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残された遺産と清算 3

 テリーヌのギルドからブルーオーシャンとマッドが脱退しエクセアが加盟する。ライムはエルドラやヴィンスとダンジョンに残り修業することに。

「そうだな、俺たちも水や食料が必要だ。岩や砂地を緑化できれば住むところも増える」


 ドラゴン族は炎を出すから破壊的だと思ったけど案外、建設的なのかも。


「どうしたんだライム?」

 スカルベさんが俺に尋ねた、


 夜なのに苦笑いした俺の表情が見えるのだろうか?優しいドラゴンさん、違ったスカルベさん。


「いやー殺風景で、心まで空っぽになりそうだと思いまして」

 と答えたら、


「うまいな、お前」

 とスカルベさんは口を開け閉めした。


 誉めているようだ。

「いやっ、てはは」


「人間でもそういった感情を抱けるのなら、みんな職業選択でエルフとドラゴン族を選ばなくていいと思うぞ」

 と答えるスカルベさん。


「はい、でもドラゴン族のあなたの助けが必要ですから、そのままでいて下さい」


「うむ、そうだな」


 なんか、とんとん拍子で俺はスカルベさんに気にいられた。


「やっぱりライムはあれよね、人を惹きつける魅力を持っているよね」


「そうですか?」


「私はあると見た、そういうのがあってここまでこれた、そしてみんなが集まった」


「うむ、その魅力を買って話したいことがある、ライム達ちょっとこい!」

 おだてられ、クイックイッと尾を振るスカルベさん、俺たちはスカベルさんについていく。


「どうしたんだ?」

 俺たちの不審な行動に違和感を感じたゲイルさんが話しかけてきた。


「ちょっと話が(こじ)れているだけよ」


「何かあったら言ってくれ」


 尾をくるくる回すスカルベさんに頭を傾げるゲイルさん。


「誤魔化せましたね」


「まあな」

 もう意地悪なドラゴンさんっ!尾をくるくると楽しそうな雰囲気にしか見えない。




 スカルベさんは皆から声の届かない場所で足を止める。ゲイルさんはこちらを見ている。


「おい」

「ねえ」

「あの~」

 三人が覗き込むように俺に尋ねてきた。


「な、なんでしょう?」

 そんな顔されても、俺はきかないぞ。


「もういないのか?」


「誰がです?」


「エリスだ」


 エリスを知っている!?


「エリスさんは、急にどこかの街か場所へ帰ることになりました」

 とモニカさん、


「そうか・・・。さっき俺たちは以前からこの街に住んでいたと話しただろ」


「はい」


「その時に話しかけてきた魔法使い、それがエリスだった。突如エリスが現れてから、俺たちはこの世界で生活と行動が変わっていった。ダンジョンを目指して毎日修業、エルフの二人には魔術を教えていた。そしてある時ダンジョンに入り、しばらくしていなくなった」


 以前にもエリスがこの世界にいたのは合っている。しかしエクセアと戦ったのは嘘だったのか?一体いつからエリスはいたのか?


「エクセアの皆さんはエリスと戦ったことがありますよね」


「そんなー、ないわよねえフィア」


「はい、ありません」


「それ本当ですか!?」

 一体どうなっている?エリスの言っていたことが嘘なら何で嘘をついたんだ。俺たちはエクセアにどこまで話すべきなのか?



「私たちもエリスと一緒に修業したわ、ねえカタリナ」


「はい、スカルベさんたちと一緒です。私は攻撃が出来なくて・・」


「僕も教わった」



「俺たちは、あのエリスが見込んだお前達の事を内密に調べていた」


「調べていたってスカルベさん達どこにいるんですか?」


「いつも酒場の二階にいるわ、用心棒代として酒場のマスターに部屋を借りているの」


「だから皆さんの状況も知っています」


「二階にいたのなら!」


「?」

 俺が声を上げると、何だとスカルベさんたちの視線が集まった。


「ライム」

 モニカさんが俺の気持ちを察し腕に手を当てた。


 宿屋にいるのなら助けてほしかった。手遅れにならなかったから良かったものの、もう少しで仲間が死んだんだぞ。


「ライム、ダンジョンで助けてもらったじゃない」


 そうだけど・。


「その前にもいたわよ」


「モンスターの来襲」


「空にいっぱ~いモンスターがいた」


「街が襲われた時、皆さんが倒してくれたんですか?」


「そうだよ、僕はさっきの技を使ったんだ。光ったでしょ」


「光った、空に走る光があったな」


「偉いっ、エルドラ!」


「俺は用があっていけなかった、目立つなと言ったのに同じスキル技を使ったようだな。それより、エリスが認めたお前たちと一緒にダンジョンの最上階を目指したい!ダンジョンで共に戦ってくれ!」

