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残された遺産と清算 2

ミノタウロスを倒したエクセアと十階層に戻った俺達はそこで一度休憩をとる。そして過去が明らかになった。

 エウロさん達を見ていられないので俺は少し距離をとった。




「それじゃ初顔合わせだから、こちらのメンバーを紹介しようかぁ」

 そういうと、エルフのお姉さんが話し始めた。


「こちらはスカルベ、ギルドエクセアのリーダー兼エルドラの保護者」


「スカルベだ、おそらく俺がこの世界で一番長く生きているドラゴン族だろう」


 スカルベはドラゴン顔と言ってもわかりにくいから別の言い方で説明すると、トカゲやワニの顔に体、あとは背中にMM(ギザギザ)とした(たてがみ)がついている。体に防具を装備している2足歩行。目が黄色、瞳が黒で、その眼の中に青色の斑点が混ざっている。口は八重歯のような牙が二本見えた。


「私はシャティホープ、呼ぶ時はシャティでいいわ。職種はエルフよ」


 シャティさんは整った顔にぱっちりとした目、鼻や唇が理想的な位置についていた。傍によると草木の香りが漂ってくる。

 俺はうっとりとして見とれた。はっと我に返って目を伏せれば、すらっとした体型とすべすべとした白い肌に興奮してしまった。職種がエルフだと肌質や耳の形も変わるのか?となおも興味が湧く。



「彼女はもう一人のエルフで名前はフィア」


「フィアカレッジと言います、声をかける時はフィアでお願い」


 フィアは一重でまつ毛が長く潤んだ青の瞳、こちらは鼻が小さく唇が薄いピンク。レモングラスのような香りが漂う。体はシャティより細く薄い肌色。


「この子はエルドラ、エクセアに加わった最後のメンバー」


「僕はエルドラ、子供でもお兄ちゃんたちより強いよ」


 そうか、生意気な。


 エルドラはクリっとした緑の瞳、よーく見ると黄と青が混ざっている。まだ子供なのでピンと立った耳が小さく可愛い。



「私はモニカ、こっちはリーダーのライムでアッキーにカタリナ」

 と手を向けモニカさんがメンバーを紹介した。


「へぇ~」

 ジロジロ見るな、このガキんちょ。エルドラは俺たちの周りを回って、いろんな角度から眺める、しゃがんだりジャンプしたり。

 遊ぶな、シッ、シッと顔を振るとその反応にエルドラが面白がった。


「ところでエルドラ、俺はあんな技知らなかったぞ」

とスカルベさんがエルドラに話しかけた。


「えへへ~、だって見せたことないもん。あの技、僕が一緒に旅をしていて二つの体が合わさっていることで悩んで、放った時に偶然出来た技なんだ。戻りたいって(ほこ)に願いを込めてたけど、それは叶わなかった。

