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第26話 ダンジョン12階層 迷宮ラビュリントス

 ブルーオーシャンから一日後、十一階層を進むゲイル&ライム一行より。

 蟻地獄を過ぎ、そのずっと先にある穴の中にブルースコーピオンの大群は入っていった。その上空に赤い星が耀いている。


「ここに何かあると思ったが」

 顎に手を当て考え深げに言うゲイルさん。


「フロアボスがいませんね」

 俺はそういった。


「ブルーオーシャンの冒険者もいない」

 ハーゼリアさんが考えている。


「この抉れた砂は何でしょうか」

 プリンシパルは周辺を歩き回り手掛かりを探した。松明がなくても、ここは赤い星の光で一帯が見える。


 異常に荒らされた地形。戦闘の後なのだろう。


「探してみるか」

 デメグラムがそういって探すと、全員がその場をくまなく探し始めた。


 見えても砂ばかりで殺風景な砂地、それでいて殺伐とした雰囲気が漂うから気が重い。

 一体このフロアの、どこを探せば手がかりが見つかるのか・・・?


「俺がもっと早く出発するよう決断していればブルーオーシャンに先を越されることがなかった」

 ゲイルさんが後悔する。


「そんな、気にしないで下さい」

 俺もリーダーとして反省することがある。


「なんでこんな薄気味悪い場所にいないといけないの」

 ハーゼリアさんが愚痴ると、


「かえって見えないような気がするな」

 ゲイルさんも頷く。


「ところで皆、夜道で物を落としたことない?」

 尋ねるモニカさん、


「誰でもあるだろ」

 デメグラムさんがこたえた、いつも言葉がちょっときつい。


「そんな時、どうするか尋ねているんじゃない」

 ハーゼリアさんが質問者に加勢する。


「そりゃー明かりをつけるか、次の日明るくなってから探すのに決まってる」

とデメグラムさん。


「そうよねぇ、もし砂の中に入っていたらどうするデメグラムさん?永久に見つからないわ」

 モニカさんが質問した、もしそうだったら見つからないぞ。


「掘ることもできないしな」


「だから思い切ってあの赤い星を破壊してみない?」

 上ずった声でさらりと言ったモニカさん。提案は間違っているのにワザと言っている。


「そのモニカの意図は、壊せば光がつくとか道が現れるので合ってる?」

 ハーゼリアさんがモニカさんに問う。


「正解!」


「ちょ、それはなしだ。仮に壊して行けたのなら、赤い星はもうないだろう」

 ゲイルさんがすかさず却下。


「赤い星は俺の夢だ、俺のマントと同じでそこに未来がある!!」

 ヴィンスさんは意味不明。燃える闘志と言いたいらしい。



 よそよそしい顔で無視する皆。さ、別の話をしよう。



「私は下でカバーするから」

 ハーゼリアさんはそういうとモニカさんにフロートを頼んだ。フロートで上がるモニカさんとデメグラムさん。よくこの二人が一緒に行くなと思った。


「それじゃ、軽く叩いてみるぞ!」

 デメグラムさんが言う。



「・・・カ!」


「フォオォン!!」


「なんだこれは、防御璧でも張っているように、おおっと!」


「うああっ!」

「きゃぁ!」


「危ない!!」

 下で見上げる女たちが叫ぶ。


「舞い上がれ、空に浮かぶ旋毛のように!」

「ワールウインド!!」


「バサッ!」

「きゃっ!バスッ」

 落ちた二人を旋風が持ち上げる。落下したが、落下速度が弱まったので怪我なく助かった。


「いたたた!」

「くそっ、俺がどうしてこんな役目を。ヴィンス今度は、お前がやれ!」


「いいのか」


「やめだ!」


 どうしたんだろう?負けになるのか、くだらないことで張り合う二人。



「やはり何かあるな」

 ゲイルさんはそういうと、モニカさんに話しかけた。


「いいの?」


「そっちはいいぞ。ハーゼリア、落とされたらもう一度ワールウィンドを」


「ワールウィンドね!」


「二人とも、もう一度!悪いがデメグラムお前が行ってくれ」


「またか」

 再びモニカさんとデメグラムさんは空に上がった。今度は別の目的も含めて。


