鮮明な砂漠の赤青緑黄 3
キラーアントやデザートスネーク、コカトリスやバジリスクを倒すライムたち一行。
先を進んだギルド・ブルーオーシャンは、
「はぁはぁはぁ・・。あいつら、どこまで追いかけてくるつもりだ」
セイロンがマントで汗を拭う。
「アシュリー魔術だ!それを止めろ!」
ブルーオーシャンのリーダーエウロが指示を出す。
「はい!」
松明の光だけでは暗いので、アシュリーは魔術の詠唱をしていた。魔術を放たない微光。アシュリーが詠唱をやめると集まってきたモンスターは散っていった。
ロッドからも熱なり声(音)なりが発する。それに群がるモンスター。松明の火は自然なのでそれほど集まらないらしい。明らかに冒険者感知する触覚もしくは感覚。
「このフロアには魔術、特に光や炎に反応するモンスターが多くいるようだ。これからしばらくは魔術の詠唱も禁止だ、いいな」
エウロがそういうと、
「まあ、そういうなら」
「わかったわ」
「うん」
アシュリー、バルバラ、プリンシパルが返事する。
ブルースコーピオンは群れでいるから手を出さず、デザートスネーク、キラーアント、コカトリス、バジリスクを倒し順調にフロアを進んでいった。
しかし、その一行も暗く同じ景色のせいか途中で道に迷ってしまった。
「あれ、ここはどこ?」
「赤い星があそこだから、どこまで来たかは関係ない。それを目指して歩けばいいのよ。但しブルースコーピオンには気を付けてね!」
そうして歩いていき目的地に到着。着いたのは赤い星とプリンシパルの機転の利く判断のおかげだ。
ブルースコーピオンの潜る穴から少しいった上空には赤い星があり光を放っていた。さらに地面が光に照らされ、写真の暗室のように赤くなっている。
その暗室の中、真っ直ぐ進んだ先にそれはあった。
!?
暗い、目が慣れたといってもそこまでは視認できない。
__/\__
最初は銅像かと思った。暗くてよく見えないが盛り上がった砂の上に、首から上の部分、つまり人間の頭がある。切り落とされた冒険者の生首ということはない。
なぜなら、このフロアは未開拓で一人で来れる冒険者などいるはずはないから。
さらに近づく。
突然、首が消えた!
視界に動くものが入る。襲われる!!
それは人間の頭、顔もある。迫りくるそれを全員はかわした。
かわした移動後、見ると頭は俺たちがいた場所に落ちていた。
「ダンジョンマスターか?」
「私はここを守る番人、人間風情がここに足を踏み入れるなど許されない。お前達はダンジョンマスターサマにサカラウモノ、私がここで始末してアゲルワ!!」
エウロがメニューの履歴でモンスターを確認した。
≪スフィンクス この地に住まう多種の最良部分の体をもつモンスター。女性の頭、馬の体、コカトリス類の翼、スネーク類の尻尾がそれにあたる≫
「ガッ!!」
「ザザァーーーッ」
砂の中から地面に這い出たスフィンクス、獣のような体があらわになった。この姿形は履歴の特徴の通り、継ぎはぎされたような不揃いのパーツを付けている。そいつが無表情に話すから怖かった。
「恐ろしい姿」
バルバラがその様子に異変を感じた。
「ヒキャアアアアアアア――――――!!」
声でない奇声を上げる。
そしてスフィンクスは口から白い液体を噴射する。それは薄い霧のように宙を舞う。それをかわす全員。液体が置いた地面に、まるで固まっていないコンクリートのようなベトベトとした粘性の糊が付いていた。
「えっ!?」
次の瞬間スフィンクスが消えたのでアシュリーは戸惑った。
「速い!!」
セイロンがその速さに驚嘆の声を上げる。
アシュリーがその餌食になっていた。糸から垂れた液体が体に纏わりついている。それに加えエウロの足にも少しついた。その粘性の糊のような物は糸を引き、取れず抵抗するとさらに広がっていった。
「あ、私また、ごめんなさい」
纏わり付いた体の表面の糸が固まっていく。糸は膜のように固まり光沢を放つ物質に変化。固まっている証。内部まで固まっていないが脈打つ体を抑えるように、体の表面からどんどん石化していく。
「石?」
状態異常(石化)を起こすアシュリーの姿を見てエウロが言う、こんなのは初めてである。
石化した状態で攻撃を受ければ即死間違いなし、それを狙ってスフィンクスが翼を羽ばたかせ前進、猛追タックルした!!
