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二分のギルド 2

 ダンジョンに残ったライムとヴィンス、エルドラの三人は修業を始める。一方、ダンジョンから出口に向かうモニカたちは足止めを喰らっていた。

 ライムと離れ街に戻るモニカ、カタリナ、アッキーは順調に十階層から八階層に移動した。


 スカルベはグールを素手で殴った、その威力は凄まじい。吹っ飛んだグールが他二匹に当たった。スカルベはグールが倒れてすぐ言葉を掛けた。


「こいつらを相手にすると切りがない、行くぞ!」


強力(ごうりき)だぞ、デメグラム」


「それは見ていた、俺たちでは真似できない攻撃だ」


「お前たちも、いずれこれぐらいできるようになる」

とスカルベは二人に話しかけた。



「あれはゴーストか!逃走が難しい相手が出たな」


 赤いゴーストが出現、正面から高速で接近。


「ゴーストは俺でも魔術の補助がないと倒せない、補助を頼むシャティ!」


「いくわよ」

「アイシクルランス!」

 魔術を詠唱しシャティが放つ、氷柱が何本も飛びゴーストを空中で串刺しになる。


「ドラゴンパンチ!」

 補助もあり、一撃で倒すスカルベ。



「またゴーストだ!今度は青が三匹」


「私も手伝う」

 バルバラが魔術の詠唱する。


「私はこっちをやる」

 ハーゼリアも続く。


「ヒーリング!!」


「ファイアボール!!」


「今だ!ヴィンスがやった同時攻撃だ」

 ゲイルがデメグラムに声をかけた。重なるよう攻撃を出すゲイルとデメグラム。エウロとプリンシパルは遺骨を守る。うち二匹は倒せたが、もう一匹がモニカに襲い掛かる。攻撃を阻止するためアッキーは斧を振るが、攻撃が透き通り、


「きゃっ」


「ブフゥン・・ゾワワワァ」


「あっ・・っぅうう」

 モニカの目が一時的に白目になり呼吸が止まった。これはゴーストの技である。


「あっ、ぁ、ぁ」

 リコルチェは脳裏にミノタウロスとの戦闘の光景が蘇り動けなくなっていた、彼女は震えている。


「貫け、滴る雫を冷酷な槍と化し!」

「アイシクルランス!!」


 フィアが放った氷柱はゴーストの体を突き刺し動きを止めた。


「ザザッ・・・」

 アッキーはモニカの手を取り避難させる。


「ジィッッ」

 空中を爪で切り裂くスカルベ。ゴーストは体が裂かれ漂い舞って消えていった。


「次々とまたかぁあ!!」

 グールが多数出現、その数十以上。


「この早さと数、異常じゃないか?」

 まるで場所を知っているような敵の出現と数の多さにデメグラムが怪しむ。


「ダンジョンマスターが意図的にやっていると言うのか?」

 首謀者を推理しゲイルが聞き返す。


「ファイアウォール!!」


「一刀一刀、斬撃!」


 ・・・魔術と武器による攻撃を駆使して一気に倒すが、さらにまた、



「おい!」


 アンデッドが七匹出現!


 すぐにゲイルとエウロは剣でズバズバ斬っていくが、ゾロゾロと起き上がってくるアンデッドたち。


「例の物あるか?」


「これでしょティルウィング」


 フィアが預かっていた剣をスカルベに渡すとスカルベは、止まない連撃をしてアンデッド七匹をまとめて薙ぎ倒していった。


「うぁーっ」

 アッキーは振落で攻撃、アンデッドうち一匹を地面に倒す、だがすぐに立ち上がる。


「やっぱりヒビアゲルの杖でもないと敵わないか」

 武器だけの攻撃で決着のつかないモンスターにスカルベがぼやいた。


 倒したはずのグールとアンデッドが起き上がってくる中、さらにグールが五匹増えた。


「逃げるぞー!!」

 スカルベが周囲を確認し叫んだ。全員の視線がスカルベに集まるのを見ると先陣を切って走る。


「走るぞぉー!」

 ゲイルも大声で言う。


 全員、一目散に逃げ出した。逃げる途中スカルベは後方に移動し護衛を務めた。魔法使いはファイアボールを何回か放ちファイアウォールで壁を作り時間を稼いだ。そして逃げ切った。




