問題はライムだよ」


「悪いなエルドラ。ヴィンスさん、ナイトでもこういうことはあるんですか?」


「ある、俺も何度もあった。アンクと一緒に下級のギルドに入っていた頃、一緒に素振りを何度もやったものだ。雨の中ずっと修業していたら、どうなるか試していたんだ。そしたら風邪をひいてしまいオマケに疲れで抵抗力が落ちて瀕死になったことがあってなぁ。  それからは考えなしにやってみようということもなく疲れたら休むようにしたんだ。ただ怠けるのとは別で休んだら、剣を振るのを同じ時間する」



 ヴィンスさんはこちらを見ている。


「なんですか?」


「一旦ゆっくり休め。腕に力が入るようになったら素振りを始めろ」


「はい」

 あんまり座ってもいられなかったので時間にして三十分だろうか座って休んだのち素振りを始めた。


「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!あぁっ!はっ・・はぁ・・・」

 休んだのに、すぐ息が切れ疲れた。


 ヴィンスさんとエルドラは何も言わず一緒に剣を振っていた。自分のペースでいいのだろう、こちらを見ず待っておらず余計な干渉はしなかった。


「はぁ・・っ!はぁ・・はぁ・・っ!はぁ・・」

 マイペースでゆっくり素振りした、剣を振ることができない俺の体は冷えていき、冷たい汗が頬から首へと流れた。その汗を拭った時に、それに気づいた。

 まだ俺は全然修業をしていない、三時間位だろうが汗の量は少なかった。ただ腕が上がらないことだけで、体の疲れと誤解していた。他は動く、肩を足を使い素振りをする。


 ヴィンスさんは剣を振って、こちらを見た。何も言われない、変な癖があるなどの注意は受けなかった。


「よぉし、これならもう少しやれる」


 そうしてさらに二時間程した時、ヴィンスさんは剣を止めた。そして三本の瓶を石のテーブルに乗せ、石の椅子の上に座ってキャメルタオルで汗を拭っている。


「おわったら休憩していいぞ」


 終わったらって何かやっていたのか?


「あと二十五回、待って」

 エルドラが言うと、鞘振りを済ましヴィンスの方へ行って休んだ。


「何が終わったんですか?」


「ライムには話していないが素振りの目標回数だ。千回を目標に決めたんだ」


「えっ、千回!」


「僕は出来たよ、嘘じゃない」


 まあ、鞘なら子供のお前でもできるだろう、しかもドラゴンでエルフだ。


 五時間で千回、一時間二百回だろ、つまり一回に十八秒かけれるんだからできないことはない。鞘ならできるだろう、俺は剣を持っている。5kgはあるんじゃないかというオルカソードを装備して考えると不可能だと思った。目標を立てると気が重くなって修業さえできなくなりそう。



「ぶ・・」

 考えなければよかった、剣が重くなったので俺は一緒に休憩をとることにした。

敷かう

 石の机の上にある瓶を手に取る。これはオアシスの水である、しかも蒸留したもので少し味付けしてあるものだ。その味付けは、甘みや塩味を付けた南国風な味わい。


「午後から、また素振りだからゆっくり休んでおけ」


「うん!」


「はぃぃ。ぐぅう~」

 腹の虫が鳴った。


「ライム、これだけ動いているんだ。もし食事が足りないなら補食しても構わないぞ。食料も、その分準備させる」


「いいんですか?」


「お前はもっと筋肉をつけた方がナイトの体に近づく、その体で蹴られたら内部の急所までダメージを受けそうだ」


「そうですね、ありがとうございます」

 ヴィンスさんは、ミノタウロスから内部にまで届く攻撃を受けたようだ。俺は補食としてフライロットという芋を揚げたものを食べた。



「もぐんぐエルドラ、剣の鞘はGold二十枚位か?よく続くなぁ」

 Gold一枚約25g。


 ヴィンスさんは周辺に変化がないか見回りに行ったので俺はエルドラに話しかけた。


「エルドラは子供だよな」


「そうだよ」


「どうして、そんなに体力があるんだ?」


「軽いのはエルフで、体力はドラゴンなのかな」


「ちょっとステータス、見せてもらっていいか?」


「いいよ」

 メニューを開くエルドラ。


Nameエルドラ Job Doragonelf EXP 564698 Gold 0

States

Lavel     28

Hit Point   198

Magic power  75

Attack    308

Guard     178

Magic     156

Magic Guard  238

Agility    204

Luck     180


 Lavel30にも満たない冒険者の攻撃力が300超、魔法防御と素早さが200超なんて、まさに超人だぞ。


「これが子供のステータスなのか!」


「そんな事関係ある?」


「やはりバグが起こったんだ。ドラゴン族だから攻撃力と魔法防御が高く、エルフだから魔力があり素早さも高い、それが混ざっている」

「いや違うか」

 くすっ、でも子供だけにHPとMPは低くなってるしバグじゃないのかも。


「ライムお兄ちゃんも見せて」


「えっ、俺か?いいけど」


Nameライム Job knigt EXP 344657 Gold 0

States

Lavel     24

Hit Point   208

Magic power  -

Attack    145

Guard     145

Magic     -

Magic Guard  122

Agility    124

Luck     145


「弱っ!」


「弱って、ひどいだろ」

 子供はひどいことでも平気で言うから厄介だ。俺のハートが傷ついたぞ。


「だってさぁ、僕より低いよ」


「そうだな、嘘じゃない。ただ細かく見ていくとレベルが低いけどHPは俺の方が高いぞ」


「そうだけど、これもバグだよ」


「いや、それはバグじゃない」

 ふっ、認めたくないのはわかるが俺の方がHPが10も多いんだ。ナイトって強くない職業かと思ったけど意外に良い事あんじゃん。初勝利記念だ、皆に報告入れようか。えーっと、ギルドメールでメッセージを、ここだったか・・。