「ザザザザザザァァァッ!!」
セイロンは、すぐに身を投げて緊急回避した。
「おい、そんなのずるいぞ」
だがそれを読んでいた。
「そうくるのはわかってます!」
沈着冷静、山あり谷あり不屈のバルバラ、その不屈の精神が幸いしたのか、それが石化攻撃だと見抜き、すぐに魔術を発動する。
「与えよう、煎じられし薬草を!」
「メディシン!!」
体に緑の光が入って、白い光となって外へ出ていく。
「わあっ!きゃああっ!!」
「ああっぐっ!」
「バッ!!ザザザザザザザーッ・・」
スフィンクスの攻撃を防御するだけで精一杯。
運良く石化回復したアシュリーとエウロは猛追タックルをまともに受けずに済んだようだ。掠っただけといっても大ダメージを受けた、体の喪失に比べると低いのだが。
そこで止まらず!スフィンクスは駆け上がるように、かぎづめをたてて攻撃する!
だが、そこに割って入る影!
「おおぉぉおおおおおお!!」
走って飛び跳ねる、
「疾駆切り」
「ジャキィン、シュパ!!」
スフィンクスの額に剣を流し入れ、月のような形に剣を入れる技である。これは馬が走り大地で飛んでいる姿から生まれた技である。
痛みで身を屈めたスフィンクスは激痛で足を引いた。エウロは、まだくるのなら突き刺さんという気迫で剣を構える。
「あんな素早い敵と互角に戦うとは!」
セイロンが、スフィンクスに飛ばされた二人の所へ駆けつけていた。バルバラは太腿、アシュリーは手の肘を強く打った。
「あっ、いたたぁ・・」
「あっあっ、ぃたぁぃぃ!」
すすり泣く二人。相当な痛みを伴うダメージ、女なので余計に気を使ってしまう。
「大丈夫ー?」
「大丈夫よ、ありがとう。ほんと砂ばっかりで動きが鈍くなってしまう」
「支援ありがとう。あとはまかせてくれ」
セイロンは、そういって二人を離れた所へ避難させた。
離れた所から黄色の光が浮かぶ。バルバラさんが自分とアシュリーの傷を回復していた。回復魔術はモンスターに感知されなかった。
「俺も戦いたいが足でまといになるので遠慮している」
とセイロン。
手が空いたプリンシパルは履歴から相手を分析した。弱点・急所はないか、頭を回転させ知恵を絞る。
「エウロさーん頭は人間です!」
人間の頭は同じ種族を攻撃しているようで一番狙いたくない部分。それが弱点だと見たプリンシパル。
「ありがと」
「俺のギルドには戦士はいない、だが力がある!」
ダッシュしファーストステップでフェイント。暗い中でも躓く事なく、うまく足を滑らすエウロは、
「重ね二錐!」
「ザザザッシュ、ブシュアア!!」
「ドサッツ、ジャジュ」
逆さVを二つ重ねてMの形に斬るオリジナルスキル・技。スフィンクスの首の辺りを刈り取るように斬る!