 ダンジョン七階層迷いの森では無敵の準フロアボスが枝で追い打ちをかけてきた。ここを通らないと六階層には辿りつけない。


「きゃあ、木が襲ってきてる~!」

 モニカは腰から上を左右に動かしながら走る。


「おお!」

 アッキーは枝をかわすためジャンプするが低空の跳躍だった。


「きゃっ!」

 カタリナは木を潜って攻撃をかわし走る。



「ベスコを何回か見かけたけど、どうやって抜けたのか謎だわ~」

 シャティはランク七位のホパーのギルドの往来について疑問を感じた。


「近道とかあるのかしら」


「どちらにしろ、木は攻撃できんな。俺たちの住処だ、心が痛むから」


「決まりねェ」

「ですね」


「何、爺婆臭いこといってんのよー。最強ギルド冒険者三人、揃いも揃って何で自然主義者なのぉ!」

 異世界用語を使いキレるモニカ、ただ木の攻撃をかわし迷いの森を進む三人に腹を立てる。

「もう、私がやるわよー!」

「射よ、突き刺す炎矢!」

「ファイヤーボウ!!」


「いかん」

「シュカッ」


「あれっ?炎の矢が消えてる。私の得意の火魔術よ」

背後から襲ってくる枝に放ったモニカのファイヤーボウが消えていた。今までこんな事がなかったので動揺するモニカ。


「それならこれで・・どう?」

「飛べ、怒り怒る炎の球!」 

「ファイアボール!!」



「バサッ、タタッ」

「シュッッ、シュキィン、ゴォォォッ」


 モニカがスティックを見るとスカルベが地と平行に低空飛行しファイアボールを剣でぶった斬る。二つに割れたファイアボールは地面に落ち熱を奪われ火の粉のように消滅した。


「なんてこと・・」



 みんな、酸素不足で心臓が鼓動を打つ。


「くうっ・・」


「・ぁはぁ」


「あっく」


「バシッ!痛っ!こいつウザイな、いっそ倒してしまおう」


「気を付けろデメグラム!木の枝に胸を突かれ運が悪ければ、重傷、即死もあり得るぞ」


「こんな大人数で逃げ回るから不利になるのよ、全然良いことない、ああっ!」

 鞭のような枝がハーゼリアの足を打った。


「ヒーリング!」


「足、大丈夫?」

 回復魔術を唱えたリコルチェが尋ねる。


「ええ、ありがとう。リコルチェ」


「っこの、いい加減にしろ」

 身を攀じるエウロ、さらにマントの包みを持ったまま左に転がる。

「大切な遺骨だ、絶対落とさない」


「バルバラ、そこ穴があるから気を付けて、きゃっ!」


「ありがとう、怪我はなかったプリンシパル?」


「少し挫いただけ」



「なぜか魔法使いが狙われるな、火の魔術を使えるのを知っての攻撃か」

 ゲイルさんが深々と考える。


「良い修業だ。木が相手なら根本を見れば攻撃か分かり変化しても音で気づく」


「何言ってんの?そんなことできるわけないじゃない!」

 モニカが、ため口でスカルベに言う。


「何レベルになると、できることなんですか?」

 よく聞くカタリナ


「さぁな、本人の努力だな」


「ドラゴンとエルフは敏感な耳を持ち特殊なんでしょ」


「体が・・」

 アッキーが木と木の間にひっかかる。


「あいつは体が大きいから、あの間は通れないな」


「ドン!」

 スカルベが竜の手で押すと、あっさり通った。アッキーは呆然とした。とんだ方法でピンチ脱出、板挟み状態の選択肢に迫られることもなく。


 ほうほうの態で森を抜け出し、一行はやっとのことで五階層の入り口まで戻った。


「やっぱり一日では戻れなかったか、シャティ」


「まあね、それがダンジョンだわ」


「三人はいいわよね。木々が心が和むとか、水は心が洗われるわとか話していても敵にやられることがないから!」


「怒らないで、モニカ」