「何やってるんだ、お前達」


「ステータスを見せ合いっこ」

 エルドラがしゃがんだまま、立ったヴィンスを見上げて答えた。上目づかいのエルフはサラサラの髪に透き通った間からくりくりとした目で見る。無垢な瞳にヴィンスは何も言わなかった。


「違いがあるだろう」


「ライム兄ちゃんのHPが10高いこと?僕はHPとMPが低いの?」


「それかー?子供の頃はHPとMPの上がる比率が低いからどうしようもない。そう言う場合、大人になると1レベルが上がるだけでそれを補う数値が一気に上がる。修業前と、どれくらい強くなったか今のステータスを覚えておくといい」


「はーい」


 よかったなエルドラ。


「ところでヴィンスさん、ベスコさんにギルドメールを送れませんか?」

 ステータス自慢でメールの事を思い出した俺はギルドメールで食料の注文数を送ることを提案した。これならモニカさんとも話ができる。


「先日ゲイルがベスコに頼んでおくと話していた件だな。仲間には話ができるが他のギルドと登録はしていない。それとメールは更新で一日三回、二十字までとなっている」


「最初はたくさん送れたんですか?」


「最初はなかった。それが何回かの更新で変わっていった。食料は俺からゲイルに必要な分をメールで送っておく」


「お願いします」

 俺たちはギルドメールをほとんど使っていなかった。なぜなら、皆いつも一緒にいて使う事は利便性に欠けるから。また俺は文字を書く事が何故か嫌だった。異世界人だと知られるのではと思った。


「さてそれじゃー、十分休んだはずだ。修業の続きを始めるぞ」


「うんっ」


「はいっ」


「素振りしながらしっかり聞け!!剣を自分の真ん中となる位置で持ち、剣を上げて前に一歩出てから振り下ろす、後ろに一歩下がる、再び剣を上に上げる。これを繰り返す!」


「剣は傾けるな、重くてもきちんと構えて真っ直ぐ振り下ろせ。前から目を離すな、自分を斬って死にかけても誰も助けてくれないぞ」


「はぁはぁ、はぁっ!はぁっ、はぁっ!はぁはぁ・・」

 今頃、俺の家族はどうしているだろうか、仕事か夕食か買い物か。俺はここで修業をしている、いつかダンジョンマスターに会って元の世界に戻るから俺の事を忘れないでほしい。


「はぁ、はぁっ!はぁ、はぁ!」

 これまでと同じように、これまで以上に最悪な状況になっても、この世界でダメ元で俺は頑張るから。


「やぁあ!はぁ、やあっ!やぁあ!はぁはぁ」

 エルドラの方を見ると俺と同じように一生懸命取り組んでいた。お前も両親のことを考えているのか。真面目に打ち込んでいる姿に俺は疑問を抱いた。


「はぁはぁ、はぁあ!はぁはぁはぁ、はぁっ!」

 剣を持ち真っ直ぐに振り下ろす、傾けないで剣を見て振る、疲れても見て振る。



 っそー、まだ終わらない。

「くっそぉ、はぁっ・・・、はぁっ・・・」



「やっ・・・、やっ・・・、あっ・・・」


 横を見るとエルドラも疲れてきていた。ようやく疲れてきたのか、どれだけ体力ある子供なんだ。



「はぁっ・・・・・、はぁ・・・・・っ、はぁぁ・・・」

 意識を飛ばして剣を振りおろし足を動かす。足の感覚がなくなってきた。手も剣を握っているのか分からなくなってきた。それでもと手に意識を注ぎ力を注ぎ、剣に伝える。戦闘中、脱力しても剣を持っていられるように。


「はぁはぁ、剣を下ろす、はぁっ・・・。はぁはぁ、剣を下ろす、うっぁ・・・・・・。戻って」



「よ~し、今日はこれ位でいいだろ、夕食にしよう」


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

 息しか出ない。


「疲れたな、お前の提案通りきちんと連絡を入れたぞ」


 ギルドメールか、うんうんと俺は頷いた。


「それと暗くなっただけでは正確な時がわからない。夜になったらゲイルからメールで届くぞ。あと朝もな、これで時間の管理もしっかりできるし三回でちょうどだな」


「そぅ」

 答えるのにも体力が必要だった。一体、昨日今日は何時間修業していたんだ俺達。街は教会が時間の管理をしている。


 夕食の時間、サンドパンを齧り瓶に入ったロコスープを飲む。パンを噛んでスープを口に含む、噛む度に筋肉痛で痛む。まるで食事に体力を使うようだ、溶かして食べると楽だった。体力を回復させるためには食事をとらないわけにはいかない。


「これから俺たちどうなるんでしょうか」

 仰向けになり、見えない空を見て俺はヴィンスさんに話しかけた。


「もしダンジョンマスターに会えたら、新しい生活だろう」


「そうだと嬉しい」


「それまでは修業だ」


「は・い」


「・・・・ふひゅ~ぅう」

 その後、疲れで俺はすぐに眠ってしまった。


「ふぁ~、ライム眠っちゃった・・」


「エルドラも疲れただろう、後は俺が見るから眠るといい」


「はーい、おやすみなさい」


 少しして、ヴィンスも床に就いた。

「じゃあ俺も寝るとするかな」

 如何に強くなるか。ライムはここでどう修業していくのか?

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