エウロのオリジナルスキル・技連発である。
「あそこに何か落ちたぞ!」
二人は見てわかった、それが頭部であることに。落ちた頭部の顔は青ざめながらエウロはじめみんなを睨んでいた・・・。
「お前たちさえこなければ、私はここで生き続けられた。お前たちが!・・お前たちのせいで!・・おま・・はきゃはきゃはきゃはははあぁ・・・」
女性の狂った声で切られた頭部は言い、息絶えて言った。
「ザザザアァァァァァ!」
「バハア!!」
「うぐっぅっ!!」
敵に倒されたのはエウロだった。砂を擦る音が聞こえたかと思ったら黒い物体に追突され倒れていた。おそらく動く胴体の部分で、まだカタカタと動いている。物凄い生命力で三位一体を崩しても、なお動くのだ。
「俺とした事がぁ!」
何とか痛みを堪えている。仰向けで腹を抑え、痛みに耐えているエウロ。地面に黒い血が垂れていた。
「やばぃな」
「俺が変わる」
「くっ、ぐはっ」
セイロンは助けに入る。戦力ダウンのスフィンクスならセイロンで十分だ。しかし、鞭のような尻尾で打ち付けられ、さらに足で蹴とばされてしまった。
「尾だ、尾に目がある!俺たちが、攻撃を喰らった時に蛇の尾がこっちを見ている騙されるな」
経験というやつは恐ろしい、普段、目立たないが努力を欠かさないセイロンはスキル・技の見抜きを身に着けていた。一発もらったが代わりに細部まで隅々見ていたセイロン。
「俺はマッドのメンバーより弱かった。だが今はそれも越え、うぉおおおおおおお!!」
「シャアアアアー!!ズザザザザザァ!!」
蛇の尾か鋭く喉音を鳴らした、口もあるのか。そして地を高速で這う、それに反応がついていけずつまずいたアシュリーとバルバラ。四つん這いになって逃げるが、
「ぎゃああぁ!」
「カジッ、ップッ!」
「ぎゃあっ!」
「ガッ、ズッ!」
足を噛まれた二人、羽で煽るスフィンクス、かばい身代わりになるセイロン。
「許可する、魔術を使え何でもいい!!」
エウロが大声で叫ぶ。
アシュリーが詠唱、
「飛べ、怒り怒る炎の球!」
「ファイアボール!!」
続いてプリンシパルが詠唱、
「貫け、滴る雫を冷酷な槍と化し!」
「アイシクルランス!!」
炎の球が羽を燃やし氷柱が羽を突き刺す、そして相殺し溶けるように消えていく・・。
「魔術に反応するモンスターがこない!?」
火や光に反応するかと思ったエウロ、だが来ないので目を疑った。
エウロたちは初めてフロアボスを倒すので、フロアボス周辺では通常のモンスターがあまり出ない事を知らなかった。
「ダッダッダッダ!」
エウロがスフィンクスの尻尾の目をタタッ斬った!!そのままスフィンクスとエウロが転がり砂の上を倒れた。目が見えなくなったスフィンクスは暴れまくる。
「ザザザザ!ザザザザ!」
ちょうどブルースコーピオンが入っていった穴の方に行った時だった。エウロとスフィンクスが大きな穴に落ちた。
砂穴は砂上の楼閣の如く、元々が砂であるから脆かった。またブルースコーピオンが通る抜け穴で、穴だらけだったから。
!?
「パシッ!」
プリンシパルが走ってひざまづき手を差し出す!
「きゃ!」
スフィンクスが先に、大量のブルースコーピオンが入っていった穴の中へ落ちていった。
「ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!」
「ブシュッ!ブシュッ! 」
「ブシュッ! ブシュッ!」
「 ブシュッ!ウウウウウ!!」
何かが刺さる無数の音が地中で不気味に響き渡る。
プリンシパルの手をとったエウロだったが、女(魔法使い)の力では支えきれず一緒に穴へ落ちていった・・・。
「フロート!!」
落下が止まる!