 リコルチェがとめる。



「今日はこの辺で休むか」

 スカルベが言うと、


「いいですね。ちょうど半分まで来たし」

 ゲイルが答える。


「ふぅ~、コトトッ」

 そういってマントで包んだ遺骨を置くエウロ。プリンシパルもそっと置く。



「はぁ~っ、ここで泊まるんですね。ライムさん修業うまくいってるかなあ」


「ライム泣いてるわよw」


「そんな可哀想ですよ、せいぜい愚痴三昧です」


「・・・・」

 アッキーは、悪女二人の話を知らんぷりで聞いていた。



「食料ほとんど置いてきましたけど、どうするの?」

 モニカが尋ねると、


「それは夕飯なしということだ、一日位食べなくても死なないだろ」


「えーっ」


「食料ないんだった」


「俺は十階層に残った奴らの方が食料は足りてないと思うぞ」


「起きていたら余計に腹が減るから、みんな早めに寝よう!」


「モニカたちも、それでいいか」

 ゲイルが気を使い尋ねると、


「飢え死にしそう、モンスターって食べられますかね?」


「美味しそうなのいたわよね」


「お腹壊すよ」

とアッキーが言うと、


「アッキー調子いいわね。あなたは、ここに肉を隠してるでしょう」

 ホッペや腹を触るモニカさんに退くアッキー。


「グルルルゥ」

 アッキーのお腹が鳴る。


「アッキーもお腹、空いてるのね」

 そう言って渋々モニカは食事を諦めることにした。


 皆、すぐに眠りについていった。

 全部置いてきたから毛布は一枚もない、その代わり罠のない鱗の上だから絨毯と同じ。




 翌朝、一番に目を覚ますシャティとフィア、朝は自然から知れた。他の者も起きたので出発、何事もなく進む。空腹で脱力感がするため四階層の海の上は男女ペアでボートを漕ぐ。カタリナとリコルチェが乗るボートには強健なスカルベが同乗した。

 多少の戦闘もあったが人数が多い分、早く片付きダンジョンから出口に無事到着。




 サンサンドの街に着いた頃、光球が沈みかけていた。

放って置くわけにもいかず岩壁のライムたちのラクーダも一緒に連れて帰る。


「はぁはぁ」

 街に着いた時はGold以外すっからかんの瀕死・空腹状態、エクセア以外は。


「皆すまない、迷惑をかけた。俺たちに手伝ってほしいことがあったら、力になるからいつでも言ってくれ」

 サンサンドの入り口で別れを告げたエウロ。


「エウロ、いいんだ。俺たち何もできなかった」

 ゲイルが察する。


「うむ」

 スカルベさんも促すように返事する。


「アシュリーとセイロンの遺骨は一つも落ちてない、よかった」


「この時間なら教会はまだ間に合います」


「それなら私がシスターのかわりに祈りを捧げるわ」

 バルバラがエウロに言った。


「バルバラさん達、ご飯食べなくて大丈夫?」

 モニカが言うと、


 ブルーオーシャンの三人はモニカの方を見た。


「余計なお節介だけど、ここまで来て死んだり体壊したら、その二人にも悪いじゃない。だから食べて元気になったところで祈りを捧げたらどう?って思うの」


「そうだな心配するか」


「あとで食べるわ、お供えもしないといけないし」


「それでは失礼」


 三人は街をまっすぐ教会に向かって歩いて行った。




「さあ・・二人の分も頑張ろう」

 モニカが言う。


「どうするのよ、スカルベー」 


「なんだその怠けた声は、それでも最強のエルフか?」


「シャティ、スカルベも空腹で苛立ってる」

 フィアが説明する。


「スカルベ、それで怒っていたの?」


「・・・」

 図星のスカルベ、空腹冒険者でも人間を襲うことはない。


「?」

 アッキーは三人の会話を聞いていた。

 