 スカルベさんがあらためて言う。


「はい、よろしくお願いします!!」


 こうして俺たちはギルド連盟を組んだ。この先どんなことがあっても俺は元の世界に帰るために全力を尽くすことを約束しよう。



「あと僕も話がある。ちょっと来て来てー」


「なーに、エルドラ君」


 気にするエクセアのメンバーたち、移動するエルドラと俺たち。


「皆に、これあげる」


「可愛い!」


「ガラス玉?これ」


「おおっ」

 アッキーもなぜか喜ぶ、子供は不思議だ。


「いい」

 そう答えたが、押し付けられた。こういうのを受け取っても置いておく場所がない。



「い・・・・・は僕のギルドの皆には、内緒だから守ってね」

と小声で話すエルドラ。”い”から始まる言葉で内緒はあれしかない。


「なーに、隠し事?もしかしてお姉さんたちにも言えないエッチなこと企んでいるんじゃない~」

 弱みに付け入るモニカさん、子供でスケベな男子はいるけど違います。


 エルドラは俺と俺の仲間の顔を見て言う、

「ライムの仲間には話してもいいから」


「約束だよ」

 走って戻って行く、お前の歳でここまでよくやった。


「何、約束したの?」


「スカルベさん達に言わないこと」


「それで、何なの?」


(あのな、エルドラも異世界人らしいぞ)


「うそぉお~!」

「えええっ!」

「ごほっ」


 お三方、驚き方が変だぞ、それではスカルベさん達にいずれ気づかれてしまう。




 それから皆と街やダンジョン、昔の話をして時間が過ぎた。そして夕食の時間になる。


「私たち食料がありません」

 涙ながら?にモニカさんが訴えた。別に食欲旺盛なアッキーが多く食べたのではない、普通に皆で食べたから残っていないだけ。


「安心して、ここに私たちの非常食がありますから」

 リコルチェさんが言う。


 袋から取り出すゲイルさん、

「な!・・・すまない皆、俺たちのマッドスペシャルが潰れていた」

と袋から食料を取り出した。


「そんな潰れたって構いませんよ、あらっ美味しそうだぁ~」

 げっ!落としたのか、穴があるし砂がついている。


「ほ、本当ねぇ、美味なる形、食べやすそぉー」

 顔が引きつるモニカさん、嫌々マッドスペシャルを見ている。


「宮殿内で飛ばされたり地面に擦れたりして相当、動いたからな」


 戦闘と環境は食料の状態に影響をする。それは知っているが腐ったり潰れたり食料だけは、どういう設定になっているのかイマイチ掴めなかった。


 食料の事を考えていたら戦えない。


「さあ、皆さんの分もあります」

 フィアさんが呼びかける。


 テーブルと椅子は石、いつみても岩を崩したものだけで角ばった家具である。

 テーブルの上に白いスプレッドクローズをかけその上に水の入った瓶と食料を半分にして包んだ布袋が置いてある。女たちは石の椅子にキャメルタオルを敷いてお尻が痛くならないように腰かけた。男たちは、皆そのまま。


「それじゃー食べようか?」


「そうですね」


 食事は何も言わず静かに始まった。そんな空気ではない。



「すごい、かたいですっ」

 リコルチェさんが味を語る。


「本当ね、ゴワゴワとしていて噛むのに時間がかかりそう」

 ハーゼリアさんは食事に苦戦している。


「砂漠の色と岩の形」

 プリンシパルが言うと、


「岩の形って、プリンシパル」

 バルバラが答える。


「どれ俺も岩を食べるか。もぐもぐもぐ、ああ岩だ。喉にゴッと落ちやがる、でも美味しいぃ」

 前向きに一緒に食べ泣いているエウロと他の二人、食感で味わえない死んだ仲間の事を思う。




「なんだ、岩になったか」


「これは、スカルベさん手作りのゴゴンですっ」

 フィアさんが説明する。


 ゴゴン??