 流星の槍(竜精の槍)は二つの職種が混ざったからこそ生まれた技、竜族の力と妖精(エルフ)の速さを合わせた技だから魔力なしで強力な威力が出るんだと思う」


「なかなか勉強熱心だな」


「うん」


 つまりエルドラはエルフとドラゴンの二つの職種を合わせ持つらしい。ゲームで言う転職した状態から冒険が始まったようだ。一挙両得というか羨ましい。

 これからおそらく、ミノタウロス以上のモンスターが控えているだろう。既に知っている名前を挙げればエンシェントドラゴンやダンジョンマスターのような。

 だから俺もエルドラのようなチート級な職種かスキルが欲しいと思った。


「スカルベさん、僕でも役に立ったでしょ?」

 エルドラがスカルベに尋ねると、


「グァアッ!」

 と喉を鳴らすスカルベ。


「いいよ、スカルベさん」

 子供ながらに謙遜するエルドラ、


「!!?」


「何?」

 モニカさんは急に逃げた。カタリナは身が怯む、アッキーは声のする方に振りむいた。


「何だ?お前たち」

 俺たちの視線が一つに集まっていたので、スカルベさんが俺達に尋ねた。


「モンスターが出現したのかと思って」

 俺はドラゴン族の生の鳴き声を初めて聞いた。


「これはドラゴン族のお礼を竜語でしゃべったまでだ」


 スカルベさんは真摯にお礼を言ったのか。まあ今思えば、可愛い声だったかも。


「そうなのですね」


 周りを見るとゲイルさんたちが立ち上がって武器を構えていた。こちらも、


「悪い、モンスターと勘違いした」

と答えた。そりゃそうだ、ここはダンジョン何が起きても不思議ではない。


「悪い」

 デメグラムさんも持ち上げたハルバートを下ろした。


 エウロさんたちはこちらを少し見たが、スカルベさんの声だと分かるとすぐに顔を伏せた。



「ヴィンス、今ここで私たちと一戦やってみる?」

 冷淡な顔をして目を細め言うシャティ。


 こ、こわい。エルフとの戦闘に巻き込まれるのは、ご免だ。


「シャティ、謝ったじゃない」

 フィアがシャティを止める。


「度胸のある人間だ、それは今度にしよう」

 スカルベさんは挑戦は認めた、そしてそれを持ち越した。


 えっ、決まったの!?思い込みが激しくありませんか?まさか、俺たちも戦闘に!いや早まるな、それはないはず、うんうん。

 プライドが高いドラゴン族とエルフの方たちは怒らせない方が良い。


 そうだ!状況を探るため俺は最初に抱いた疑問から尋ねてみた。


「あの~、エルフはエルフがいると決闘を挑むと聞いたんですけど・・・」

と質問してみた。


「その質問には答えられない」


 訳ありか。


「そうねぇ言えるのはエルフはダンジョン以外でも敵に襲われやすい事と、街に居ても襲われる事がある事くらいかな」

 歩きながら行ったり来たりして言うシャティ、何をそんなに気にしているのか。


 つまり敵を引きつける職種ってわけか。

「そうですか」


「それは困るよねぇ、カタリナ」

とモニカさん。


「はい、でも先日のモンスターの襲撃とは関係ないと思います。皆さん街で見かけませんでしたし」


「どうかしら」


「エクセアに俺も尋ねていいか?お前たち戦闘不能と街で囁かれていたんだが、さっき普通に戦っていたよな」

とゲイルさんが尋ねる。


「なんだ?それか、俺が話そう。俺たちは数十年前からここに住んでいて、モンスターを倒し鍛え上げ、ついにはダンジョンを見つけた。ダンジョンを攻略し最上階の十階層に行くとドラゴンが一匹いた。戦った末に俺たちは敗北した、たった一匹のドラゴンにだ」


「それは相当、前の話になりますよ」


「数十年前だが俺たちだ、そして今は一人のエルフが抜けてエルドラが加入した」


「それじゃ辻褄が合わなくない!?街のテントさんの話だとドラゴンの声と女の悲鳴が聞こえたらしいわ。そんな大声をエルフが普通に上げる?私には命が尽きる断末魔の叫びにしか聞こえないわ」

と答えた鋭いモニカさん。


「あれは岩だ。俺が岩を剣で斬りつけてな。他は俺の声かエンシェントドラゴンの声だ。ドラゴンが炎を吐いたから俺は岩を盾にして逃げたんだ。あれ以上戦っていたら死んでいた」


「ダンジョンでの戦闘の音が街まで木霊するとは・・」


 “鉄を打つ音は女の悲鳴のように聞こえる“と聞く。

 ”キャアァァ”という鳴った音をテントさんが聞き間違えたのなら理解できるかな。


「俺も若かったから力任せにやりすぎた。そのせいでここは、草木一つすら生えない」

 スカルベさんは思い返して反省した。


「もう昔の話」

 フィアが無表情で言う。


「その後、ここは封印された。しばらく俺たちは目立たない様に生活していた。誰もエルフ狩りをする俺達に戦闘は挑んでこなかった」


「エルフが邪魔だからでしょ」

とシャティ。


「時がきたら準備万端でダンジョンに挑もうと身をひそめていたが、開かれたのなら隠す必要はない、俺たちもダンジョン攻略に参加しよう」


 なるほどエルフ狩りはそのためにしていたのか。強くないギルドにエルフやドラゴンがいたらダンジョンを見つけ中途半端に挑む可能性があると。もし最上階近くまで行って負け再び閉じたら、次はもっと難しくなる。


「なぜダンジョンが変わったんだ?」

 エウロさん達も話に加わった。


「攻略できないようにダンジョンマスターが変えたんじゃない?」


「ダンジョンマスター?」

 バルバラさんの顔が険しい。


「このダンジョンの支配者」

 俺はそう答えた。エリスの話から、それでいいはず。


「そいつがアシュリーとセイロンを殺せと命じた張本人になるのか?」


「間接的にはそうですけどミノタウロスは自我を持っています。またダンジョンマスターは比べ物にならないほど強いと思います」


「俺たちはダンジョンマスターの話は良く知らん。確か以前はいなかったはずだ。ただこの世界でメニューのヘルプがなくなってから環境に変化が起きた。ラクーダや馬が出てくるようになった。もしかしたらエルドラのその事に関係あるのかもしれない」


「エルドラか」

 エウロが言う。


「エルフ二人がこのエルドラに戦闘を挑んだ。そして負けた、新人の子供にだぞ」


「動きは互角、力負けして負けちゃった」

「魔術なしで戦った。本当強かった・・」


 なるほど、ゲームで言うならバグの消し忘れか不具合。その更新でエラーが起こったか副産物として両者の特性をもつ職種が生まれたわけか。

 不確定要素、ミス、思いもかけないことがこの世界にあった。それでエリスが現れた可能性だってある、エリスは一体どっちなんだ。ああっ、ここにエリスがいれば全部の話が聞けるのに・・。



「今は十階層より上の層が作られている。その上にダンジョンマスターがいるのなら一緒に戦うことにしよう」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


「こんな強い方たちが味方、もう勝ったも同然ね!」

 ドラゴンの手を握るモニカさん、退くスカルベさん、おっ人間は苦手か!?