「モンスターが襲ってきたら星を斬れ、反動で逃げられるから!!」


「死ぬぞ、その方法は!」

 デメグラムさんが無茶苦茶な方法に文句をつける。


「大丈夫だ!俺が受け止める」

 両手を広げキャッチ体勢のヴィンスさん。


 ヴィンスさん、どうやってキャッチするつもりだろうか?その好奇心と期待感で俺は二人を見つめる。


「受け止められたくない」

 デメグラムはぼそりと本音を呟いた。


 ロッドに手に汗握る。一度でトラウマになることはないが緊張感と切迫感がひしひしと伝わる。それを全身に感じながらモニカは魔術を詠唱し放った。


「照らせ、月の光!」

「ライティング!!」


 青く白く黄色い光が空に放たれる。みんな目を細めいつでも動けるように対応する。 



「―――――――」


 何も起こらない、と思ったら、赤い星は下におりていった。


「お?」


「おう!」


 全員ですべての方向を見回す。そして光が薄れゆく中で周辺を走り怪しい場所がないか探した。


「何も見つからない」

 ハーゼリアが落胆の声を上げた。


「無駄になることがあるのは承知の上だ」

 失敗を顧みない。


「はぁー」

 アシュリーは肩を落とした。


「気にしないで、別に見つからなくてもいいから」

 バルバラはアシュリーの肩を叩いた。



 しかし、首が痛くなるので地上だけを見ていたアッキーは、異変に気付いた!


「誰か!何か見つかったか?」

 ゲイルさんがみんなに尋ねる。


「いいえ、ダメ」


「私も」


「砂がない」


 今、アッキーが何か言ったか?


「アッキー、砂はそこにたくさんあるぞ」


 地面を見たままアッキーは、

「粉塵の砂がない」

と言う。


「粉塵立ってた?」


「ライムさん、松明を近づけてみて!」

 アシュリーさんがそういうので俺は松明を受け取った。


「ここでいいのかアッキー?」


「横の・・」 

 アッキーが歩く、ちょうど砂の窪地がポコッとした場所を踏んだ時だった。どうしたわけか影が途中で消えていた。光の屈折のような現象で影もそうなったのではないか?

いいやそれは起こるはずはない、屈折する物質(水やレンズなど)がないのだから。


「これは!?」


「おーい、どうした?」


 一見では分からない、普通は俺の姿と砂だけしか見ないから。風景に違和感があるとは・・。まあ、これぞダンジョンの謎解きなのだろうが。


「アッキーが見つけました!!」


「よくやったアッキー!」

 誉めるヴィンスさん。


「ところでどこにあるんだ?」

 ゲイルさんは完全に単純な見た目にハマっていた。



「それは俺が、今からやります!」

 俺は手に取った砂をすぐそこと遠くに投げた。


「砂が消えた!!」


「景色は同じなのに!」


 そして何度も砂を投げた。分かったのは横三人分、縦は二人分位の高さの見えない空間があること。


「通路を消す魔術があるのかしら」

 ハーゼリアが興味津々に言う。


「そうなると、新しい魔術の発見もありえますよ」

 プリンシパルが世紀の大発見を期待している。


 一行は騒ぎながら、その空間を歩いた。






 ダンジョン12階層 迷宮ラビュリントス


 空間を歩く一行は周囲が見回す。

 景色は砂地の空間で変わらず、真っ暗である。赤い星の光は中に入らない。だから松明を灯す。


「この空間が十二階層とつながっているのか」


「その・・はず」


 俺は松明を持つ係り、もう一つはゲイルさん。俺は足が少し痛かった、砂地の上をずっと歩いていたから。


「アッキーさん、大丈夫ですか?」

 プリンシパルはアッキーに話しかけた。


「ぅ・うん」

 顔を合わせないアッキー、


「戦闘は嫌い?」


「いや、弱くて」


 ゲイルさん達に出会って、アッキーの活躍は少ないが俺にとっては良き相棒である。


「がんばって」

 黄色い声援、アッキーの力が漲るはずの。戦士は体力と腕力が物を言うから。


「うん」

 変わらずか。勿体ないからもっと話せばいいのに。アッキーの返事は自信がないが心優しい男だ。上階層に行くにつれモンスターは素早いから手が出せなかった。ただそれは俺も同じだが。