「何だお前達、くっせぇなぁ~!」

 酒場のおじさん冒険者が文句を言う。


「なによ、あんたたちは酒くさいわ」


「お、お前!?エクセアのエルフ、シャティとフィアか?」


「静かに!そこの奴、静かにしろ」


「その顔間違いねぇ、ドラゴン族スカルベだ。おい見ろぉ」


「ぁぁ、こぇえ~」


「それお尋ねもののような言い草だな」

 ゲイルが言う。


「見ているのはあいつらだけだ」

 酒場の中を見回すデメグラム。


「そのスカルベだ、文句があるか?」


「な!ない、ないよ。俺たちはただ言っただけだ」


「そうか」

 牙を出して目を細め睨みつけると、その冒険者は酒場を出て行った。他のテーブル席の冒険者は、それに気づき見ないようにした。



「さあ座りましょう」

 ハーゼリアが言うと、


「ええ」


 みんなも腰を下ろした。

 ざっと十人が二つのテーブルをくっ付けテーブルを囲んだ。そしてあれこれとメニューを注文する。


「う、ん、こんなので舌がとろけるなんてどうかしてるわ私~」

 モニカがただの米であるサンドライスを食べて幸福感に浸っている。


「ビミィビミィ」


「モニカさん、しっかりして下さい。まさか米で喜ぶとは」

 米を口に入れ咀嚼しながらラリるカタリナ。


「NICEライス」

 小声でアッキーが呟いた。


 別の料理を食べる物は、

「う~ん、この味付けが最高!」


「ピリッとした感じでやる気が漲るわよ」


「これは青く水水しくて美味しいです」


「ヴィンスに悪いな」


「いいんだヴィンスの分も俺が頂こう」


「ハーゼリア、これどう?」


「あ~ん、パリパリパリ。動いた、今動いたわ」


「うそ~ぉ」



「おい、あれ」


「見てる」


「ランク一位と三位があんなやられてるの初めてだよな」


「上層階は行かない方が良さそうだ」


「おおぅ」




 夕食後、酒場を出る。


「私たちはいつも教会で体を洗うんですけど、みなさんはどうしますか?」

 モニカが尋ねると、


「俺たちは一旦家に帰る」

 ゲイルがこたえた。


「私たちは魔術で水を出して火で温め、体を洗うのよ」

 とハーゼリアは答えた。


「それはいいからハーゼリアも休んで」

 リコルチェが遠慮すると、


「何言うのリコルチェ、頭を一度洗ってから薬を塗ると効果覿面のはずよ。綺麗な水を多く準備するから、それで洗いなさい」


「ありがとうハーゼリア」


「それが私の出来る限りの事」




 教会に行き体を洗うモニカたち、セイラに頼み一時、キャメルタオルを拝借、寄付をすれば、誰も文句を言わないらしい。


 アッキーとスカルベが二人で清めの場に行く。


「・・・・」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


「なんだ!」


「いゃ・」


 気まずい雰囲気のアッキーとスカルベ。アッキーはドラゴン族の体に興味があった。アッキーもゲームをやっていた一員。ゲームでは知れない部分を知りたいという好奇心がある。

 二人が洗い終える。女四人は、まだ洗い終わらない。


「パシャパシャ!」

「気持ちいいぃ」


「私たちは水の魔術が得意だから」

 シャティは、全身が白い肌、エルフ特有の体つきで耳と足が長く、まさに美の極致に達していた。


「水が欲しい時はいつでも言ってね」

 負けずフィアは、少し身長が低めの小麦肌、バランスのとれた体の起伏は見る者を魅了する。


「へぇ・・・・・」

 見とれるモニカ。


「っ・・」

 目が離せなくなるカタリナ。


「泡から植物の香りがする~」

 とモニカがこれまでにない石鹸に気づく。


「それはソープピーよ。ツリーシードの植物から作ったの」


 水魔術だけでなく、体を洗うこともうまく早かったエルフ二人。


「私も急がなきゃ」




「遅かったな」


「ゴメンナサイ、つい気持ちよくて」


「久しぶりだ、許そう」


 全員、教会で遺骨の前でお祈りをしようかと見たが、遺骨が見当たらなかったので天使の銅像の前でお祈りを一度捧げて終わった。


 教会を出て歩く。


「俺たちは酒場二階に行く」


「今日くらい一緒に泊まってもいんじゃない?親睦を深めるためにもさぁ」


「スカルベは一緒ダメ?」


「一緒寝はエルドラだけだが、よし一緒に泊まるか」


「ありがとう」

 困るアッキー。




 女部屋では、


 皆で話していたがシャティとフィアは先に眠っていた。


「何も話さず寝ちゃいましたね」


「ふふふっ、ちょっと触ってみようかしら」


「ああすべすべ」


「**ji/a」


「今、何言ったの?」


「寝言ですよ」


「そうかな?」


「私たちも寝ましょう」

 疲れで音をしっかり聞きとれないのかと思ったモニカ。


「はい」




 男部屋のアッキーとスカルベ、


 ―――静かだった。


 あまりに静かだからスカルベが話しかけた。

「おい!」


「・・・」

 顔を動かすアッキー。


「!」

 アッキーを見つめるスカルベ。


「ぁ・」

 ライム以外と初めて二人っきりになるアッキーは言葉と声がでない。


「話さないのか?エルドラはあんな小さいのに見ず知らずの俺達に臆することなく話しかけてくるぞ。それも外見が人間ではない俺達にだ。おまけに問題も抱えている」


「ぅん」

 アッキーが何とか声を出して言った。それ以上スカルベは言わなかった。


 アッキーもそれ以上は言葉が出なかったので安心した。


 そして二人は眠っていった。

 職種により戦いやすい地形がある。エルフやドラゴン族は自然が得意です。

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