何と二人は穴の上で浮かんでいた。
少し前、どこからともなく声がした。それはエウロと一緒に落ちたプリンシパルが唱えた魔術の声だった。
フロートは何も空を飛ぶためだけの魔術ではない。穴に落ちないように浮かぶため、持てない体重を支える事も可能である。
「助かった」
プリンシパルは下を見ていた。そこにあったのは地獄絵図のような光景だろう・・地上についたあとも、それを思い出すように下を見ていた。
「スフィンクス、お前の敗因はずっとそこにいたことだ。もし穴を知っていれば気づいて飛ぶこともできただろうから」
例え空を飛べる能力があったとしても、それに気づかなければ意味がない。今どんな状況にあるのか考えていると、その後が違う。心でそう思うエウロであった。
フロートで地面におりたエウロはスフィンクスの頭に剣を突き刺し、同じように穴に落とした。
「ブシュッ!ザザザ!!」
「ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!!」
エウロとプリンシパルの二人は足を怪我して動けなかった。
「片付いたな」
バルバラが言う。
「ちょっとメニューを開いてもらえる?」
「え、あっそうね」
「そうだな」
状態異常を確認すると、
「広げよ、いやしの輪!」
「マドレヒーリング!!」
を二人に唱えた。
「ダメージで動けなかったのね。私、麻痺か毒状態なのかと思って心配してたの」
薄暗くて怪我の場所すら確認できない。
「ありがとう」
「悪いな」
「しつこいモンスターだったぁ」
「それと気迫に負けるって言うか」
「恨みや妬みもすごかったな」
この世界の住人は弱肉強食の頂点ではない。いつモンスターが襲い掛かり命を落とすか分からないから。
その後、皆にヒーリングを唱えるバルバラ、ヒーラー大忙し。
「次、俺がもし退却と言ったらすぐに逃げてくれ」
エウロが言った。
「わかった」
セイロンが答える。
「みんなわかってる」
アシュリーが他二人の顔を見ていった。
セイロンを見張りで残し、砂上で赤く光る石を見るためにフロートで他全員が空に上がる。危険であるが、無駄に暗い中を探し回るよりこちらの方が効果的。
星はサンサンド上空にも見えたことがあった。ただ星というより光の粒に近い。
「この赤い星は何だ?」
エウロが言うと、
「さあ・・。それより別の場所を探しましょ」
とプリンシパル、
「ますます分からんぞ」
「?」
「フロアボスは、私たちがここまでやってくることを想定していなかった」
「つまり?」
「赤い星はフロアとは直接関係ない」
杖を近づけると少し反応があることに気づいたアシュリー。
「生きている?みんな耳を閉じて」
そしてアシュリーが魔術を唱えた。
「散らん、星降る眠り!」
「スリーピングスター!!」
突然!赤い星の光が消えた、そして地面におりていく。ついていくエウロたち。
様子が変だとエウロは思った、赤い星ではなく周囲の。
「地形に変わりはないか?」
「そういえば松明を持ってるセイロンがいない」
「え」
「闇の中に消えたわ」
「もし明かりが消えたのなら木が焼けた臭いがするはずだ」
地面に到着。
「おい、セイロン!セイローン!!」
セイロンが消えた。暗い闇の中を探すが見つからない。歩いて、走って闇の中を探すがどこにもいない。
「ああ!セイロン、いたわセイロン!!」
セイロンが松明とともに突如現れた!
「お前、どこにいたんだ?」
「俺は、ずっとそこに居ましたけど」
「そこに居た!?俺たちからはお前が見えなかったぞ」
魔術の作用か、景色をカモフラージュしたのか、誰もいない。
「本当ですか?ここにいましたよ」
そういってセイロンは歩いて行った。
すると、またセイロンが消えた。
「おい、どこに行った?」
「ここですよ」
何もない、音(声)も聞こえない。
何かある!一行はセイロンが消えた最後の場所についていった。
「あれ?みなさん、そんな怖い顔をしてどうしたんですか?」
とセイロンが一言。
「お前が闇の中に消えたから探していたんだ」
「あはは、それは気づくのが遅くてすみません」
「いいからいくぞ」
「はい」
エウロ一行は闇の中の別空間を歩いていった。
砂漠での戦い。地面に手をついた瞬間ブルースコーピオンに刺されないか心配です。