 十一階層の出口に到着。つまりは十二階層の入り口なのだがここは地中だと思われる。その地下となった壁は岩肌で黄土色、通路は真っ直ぐな通路にいくつか分かれ道がある。その壁には白い蛇が伝っていた。全て同じものでウロボロスというモンスターばかり。


 ≪ウロボロス 竜とも蛇とも、???≫


 ウロボロスは互いに迷うことなく噛みついている、何をやってるんだか。何とブルースコーピオンがここにもいた。地上から地下へ下りて来ていたのか?

 そういえばあいつらも地下へ潜っていた、ということはここは地中ということになるが。ブルースコーピオンは壁の角の隙間の穴の中に入っていった。


 蟻もいる。小さな赤い蟻だ。無数に天井から落ちてくるから、かわしきれない。


「刺されると痛そう、プリンシパル」


「それは刺されるまで考えない方がいいわ、アシュリー」


 手で何回振り払っても地面から足に這ってくる、また上からポトポトと落ちてきた。


 狭い通路ではない、蟻は女好きか女の方ばかりいく。モニカさんやカタリナの体にもくっ付いている。松明で照らすと女たちは五人とも腕や足に噛まれた斑点が多数あった。そして青あざみたいになっていた、せっかくの綺麗な肌が台無しである。

 こいつら血を吸うのか?毒針を刺しているのか?


「体に異変はないか?」

 ゲイルさんが尋ねる。


「ええ、ただ噛んでいるだけだと思う」


「今の所、異常なしよ」


 臭いに反応するのか?フェロモンか知らんが恐いな。

 ローブを捲り、手や足を見ると二の腕や太ももまで青い斑点が広がっていた。こんな酷い体を見てもエロ妄想する俺が嫌だった、松明でどこを照らしているんだ。


「そんなに噛まれて、ただで済むわけがない」

 ヴィンスさんが焦った、致命傷になる可能性だってある。急性なんちゃらか。


「走れ!」

 右に、左に、また左に右に坂に上って坂を下る。通路だけだが進んでいった。しばらく行くと蟻がいなくなる。ここは蟻の巣穴の中か。


「お前たちは食われているんだ!!」

 ヴィンスさんは女全員をしかりつけた。


「そうなのぉー!?」

 ハーゼリアさんが驚嘆する。


 そして歩いていると、俺は地面が少し濡れていることに気づいた。最初少しジメジメしているなと思った、下にばかり気をとられたが襲われなくてよかった。上に大きな穴があって白い柄をしたサーペントが現れた!


 ≪ホワイトサーペント 大きな白蛇、???≫


「逃げろ!!」

 ゲイルさんが指示を出す。


 俺たちは走った、他の大きな穴からもサーペントが襲ってきた!!サーペントはプリンシパルの逃げる後ろ脚のひざ下ををまるごと飲んだ。


「ガポッ!」

「きゃあっつ!!あぁぁ!」


 プリンシパルが足を押さえている。


「ズシャッ!ボトッ、ビク!パタッ・・・」 

 肉を切らせて骨を絶つ、すぐにヴィンスさんは一刀両断した。バルハラは噛まれる寸前に詠唱していた魔術を放つ!こういった時はこの魔術!!