 シャティさんが味見する。

「どうかしら今回の出来は、ガリッ!?あぇぇ塩辛いじゃない!」


「文句があるなら食うな」


「いつも、混ぜずに焼くでしょ」


「俺は多くの敵と戦ってきた、ゴゴンは敵に入らんから混ぜなくていい。口の中で混ぜろ」

 スカルベさんのドラゴンの手で混ぜるのは難しそうだが。


「塩の塊に当たった人しか塩分とれないでしょ!」


「落ち着いて」

 とめるフィア。


「はぁはぁ」


 パンの栄養は糖分だけでなく、塩分の補給もあるからな。


「パン作りなら俺が味見しよう」


 いいんですヴィンスさん、勝敗はおそらく腕の形でシャティさんの勝ちですから。


「それにしてもこれは腹もちしそうだ」

 デメグラムさん、このゴゴンの厚みが気に入っている。


「お前達、俺の分まで食べるな」

 ゲイルさんが怒る。


「ゲイルの分は、そこに」


「あれ、これか!?岩かと思った」


「お前らの頭はモンスター並みか」

とデメグラムさん。


「ふっ、ふふふふふふ」

 笑うプリンシパル。


 お笑いトリオは面白いのでアホでも天才と評価しよう。


 飲物は水、水にはフルーツのような甘い味がする実が入っている。これは売っていなかったし美味しいから手作りだと思う。



 夕食後、男女別に分かれて就寝準備。

 男はライム、アッキー、エウロ、ゲイル、ヴィンスヴェルタ、デメグラムの六人。女はモニカ、カタリナ、プリンシパル、バルバラ、ハーゼリア、リコルチェの六人。それぞれが寝床を作る。


 二つの寝床の間にはアシュリーとセイロンの遺骨が置かれていた。


「アッキー、おやすみ」

 これからもよろしくな。


「おやすみ」

 人前でも話すようになったアッキー。






 翌朝、俺をトンッと何度も揺さぶる誰かの手で目が覚めた。


「トントンッ」


「はい」


「起きて」

フィアさんが起こしに来てくれた。夢のような朝を迎え眠気が消し飛んだ。


 残念ながら女達はシャワーが終わっていた。今日から皆がいなくなるのなら魔術を使える仲間がいるうちに洗っておかないと。汗や血で汚れていると病気になるかもしれない。


「起きたなライム」


 ヴィンスさんがお待ちかねのようだ。


「おはよう、ライム」

 エルドラが元気よく挨拶する。


「おっ、おはよう」

 挨拶は良いが、ライムって呼び捨ては感心できない。



「おはようライム」


「おはよう」


「おはよー」


「グアアッ!」


「あれスカルベさん、どうして竜語なんですか?」


「ライム、スカルベだって朝からスキルなんて使えない」

とシャティさん。


 そうかあれはスキルで疲れるんだな。

「あの体を洗いたいんですけど~、雨を降らしてもらえませんか?」


「モニカ、出来る?」

 フィアさんがモニカに尋ねる。


「風魔術は簡単だけど水魔術は苦手で、でも雨なら・・」

とモニカさんは自信がなさそうな顔で答える。


「これも練習よ」


 向こうの方で雨を降らせるモニカ、魔術は成功した。体を洗うヴィンスとエルドラとライム。風魔術も成功し、服も大体乾いた。


「ヴィンス、そこに火を付けておいたわ」

 手持ちの木を全て使いハーゼリアさんが火を付けておいてくれた。


「みんな、死ぬなよ」


「そんな事、このフロアで言わないでよ」

「バシッ!」

 リコルチェが上半身裸のヴィンスを叩く。


「それじゃー」


「お前達、頑張れよ」


「キャメル毛布やスプレッドクローズは全て置いていくわ」


「これは食料、残りはベスコに運ぶように指示する。たまに何か手に入れて渡してくれ」

 ホパーのギルドか。以前、運んでくれた人か。


「ファーストを入手しておくんだな」


「また会う日が楽しみね」


「おう元気でな、俺のこと忘れるなよデメグラム」


「ああ、お前こそ忘れるな。次、会う時は俺の方が強いだろうな」


「悪い、俺の方が強いぞ」


 永遠のライバルたち。



「ライム、私たち強くなって絶対戻るからいつでもメールしてね。皆の事は私に任せて」


「はい、お願いします」


「ライムさん死なない様に気を付けて下さい。それと死ぬと思ったらいつでも帰って来て下さい」


「わかった」

 わかってるけど、その崖から無理だろー。


「ライム、戻るから・・」

 アッキーは俺に近寄り言った、声は小さかったが気持ちは受け取ったぞ。


「アッキー、俺たちもヴィンスさん達みたいにどっちが強くなるか勝負しよう。俺と一緒に生きて戻れるようにさ」


「勝負」

 食事や水浴びは日課で書いていましたが、一部省略します。

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― 新着の感想 ―
[一言]  『迷宮ラビュリントス 3』『迷宮ラビュリントス 4』で、アシュリーとセイロンが亡くなったのは、作品としては逆に良かったかなという感じがしました。  というのは、『限界の果て』以後の町がモ…
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