「本当に勝てるでしょうか?」

 暗いこと言うカタリナ。


「助かった」

 安心するアッキー。



「ライムとスカルベ、お前たちの話を聞いていた。俺たちのギルドはリコルチェがこれだ。参加できない、それと二位のギルドはメンバーが減ったから察してほしい」

とゲイルさん。


「気にするな。お前たちは街を守れ」

とスカルベさん。


 スカルベさんは気にしていないけど俺は皆がいた方が心強かった。



「おい皆!これからの予定を話しておく」

 全員の視線がスカルベさんに集まる。ドラゴン族だと外見で余計に注目を浴びた。



「まずライム、お前は明日からずっとここで修業をしろ」


「俺ですか?」


「そうだ。そしてエルドラと修業をして強くなれ」


「街へ戻れないんですか?」


「なんだ、怖気づいたか?お前はリーダーだ、責任もある、俺たちは一刻も早くみんなを救いたい」


「・・・わかりました」

 仲間が殺されたエウロさん、俺がこの世界に連れてきた仲間のことがある。俺は、その責任があるから断れなかった。


「そうだ!ゲイルたち、お前たちも一人残ってやれ。相手がエルドラだと格上で修業にならん」


「それなら俺が残ろう」

 手を挙げたヴィンスさん


 もう一人はヴィンスさん!?俺はとてもあの体格と戦えるとは思えなかった、きつそう(涙)


「明日からよろしくなライム」


「え、はい」

 お手柔らかに(怖)


「エルドラ、俺は皆と帰るぞ」

 そうエルドラに伝えるスカルベ。


「うん 」


「他のメンバーは俺と戻って特訓だ、いいな」


「私も?」

とモニカさん、


「そうだ」


 僕もと指さしアッキーにコクと頷くスカルベ。


 結局、みんなを巻き込んでしまう結果になった。ゴメンナサイ、ペコリ。


「モニカとカタリナには私たちが教えるから」


「シャティさん達が教えてくれるんですね。ところでシャティさん、私の顔をどこかで見ませんでした?」

と、いつものようにカタリナが尋ねた。


「知りません」


「ない」


「そうですか、見かけたら教えて下さい」

 やはり、ここだけ発展なし。


「今日はここで体を休め」

 スカルベさんが胡坐をかいた。ドラゴンが正座するとは思わないが、普通は犬の伏せのような感じではないかと思った。


 みんな腰を下ろした。女たちは、すぐにわいわい話し出した。いつも思うがこれは情報交換だろうか?種族やギルドは関係なく早く打ち解けていた。


「大丈夫、リコルチェ」

 シャティがリコルチェの隣で声をかける、

「コレ、私たちが使う塗り薬で良く効くから」


「私はこれ、髪の栄養になるの」

 フィアも声をかけた。


「元気?」

とフィアがハーゼリアに声をかけると、


「私は何ともないわよぉ」

 気取って言うハーゼリア、でも疲れは隠せない。



 プリンシパルとバルバラはエウロと一緒にアシュリーとセイロンの遺骨のそばで、これからの事を話し合っていた。


「アシュリーは教会と魔術加工場プラマイアさんに挨拶しなくちゃ。セイロンはチェイサロのギルドに会いに行って」


「それとツリーシードの花を用意しないとね」

 バルバラが言うと、


「私もいくから、エウロも呼ばないと怒るわよ~」

 とプリンシパル。


「っ、そうなるのはわかるっ」


 男たちは皆、何かを背負うように暗い影が差す。こうなってしまっては話しかけにくい。こんな状況で考えていたら思考回路が吹っ飛ぶぞ。神経だって血管が切れかねないと俺は思った。


「それにしても空気重いわね、こういったフロアを見ると私たちの世界が壊れていくのがわかる」

 いわゆる自然破壊説か、森林破壊とか土地の塩化とか他にもある。


「そうそう。砂漠化現象が私たちの命を減らしていくの。それも毎日ちょっとずつ、嫌がらせと同じよね」

 エルフにとってはツリーシードのような場所が生活しやすいのだろう。


「いくら戦闘で破壊されたからって、こんな灰と化すことないのに。草一つすら生えていない。せっかくだから植えてみようかな」


「それならツリーシードの種とかどうでしょう?何粒かあります、ほらこれ」

大きさが向日葵の種と同じ、ツリーシードの種を持つカタリナ。


「育てようにも水がないから難しいなぁ」


「魔術で水を出そうにも魔力切れだし」


「明日を待ちましょう」

 何とエクセアたちは過去にエンシェントドラゴンと一度戦っていた。逃げた後、ダンジョンは閉じてしまった。扉を開こうにもアンチロックを使える魔法使いが見つからず・・。

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