「アンチドート!!」


「早いな!」

 ヴィンスさんが言うと、


「対応が遅れると次に影響する。体が長いモンスターの特徴は毒による攻撃が多いの」

 バルバラは分類して敵を見分けていた、見た目と特殊攻撃を自分なりにまとめていた。


「痛みはとれた?」

 バルバラがきくと、


「助かったわ、バルバラ」

と喜ぶプリンシパル。でも相当な痛みで目が弱々しい。毒によるダメージによって体力が消耗している。


 さらにカタリナが横にいてマドレヒーリングを唱えた。同時回復を急ぐ。あれだけ歯が食い込んで突き刺さっているのだ、足に穴が空いたと言ってもいい。


「ありがとう!」

 足を見れなかったプリンシパルは、治癒した足を見てカタリナにお礼を言った。ついでに他のメンバーも回復した。

「メニューを見たら、女性ばかり攻撃されていました」


 先ほどの蟻だろう。



「お役に立ててよかったです、また来ています!!」


 いつ来たのか二匹のサーペントに囲まれた。アッキーがガード体制を取り、俺はその後ろに隠れた。鎧を見に着けているアッキーなら噛まれる心配も多少減る。

 こちらではデメグラムがガードの体制をとる、黒い鎧のデメグラムもアッキーと同じく問題はない、ただ俺たちが狙われそう。


「シャー!バスッツ!!」

 前にいたアッキーにぶつかり、今度は俺たちを襲ってきた。俺とモニカさん、カタリナは後退する。後退した先まで考えていられないけど。


 デメグラムにぶつかるサーペントが横から顔を出した瞬間、


「はっ!」


「シャァアアアアア、ヒキーッ!!」

 ヴィンスさんは一刀で顔を斬った!顔を斬られたサーペントは暴れ体を捻る。


「バシ!バシバシッ!」

 アシュリーとプリンシパルが右に、バルバラが左に飛ばされた。そしてバルバラにサーペントが襲いかかる。


「うぉおおおお!!」


 アッキーはサーペントにぶつかったが押し負け反撃に合う。サーペントは、そのまま体を地に擦らせバルバラに食らいついた!


「キィン!」

「バス!ぐうっ!」

 ゲイルが剣を差し入れサーペントの口を押し返す。

「ギ・ギギギィギイ、ギィイイギ」


「シュパッ!」

「ドウッ」


「ぐはっ!」

 ゲイルはサーペントの口元を斬ったが、手を噛まれ弾きとばされた。サーペントがゲイルに襲い掛かり、八の字を描きゲイルを締め上げる!!


「ボキボキィ!」

「あああぁっ!!!!」

 腕の骨が砕かれる。それでも両肩に力を入れて、これ以上を折られないように耐えているゲイル。いや肩を捨て両脇を広げるように締め上げる力を押し返しているのだ。


「バスッ、バ、ガシュッ!」

 デメグラムは両方の斧を振り下ろしYの字状に斬りつけた!だがサーペントの締め上げは止まらない!


「はあっ!」

「ズッ、プシィ――ッ!」

 ヴィンスが尾の部分を斬り落とした。


「うわぁっ」

 アッキーが跳びかかり、サーペントを掴んで引き離そうと引っ張る。


「ぐはあぁああ!」

 急な力で痛みが増すゲイル。


「バシュバシュバシュバシュ!」

 デメグラムはゲイルに当たらないよう斧で何度も斬りつける。


 まだ離さないサーペント、俺も走っていき引っ張った。


「回復を頼む!」

 この状況で正しい判断だと思う、出来たのはそれだけ。


 カタリナが急いで詠唱する。


「広げよ、いやしの輪!」

「マドレヒーリング!!」

 蓄積ダメージがデッドラインに達しないうちに傷を治癒する。ゲイルさんの骨が変な形にくっつかないか気になった。骨とか、きちんとくっ付くのかな?


 デメグラムは何度も斬りつけた、それでも離れないサーペント、引き離そうと引っ張る俺とアッキー、回復と他のサーペントを見張るその他。


 しばらくして気付いた時、サーペントは息絶えていた。俺たちから離れない死骸は俺が気づいた瞬間、思い出したように消えていった・・。

 『ラビュリントス』のタイトルは展開が想像つくから変かもw。でも変更はなし。

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